
1949年に設立された理研ビタミン株式会社。自然科学の総合研究所である「理化学研究所」から、ビタミンA部門を引き継ぐ形で生まれた会社だ。ヘルシーかつ風味豊かなおいしさでロングセラーとなっているドレッシング『リケンのノンオイル 青じそ』が看板商品である。代表取締役社長の山木一彦氏に、独創的な商品が生まれる背景や活躍している人材についてうかがった。
「研究所」だからこそ作れる家庭用食品や改良剤を展開
ーー貴社の特徴と事業内容を教えてください。
山木一彦:
「家庭用専門ではない食品会社」であることが最大の特徴と言えます。『リケンのノンオイル』シリーズや、乾燥わかめの『ふえるわかめちゃん』シリーズといった家庭用食品が目立ちますが、売上比率としては全事業のうち14%です。食品事業・改良剤事業・ヘルスケア事業の3つをコア事業に、BtoB(企業間取引)が売上の多くを占めています。
弊社が製造開発している天然由来の「改良剤」は、たとえばパンをふんわりさせたり、プラスチック容器の曇りを抑えたりなど、さまざまな機能を発揮し、主に加工食品メーカーや化成品メーカーに採用されています。ヘルスケア事業では、ビタミンや機能性食品用原料の研究を進めてきました。
天然物の有効利用×独自の技術力で今までにないドレッシングを開発

ーー商品開発における強みもうかがえますか。
山木一彦:
捨てられる魚の内臓を原料とした天然ビタミンAが祖業の弊社は、「天然物の有効利用を図る技術と商品で、人々の健康と栄養に寄与し、社会に貢献する」を企業理念としています。原料開発部隊のノウハウと、資源に付加価値をつける独自の技術力、この両輪で他社にはない商品を生み出してきたことが弊社の強みでしょう。
たとえば、私たちはドレッシングのカテゴリに「ノンオイル」という新しいジャンルを創出したと自負しています。付加価値を生み出すスタイルで、レッドオーシャンの中にブルーオーシャンを作り、小さい市場でNo.1を獲得することを各分野において心がけています。
2023年に発売した『インドカレー屋さんの謎ドレッシング®』は、若手スタッフが考案したヒット商品です。ネーミングに偽りはなく、手作りのようなおいしさを実現できる製造技術によって、「カレー屋さんの自家製ドレッシングを家でも楽しみたい」という発想を実現しました。
ーー若手が活躍しやすい社風なのでしょうか?
山木一彦:
『謎ドレ』の成功例からも、若手が自由に開発できる環境が弊社で働く魅力につながっていると思います。「自由闊達(じゆうかったつ)」な社風は、弊社の技術的なルーツである理化学研究所が昔から唱えてきたものです。「オンリーワンの存在」を目指して、先人たちが新しいことに挑戦してきた流れを今も汲み、良い意味で上司に遠慮しない雰囲気がありますね。
「こんな仕事がしたい」「こういう勉強をしています」と、会社にアピールできる自己申告書もあります。申告書は人事部門に直接届くので、若手がやりたいことを上司が無視できないシステムになっています。
若手・研究者が「自由」に活躍できるグローバル企業へ

ーー人材の育成方針もお話しいただけますか。
山木一彦:
組織が自由闊達であるためには、お互いの多様性を認め合う心と、国籍や性別を問わず「誰もが活躍できる環境」を大切にしなければいけません。女性の管理職はまだまだ増やす必要がありますが、商品企画のリーダーは4人のうち3人が女性です。
また、競合が簡単にキャッチアップできない商品や、新たな市場を創造できる人材が育ってほしいと考え、人事においては意図的にローテーションしています。基礎研究の専門家は別として、多くの人間は新しいジャンルに行くと違った視点で物事を見られると思うのです。
今後は、海外のローカルスタッフもさらに育成し、現在20%強である海外事業の比率を10年後には40%にしたいところです。もちろん、日本から赴いて現場をまとめるポジションや、海外企業と商品開発をする部隊も、同時に充足させていく必要があるとも考えています。
ーー若手の方や共に働きたい方へメッセージをお願いします。
山木一彦:
私は「百術は一誠に如かず」という言葉を座右の銘にしています。営業担当としてがんばっていた頃に、いろいろな交渉や駆け引きを経験しましたが、正面から向き合って、相手のためになる提案をすることが最善だと学びました。
たとえ大きな壁にぶつかっても、自分なら必ず突破できると信じてください。目の前の仕事に前向きに取り組む人は、きっと成長できることでしょう。弊社で活躍しているのも、明るく元気で積極的な人です。自由に挑戦できる場所がたくさんある会社なので、やってみたいことがある人はぜひお越しください。
編集後記
海外にも展開する上場企業でありながら、人材のチャレンジ精神を最大限に尊重し、研究開発に力を注ぎ続けてきた理研ビタミン。直近のヒット商品である『インドカレー屋さんの謎ドレッシング®』は、ユニークなネーミングが話題になったが、コンセプトを裏切らない味わいこそが真の強みだ。企業の研究心と創造力から生まれる新製品を、今後も心待ちにしたい。

山木一彦/1959年生まれ。1983年、東北大学農学部を卒業。理研ビタミン株式会社に入社。加工用食品営業本部加工用食品営業第4部長、執行役員、天然エキス調味料事業推進部長、取締役、業務用食品営業本部長、常務取締役などを経て、2016年に代表取締役社長に就任。