※本ページ内の情報は2025年4月時点のものです。

教育サービスの質を高めながら、コストを抑制する。この相反する課題にテクノロジーで挑戦しているのが、株式会社コノセルだ。同社は、独自開発したデジタル教材と、人によるコーチング・伴走を組み合わせた「個別指導 コノ塾」を展開。

テクノロジーを積極的に活用することで、一人ひとりに最適化されたカリキュラムを提供しながら、従来の大手個別指導塾の約半額(※)という料金を実現している。その革新的な事業について、同社代表取締役の田辺理氏に話をうかがった。

(※)大手他社がコノ塾と同じ「1コマ50分/月24コマ」と仮定して算出した、東京都内の中学2年生の授業料(月額)。入会金・維持管理費・教材費・講習費などは含まれません。表示価格はすべて税込です。(2023年6月、株式会社コノセル調べ。)

デジタル教育の理想を追求して起業を決意

ーー社長の経歴を教えてください。

田辺理:
私は、新卒の頃はやりたいことが定まっておらず、まずはスキルを身につけたいと考えていました。「学生と社会人の大きな違いは“お金”が動くかなので、その根幹の金融を学んでみよう」と考えて選んだのが、金融の分野です。自分が前のめりになれる環境のほうがスキルも伸ばせると考え、社会にとって価値がある仕事ができそうな株式会社日本政策投資銀行に入社しました。

そうして仕事に携わるなかで、担当していたとあるクライアントが、これまでにないビジネスモデルの事業で世の中にインパクトを生み出していく姿に感銘を受けたのです。「起業」という選択肢が視野に入ったのは、この時期のことです。

その後、アメリカのビジネススクールへの留学やコンサルティング会社を経て、Quipperに入社したのですが、翌年にはリクルート社にM&Aされます。M&A後の統合プロセスを経て、「スタディサプリ」の事業責任者に抜擢されました。

ーーその後、なぜご自身で起業しようと考えたのですか?

田辺理:
「スタディサプリ」を通じて「デジタル×教育」の領域に携わるなかで、「もっと多くの生徒の学習の中に深く根ざすようなサービスを作れないだろうか」という思いを抱くようになりました。「デジタルコンテンツによって、学習体験が大きく変わった」と思う生徒を本当はもっと生み出せるはずだという考えが頭の中で大きくなっていったのです。

私が望んでいたのは、デジタルの力によって勉強が好きな子どもたちと、そうではない子どもたちとの格差を埋めることができるようなサービスです。しかし、学校の先生にとって、デジタルコンテンツは副教材の一つという位置づけでした。サービスが十分に活用されているとは言えない状況を目の当たりにし、「生徒の学習を大きく変えるサービスをつくりたい」という思いが芽生えたのです。

その思いを実現させる方法として、私は「自分たちが塾を運営する」というアプローチにポテンシャルを感じました。そこで、「アプリを使った塾を運営する」というビジョンを実現させるために、2020年に弊社を立ち上げました。

手ごろな価格と高品質を両立する教育サービス

ーー貴社の事業について教えてください。

田辺理:
弊社が運営している「個別指導 コノ塾」は、デジタルとリアルを組み合わせた新しい個別指導塾です。独自開発したアプリや動画教材などのデジタルコンテンツで学習を進め、教室長が一人ひとりの学習状況に合わせて指導する形式をとっています。こうしたハイブリッドな指導方式により、価格を抑えながらも、定期試験から受験まで一貫した指導を実現しているのが強みですね。

私はこの事業を通じて、「勉強が嫌い」「学習が苦手」という子どもを減らし、自己肯定感を高め、大人になっても成長や学習に意欲的な人材を増やしたいと考えています。そのための場として「個別指導 コノ塾」を運営しているほか、アプリや教材の企画、開発にも携わっています。

ーー「個別指導 コノ塾」における他社との差別化ポイントはどのようなところですか?

田辺理:
テクノロジーを活用して生産性を向上させているため、一般的な塾に比べると人件費が少なく、コストを抑えられていることが大きな特徴と言えるでしょう。削減できたコストを授業料に還元しているため、公立高校の受験を目指す生徒が必要とする定期試験対策、進路指導、入試対策までをリーズナブルな価格で提供できるのです。お客さまからも「この値段でいいんですか?」という驚きの声をよくいただいています。

ーーサービスの品質向上のためにどのような取り組みを行っていますか?

田辺理:
私達が目指したのは、集団指導の塾のエースの先生が、一人ひとりの生徒に合わせて個別指導を提供する、そのような理想的な教育サービスです。そのために、社内には集団指導塾の元エースの先生たちが複数在籍しています。彼ら・彼女らがカリキュラムを考え、コノ塾の生徒が解くべき問題を厳選し、短い時間で「わかった!」という手応えを生む動画授業を作ります。

それを教室長が生徒と相談しながら、目標を決め、その目標に沿った個別カリキュラムをアプリを通じて提供します。生徒達は、講師の先生達と一緒に学習を進めるので、困ったときにはすぐに相談ができるため、困った状態で時間を過ごすことが防げます。このような体制を構築することで、冒頭の理想的な教育サービスを提供することができると考えています。

テクノロジーの力で「学習塾のユニクロ」を目指す

ーー貴社の今後の展望をお聞かせください。

田辺理:
弊社は、「学習塾のユニクロを目指す」という目標を掲げています。具体的には、「高品質な教育サービスを多くのお客さまに向けて、日本中に広めていきたい」という考えです。大衆的かつ高品質なサービスの象徴として私が思い浮かべたのが、ユニクロさんでした。

いいものをつくり、サービスをどんどん進化させて、結果的にそれが世界中に広まったあとも品質が担保される。これはまさに、私が目指しているものです。今後も新しいテクノロジーを積極的に活用して、より多くの方の学習体験を変革するべく、サービスを広げていきたいですね。

編集後記

高品質な教育を、手の届く価格で。この理想を追求する過程で見えてきたのは、テクノロジーと人間の協働という新しい教育のカタチだった。田辺社長が描く未来像は、決してテクノロジー至上主義ではない。むしろ、人間本来の強みを引き出すためにこそ、テクノロジーを活用するのだ。教育格差の解消という社会課題に挑む同社の事業は、教育業界に一石を投じるものとなるだろう。

田辺理/株式会社日本政策投資銀行、米国留学(UC Berkeley MBA)、BCGを経てQuipperに入社。同社にてスタディサプリの事業責任者、グローバルでのプロダクト責任者などを務める。2020年、株式会社コノセルを共同創業。