※本ページ内の情報は2025年5月時点のものです。

建物の外側にある空間を、人々が集い憩える場所へと変える。ハンワホームズ株式会社は、外構の設計から施工、修繕まで一貫してサポートする企業だ。ガーデンファニチャーを中心とした家具や雑貨をeコマースで販売することに加え、商業施設の屋外空間デザインなど、従来の建設業の枠を超えて着実に事業領域を広げている。

若手社員の感性を活かした提案力と、オーナーとの直接取引を重視する姿勢で成長を遂げてきた、同社代表取締役社長の鶴厚志氏に話をうかがった。

大学在学中から社内起業し、家業に携わる

ーー社長のご経歴を教えてください。

鶴厚志:
私が卒業したのは近畿大学の生物理工学部です。この学部は、建設や造園とは関係がなく、自分が興味を持つ分野について学ぶために進んだ道でした。卒業後は上場会社への就職を考えていましたが、弊社の先代社長である父が病気で倒れたため、家業に入ることとなりました。

畑違いのことを大学で学んでいた私がスムーズに弊社に入社できたのは、大学在学中より父の仕事を手伝っていたからです。入社後は大学で学んだCADの知識を活かして、図面を描くのを手伝ったり、ECサイトを立ち上げたりしていました。このときに立ち上げたECサイトが、弊社のeコマースブランド「DEPOS」の前身になったのです。

入社当時は社員が私の両親のほかに3人しかおらず、職人さんの手伝いから、案件の獲得、図面製作、現場管理などすべて自分で行う時期が5〜6年ほど続きました。その中で少しずつ会社が成長し、営業や設計、工事管理などに携わる人材を採用できるようになっていったのです。

さらに、2019年までに貿易事業やBtoB事業をスタートさせるなどして会社を成長させてきました。その後、2020年に株式を継承し、代表取締役に就任した次第です。小さな会社を上場企業にまで成長させた過程は、スタートアップの経営に近いものがあったと思います。

ーー事業規模を拡大できた要因についてお聞かせください。

鶴厚志:
大きな要因は、採用を増やし、それによって可能になった分業体制を確立したことにあります。入社当初は営業や設計といった業務を1人で担っていましたが、役割分担することで組織全体の力が強化され、より大規模な仕事を受注できるようになったのです。

また、私が事業継承して社長になったタイミングで、株式上場を経営目標として定めました。株式を上場するということは、企業としての認知度を高める上で役立ちますし、グローバル展開する際にも大きな武器になります。「株式上場」という明確な目標を設定し、達成に向けて具体的に行動できたことも、事業を大きく成長させた要因と言えるでしょう。

屋外空間の設計で建築物に新たな価値を創造する

ーー貴社の事業内容を教えてください。

鶴厚志:
弊社は主に、屋外空間の設計を中心に事業を展開しています。単に空間をつくるだけでなく、その後の「空間の使い方」まで提案できるところが事業の強みです。また、空間の設計から施工、使用後の修繕まで一貫してサポートするサービスモデルを構築し、これによって顧客に包括的な価値を提供しています。

ボーダレスの時代に突入した現在、アーケードのような、屋外にありながら屋内のように感じられる空間が増えてきました。そこで新たに生まれたニーズにも対応するべく、弊社も多方面にわたって新サービスを展開しています。たとえば、商業施設や戸建てなどの屋外空間を設計する屋外事業、ガーデンファニチャーや家具、雑貨を一般消費者に販売するeコマース事業などがその一環です。

また、弊社の特徴の一つとして、ゼネコンの下請けに入るのではなく、「この案件に投資したい」というオーナーさんに直接アプローチして、設計から提案まで行うことが挙げられます。これまで下請けに頼らずに成長してきたので、今後もこのようなアプローチができる接点を増やしていく方針です。

ーー貴社ならではの強みは何でしょうか。

鶴厚志:
緑地や駐車スペースなどを活用し、屋外空間に重点を置いてデザインすることで、家族連れや多くの人々が自然と集まる空間をつくり出しているところです。建築物そのものの提供は多くの建設業者が行っているため、差別化を図るのは困難です。その点、弊社は建築では表現できない屋外空間に、新たな価値を付加できます。このことも、弊社の魅力と言えるでしょう。

また、弊社はさまざまな社会課題を抱える地方自治体や企業に対して、スピード感を持って対応できるように、時代の変化に敏感な若手人材を数多く採用してきました。そのため、社員の平均年齢は約30歳であり、若手ならではの感性を活かした提案が得意です。

アジア市場で日本一の外構工事会社を目指す

ーー最後に、今後の展望をお聞かせください。

鶴厚志:
会社の規模を一層拡大したいですね。具体的には、5年以内に海外展開にチャレンジして、売上高を現在の3〜4倍に伸ばしたいと考えています。日本はこれから先、人口が減少して事業環境が厳しくなると言われています。しかし、アジア全体を見渡せば、人口はまだ増加のフェーズにあるため、海外にも目を向けてグローバルな事業展開をしていきたいです。

弊社はこれまで、クロスガーデンやテラスなど、ヨーロッパ発祥の屋外空間の文化をアレンジして、日本人が暮らしやすい空間づくりを手がけてきました。私は、アジアの発展途上の地域でも、こうしたサービスが求められ、今まで培ったノウハウが活かせるのではないかと考えています。海外から依頼をもらう際には、弊社が「日本一の外構工事会社」となっているように、これからも事業にまい進する所存です。

また、空間づくりを単なる「建設業」にとどめず、人々が集まる価値を生む場として発展させ、「こうした暮らし方をしてほしい」というメッセージを伝えたいと考えています。従来の建設業にありがちな「スクラップ&ビルド」の事業モデルではなく、修繕して長く使える空間づくりが弊社の理想です。

編集後記

「有言実行」の精神を信条とする鶴社長。周囲から「難しい」と言われるような高い目標を掲げ、それらをすべて達成してきたのだそうだ。その原動力となったのは、「決して諦めない」という強い精神力で、揺るぎないメンタルと行動力が、株式上場という大きな目標の実現を可能にした。

ハンワホームズ株式会社は今後、鶴社長のリーダーシップのもとでどのような成果を上げるのか。アジア市場という大海原へ漕ぎ出す同社の船出に、エールを送りたい。

鶴厚志/1984年、大阪府生まれ。グロービス経営大学院修了。2008年にハンワホームズ株式会社へ入社。空間創造事業部の企画営業・設計担当として従事し、DEPOS事業部の立上げを実施。2020年、事業承継により同社代表取締役社長へ就任。外構工事を、屋外空間創造事業として進化させ、「設計」「施工」「流通」「情報」を事業領域の中心に置きながら、現在まで事業開発を実施。