※本ページ内の情報は2025年5月時点のものです。

岐阜県内に19店舗を展開し、年間3,000台以上の新車販売実績を持つホンダ正規ディーラーである株式会社ホンダカーズ岐阜。同社は県土の約80%が森林という地域特性の中で、自動車の販売からメンテナンス、保険の提案までをワンストップで提供し、地域住民の生活の足を支えている。100年に一度の変革期を迎えている自動車業界において、地域に密着した事業を展開する、代表取締役社長の西谷隆志氏に話をうかがった。

研究職からディーラーへ、異色のキャリアチェンジ

ーー貴社に入社するまでの経緯を教えてください。

西谷隆志:
私は子どものころからものづくりに興味があり、大阪大学で博士号を取得し、研究職として三菱電機株式会社に就職しました。入社当初は研究所に配属されましたが、よりものづくりに近い場所で働きたいと考え、自ら工場への異動を希望しました。その結果、希望通り工場で製品開発などやりたかった仕事に携わることができるようになり、大きなやりがいを感じていました。

その後、35歳か36歳のころ、当時、弊社の会長であった義父から「うちに来ないか」と声をかけてもらったのですが、三菱電機で達成したい目標があったので一度断りました。それから1〜2年後、目標を達成し、その後のキャリアを見つめ直したとき、ずっとこの分野で技術者として進むだけではなく、違う道もあるのではないかと感じたのです。そのときはじめて「岐阜でディーラーをやる」ということがキャリアの選択肢に入ってきました。

私はもともと車が好きで、三菱電機で車の技術開発に携わった経験もありましたし、自動車業界は100年に一度の変革期ともいわれているタイミングでした。ここで挑戦してみるのも面白いと考え、会長に「入社させてください」とお願いしに行き、入社しました。

ーー入社後はどのようなことに取り組みましたか?

西谷隆志:
入社後は会長から「自分で考えて、自由にやっていい」と言われ、経営企画室長というポジションをもらいました。そこで、まずは現場の状況を知ろうと思い、岐阜県内にある19店舗を回り、働いている人たちと直接話をすることにしたのです。

その結果、見えてきたのは、各店舗がそれぞれ独立した会社のようになっているということでした。店舗によって仕組みがまったく異なるので、人を異動させるのも難しい状況です。交流がなければ成長が止まり、自分の職場を振り返る機会も失われます。そこを解決するために、DXを推進して情報共有を図り、共通の評価制度を導入するなど、店舗間の差を埋める仕組みづくりに取り組みました。4年ほどそのような社内の改革に取り組んだ後、社長に就任することとなりました。

県内19店舗で展開する、地域密着型の自動車総合サービス

ーー貴社の事業内容を教えてください。

西谷隆志:
弊社は、岐阜県内で最大の規模を誇るホンダの正規ディーラーとして、19拠点で新車や中古車の販売とアフターサービスを行っています。販売後のメンテナンスや自動車保険のご提案など、お客さまとの長期的な関係づくりを重視し、車に関するさまざまなサービスをワンストップで提供しているのが特徴といえるでしょう。特に県内では生活の足として車を使われる方が多いので、より多くのお客さまに安心して車を使っていただけるよう、サービスの充実に努めています。

ーー社長に就任してから力を入れているのはどのような部分ですか?

西谷隆志:
新車の販売だけでなく、整備や保険への加入といった自動車関連サービスの収益をしっかり確保することです。社長に就任した時はコロナ禍の真っただ中だったのですが、そのとき改めて、生活の足として車を使っている人たちにとって、自動車の整備は欠かせないものだということを実感しました。

ですから、この領域での売上をしっかり確保していれば、非常時でも会社がつぶれるリスクを減らせると考えました。お客さまがディーラーに求めているのも、まさにこうしたサービスの提供だと思っています。

物売りから脱却し、新たな価値提供を目指す

ーー今後のビジョンについて教えてください。

西谷隆志:
大切なのは、車を生活の足として使っているお客さまの暮らしが豊かになることです。それは、この先ずっと変わらず守っていかなければならない部分だと考えています。また、岐阜県には、ホンダの資本が入った正規ディーラーが存在しないため、弊社がその役割を責任を持って果たす必要があると思っています。

加えて、岐阜は県土の約80%が森林です。そのような地域で安心安全に生活するため、車とその周辺の領域でどのようなサポートができるのか。すでに新車を売るだけという時代は終わっており、現在はお客さまにどのようなご提案ができるかが重要です。EV(電気自動車)など選択肢が広がる中で、お客さまにとって一番いい提案を行えるようになりたいですね。いわゆる「物売りからの脱却」を弊社一丸となって達成したいと思います。

ーー最後に、貴社への入社を検討している方へメッセージをお願いします。

西谷隆志:
県外出身の私から見ても、岐阜は本当に素晴らしい場所です。岐阜市の中心には清流が流れていて、観光スポットや遊べる場所も豊富にあり、名古屋まで30分で行けるので不便さを感じることはありません。

「地元の岐阜に戻って働きたい」という声をよく耳にしますが、弊社はそのような方々の就職の窓口になりたいと思っています。地元を盛り上げたいという思いを持つ方はもちろん、県外出身の方も大歓迎です。弊社をぜひ、選択肢のひとつとしてご検討いただけますと幸いです。

編集後記

県外出身でありながらも、地域の特性や課題を深く理解し、その解決に向けて真摯に取り組む姿勢に感銘を受けた。西谷社長の言葉には、車を売る会社から、暮らしを支える会社へと進化していくという意志が感じられる。地域に根差した企業として、そこに暮らす人の未来を見据えた確かな見通しが、新たな挑戦の背中を押しているのだと実感した。

西谷隆志/1981年、大阪市生まれ。大阪大学にて博士課程修了後、三菱電機株式会社に入社。理系研究者として通信技術の研究に携わる。2017年、株式会社ホンダカーズ岐阜に入社。2020年、代表取締役社長に就任。