※本ページ内の情報は2025年5月時点のものです。

株式会社ライノは、コンテンツ制作や自社メディアの運営、アパレルブランドを展開するクリエイティブ集団だ。代表の蔡俊行氏は、雑誌『POPEYE』の編集者として辣腕を振るった経験を持つ。現在は主にファッションの分野で活躍する同社だが、今後は他分野にも進出を考えているという。躍進を続ける同社の展望や、社員への思いをうかがった。

始まりはファッションブランドのアシスタント

ーー編集・広告業界に入ったきっかけを教えてください。

蔡俊行:
もともとファッションが好きで、アパレル会社で働いていました。商品企画のアシスタントから雑誌出版社へ商品の貸し出し、社長への取材依頼の窓口まで、さまざまな経験をする中で、自然とマスコミや広告関係の方々とご縁ができたのです。

そんな中、出版社の方から編集の仕事にお声がけいただき、私自身何か新しいものに挑戦したいという思いもあって、情報誌『POPEYE』の編集部で働くことになりました。それがこの業界に入ったきっかけです。

ーー貴社設立までの経緯をお聞かせください。

蔡俊行:
『POPEYE』編集部在籍中はバブル真っ盛りで、景気が良い分、仕事もとても忙しかったですね。がむしゃらに働き、20代半ばから後半にかけて編集者として駆け抜けました。

その中で出会ったクライアントとのご縁や、さまざまなタイミングが重なり、3人の仲間と弊社の前身にあたる会社を設立しました。編集者時代のつながりから会社が生まれた形ですね。

WEB媒体のパイオニアとして『フィナム』を創刊

ーー貴社の事業内容を教えてください。

蔡俊行:
一つは『フィナム』をはじめとした広告媒体制作部門で、もう一つが自社ブランド『ホワイトマウンテニアリング』などを製作するアパレル部門です。

広告媒体制作部門は、さらに媒体部門と制作部門の2種類に分かれ、媒体部門は自社媒体の『フィナム』や『ガールフィナム』の制作をメインに行っています。制作部門では、他社の販売促進に関わる制作物を、企画からデザイン、コーディングまですべて担当しています。

アパレル部門では国内外の小売店と取引を行い、ブランドを展開。全国展開している大きなファッションビルではなく、いわゆる地域の一番店とお取引をしています。地域密着の店舗に商品を置く方が、よりその土地の方々に弊社のブランドを注目してもらえるのではないかと考えたからです。

ーー貴社の看板媒体である『フイナム』の創刊までの経緯を教えてください。

蔡俊行:
2000年代初頭、時代の潮流もあり、フリーペーパーがとてもはやりました。私たちもつくろうとしたのですが、コストや流通経路など、制作には諸々の課題がありました。

そこで、フリーペーパーのようなものをWEB上でつくるという発想が生まれ、2004年10月に誕生したのが『フイナム』です。WEBの自社媒体という形では、弊社はパイオニアといえるかもしれません。

最初は鳴かず飛ばずでしたね。しかし『フイナム』でアニメーションアートなどクリエイティブな取り組みを行い、ショーケースとしてクライアントに見せることで、それをきっかけに仕事をいただくという好循環が生まれました。赤字の媒体で仕事がもらえるというサイクルです。

運営を続けるうちに読者や仲間がどんどん増え、誕生から8年を迎える頃には黒字化に成功しました。

『フイナム』は、モダニティへの感度が鋭い読者が多い媒体です。そのため、一つひとつの広告への反響が大きく、販売促進効果が高いという評価をいただいています。PV数先行ではなく、読者層に合わせてコンテンツの内容を充実させることに注力しています。

文化的なライフスタイルをさまざまな角度から提案していく

ーー今後の展望をお聞かせください。

蔡俊行:
今後は、ファッション以外にも手を広げていきたいと考えています。

弊社の事業の主軸は、生活を豊かにする、彩るという「文化的なライフスタイル」の提案です。そういった意味では、インテリアやスポーツ、イベントなど、生活に関連するものすべてが対象となります。

弊社は、スタイリッシュにセンス良く何かを見せていくのが得意な会社です。たとえば「素敵な家電を広告したい」という要望があれば、さまざまな角度で提案ができます。その強みを生かし、ファッション以外の分野にも進出できればと考えています。

同時に、長くお付き合いしてくださるクライアントも変わらず大切にしたいですね。マンネリにならないように、常に新しいクリエイティブで、担当の方やその先にいる消費者の方々を驚かせていければと考えています。

ーー社内制度の確立にも注力しているそうですね。

蔡俊行:
その背景には、働いている社員の幸福度を上げたいという思いがあります。私自身、仕事が生きがいで、好きなことの延長として楽しんで働いてこられたからこそ、今があると考えています。社員も、ファッションや出版、広告などに興味があって弊社に入社しているので、やはり、これからも楽しんで仕事をしてほしいですね。

楽しい仕事とは、やりがいや達成感がある、扱われ方がフェアであるなど、人によって定義が異なると思います。まずは人事評価の改善から着実に取り組み、文化制度などを設計し、実践している最中です。

また、展望で事業拡大について触れましたが、それは社員の幸福度を上げるための手段です。事業拡大を図るために社員の幸福度を上げるのではなく、社員の幸福度を上げるために事業拡大が必要だと考えています。

仕事もプライベートな活動も両方楽しめるような、ワーク・ライフ・バランスが整った企業にしていきたいですね。

編集後記

蔡社長の話から、良いクリエイティブには「楽しむ気持ち」が欠かせないのだと学んだ。「好き」の気持ちを原動力に邁進する同社は、今後さらに私たちを驚かせてくれるだろう。同社の今後に注目したい。

蔡俊行/アパレル企画を経て、1986から1994年までフリーランスの雑誌編集者として『POPEYE』編集部に在籍。1994年編集・広告制作プロダクション株式会社ライノの前身会社を設立。2004年10月よりファッション・ライフスタイルWEBマガジン『フイナム』を創刊。