※本ページ内の情報は2025年5月時点のものです。

2020年のコロナ禍は、多くの業界に深刻な影響を与えた。飲食業界では営業自粛や売上減少、不動産業界では空きテナントの増加などの問題が浮上し、多くの企業が厳しい状況に追い込まれた。このような逆境の中で、店舗専門の不動産事業を立ち上げたのが弘昇株式会社の統括本部長を務める上官竹文氏である。彼がどのような経歴を経て創業に至り、今後どのような展望を描いているのか、話をうかがった。

飲食業界と不動産業界で経験を積み実現した独立

ーーまずは創業までの経歴をお聞かせください。

上官竹文:
私の実家は飲食店を5店舗経営しています。そのため、「いずれは自分も事業を興したい」という思いがあり、神奈川大学を卒業後、大手飲食店に入社したのです。その会社が、350店舗ほどの居酒屋を展開するベンチャーであったことから、実店舗で働きつつ、店舗管理や広告などの業務も経験しました。在職中の3年間、ほぼ休みなく働きましたが、そのおかげで飲食業界の現場を徹底的に知ることができたと思います。その後、不動産業界に転職して2019年に独立し、現在に至ります。

ーー飲食業界や不動産業界での経験が活きたと感じることありますか?

上官竹文:
飲食業界では、300店舗以上の広告を担当していたため、「どのエリアで、どの程度の広告を出せば売上につながるのか」というデータが自然と頭に入っていました。この経験があったからこそ、現在も効果的なマーケティングができていると思います。また、不動産業界では、入社してすぐに売上目標を達成し、会社でトップの成績を収めることできました。この成功体験の一つひとつが自信となり、独立への大きな支えになったと思います。

直感を信じて突き進み新たなビジネスへ着手

ーー創業からの歩みを詳しく教えてください。

上官竹文:
創業当初は、飲食事業を中心に西日本でタピオカ店を12店舗オープンし、1日で1000万円以上の売り上げを達成しました。しかし、コロナ禍の影響で社会全体が混乱したことから、事業の継続が困難になり、最終的にはやむなく撤退することになったのです。その後は、海外からマスクを仕入れて販売するなど、社会情勢に合ったニーズを捉えてビジネスを展開しました。

試行錯誤した結果、最終的に辿り着いたのが店舗専門の不動産事業です。コロナ禍で多くの飲食店が打撃を受け、特に首都圏では空きテナントが増加しました。この状況に着目し、「不動産業は今がチャンス」と思い切って新たな挑戦を始めたのです。

周囲からは「この時期に不動産業を始めるのはリスクが高い」と反対されましたが、結果的に大きな反響を得ることができました。飲食業界と不動産業界の両方で成果を上げてきたことと、誰も手を出していない分野であることが、チャレンジを後押ししてくれたのだと思います。現在では、首都圏を中心に事業を展開し、店舗専門の不動産業者として確かな手応えを感じています。

ーー「店舗専門の不動産」とはどのような事業なのでしょうか。

上官竹文:
弊社では、店舗の出店を考えている方と、店舗を閉めたい・貸したい方をマッチングさせるサービスを提供しています。

たとえば、通常の不動産業者では、退去後に解約を行った場合、半年以内にスケルトン工事を「しなければならない」ことが一般的です。しかし、撤退するオーナーにとって解体費用は大きな負担となります。一方で、出店を希望するオーナーには、居抜き物件でも問題ないという方が多いため、弊社ではそのようなケースをうまく仲介しています。これにより、双方にとってメリットのある不動産売買が実現しているのです。

ーー貴社の強みはどんなところにあるとお考えですか?

上官竹文:
弊社の強みは「情報公開していない物件を数多く保有している」ことです。他社よりも優れた条件の物件を取り揃えており、お客様が求める物件を迅速にご紹介することができます。

弊社のお取引先は、日本人が6割、残りの4割は中華系のお客様です。不動産取引では契約書のやり取りなど複雑なコミュニケーションが伴いますが、外国人のお客様にとってそのハードルは非常に高いものです。そこで、弊社の店舗には中国人やネパール人などの外国人スタッフを常駐させ、お客様の「慣れた言葉」で対応できるようにしている点も強みになっていると思います。

プラットフォーム確立と民泊オープンを目指して

ーー今後の展望についてお聞かせください。

上官竹文:
今後は、独自の「飲食店舗専門の不動産プラットフォーム」を立ち上げる予定です。このプラットフォームでは、飲食店のオーナーが店舗を開店する際に、内装業者や広告業者、仕入れ先の畜産農家などを一括でマッチングできるシステム構築を目指しています。私も新規店舗を開店する際、慣れない土地で多くの業者を探すのに非常に苦労した経験があります。このプラットフォームが実現すれば、オーナーの負担を大幅に軽減できるため、しっかりと形にしたいです。最初は一都三県からスタートし、将来的には全国展開を目指したいと思っています。

また、外国人観光客の宿泊先を確保するため、民泊業へも参入しました。弊社が保有している物件を活用し、ユニークなサービスを提供できるように準備を進めています。オープンが楽しみですね。

ーー最後に、読者の方々へのメッセージをお願いします。

上官竹文:
弊社は少数精鋭でここまで成長してきました。現在、年収1000万円を超える営業社員も在籍しており、私が持つノウハウを惜しみなく伝えています。目標は、全員が年収2000万円を超えることであり、それが実現ができるよう社員教育にも力を入れています。やる気さえあればしっかりとサポートしますので、不動産業界が未経験の方でもぜひ弊社でチャレンジしていただきたいですね。

編集後記

上官竹文氏のビジネスに対する情熱は、時代の変化や困難な状況にも揺るがず、前進し続けるための原動力になってきた。彼が成し遂げた成功の裏には、「自分で事業をやりたい」という幼少期からの夢と、市場の動向や顧客ニーズを的確に捉える力があったと言えよう。柔軟に変化を受け入れ、常に学び続ける上官氏の姿勢が、同社のさらなる成長を支えるに違いない。

上官竹文/1993年生まれ、2007年に来日。2016年に神奈川大学卒業、大手飲食店に入社。2018年に店舗専門不動産に転職。2019年6月に飲食事業を起業し、2020年には店舗専門の不動産事業部を設立。2021年には埼玉に600平米の中華料理店を開店。飲食と不動産の双方に強みを持ち、開業から運営までトータルでサポートする体制を構築。