※本ページ内の情報は2025年10月時点のものです。

医療機関向けの統合型データ管理システム「FORZシリーズ」を製造・販売する株式会社エクセル・クリエイツ。同社は、超音波検査やレントゲン、MRIなどの画像管理から血液検査データの統合まで、医療現場に欠かせないシステムを手がけている。また、フィリピンでの導入実績を持ち、2024年にベトナム・ハノイに駐在員事務所を開設。加えて、日本の医療・ヘルスケアの海外展開を推進する「Medical Excellence JAPAN(MEJ)」のプロジェクトにも参画し、アジア地域の医療発展に寄与する取り組みも進めている。同社の代表取締役、棚田誠氏に話をうかがった。

未経験からプログラマーへ、医療業界に貢献するシステム開発のために起業

ーー独立するまでのご経歴についてお聞かせいただけますか。

棚田誠:
私は1989年に大学を卒業し、企業のシステム開発を担うSIer(システムインテグレーター)である株式会社オービーシステムにプログラマーとして就職しました。このときは、いずれ独立することになるとは思ってもいませんでした。

IT関連の業務は未経験の領域だったので、情報処理の資格を持っている人たちと比べると、かなり出遅れたスタートだったと思います。先輩に教えていただきながら諦めずに勉強し、地道な努力を続けることで、なんとか乗り切ることができました。懸命に働いているうちに、社内にネットワークを取り入れるプロジェクトの責任者に抜擢されるようにもなりました。その後、プログラマーからシステムエンジニアになり、営業を経験しました。

ーーその後、起業するまでの経緯を教えてください。

棚田誠:
ネットワーク管理の責任者という立場やシステムエンジニアを経験したことで、多くの知識やスキルが身につき自信もついた頃、営業として検査部門のシステム構築に携わるなかで、放射線画像システムの需要が高まっていることを知りました。社内でもシステム開発を提案しましたが、残念ながら採用には至りませんでした。それでも医療業界で画像システムが求められていることは確かでした。医療従事者の負担を減らし、診療効率向上につながるシステムを開発して医療業界に普及させたい。それにより、日本の医療、果ては世界の医療を支えたい。そんな使命感を胸に「この会社でそれができないのなら自分で事業を始めてみよう」と決意し、独立に至りました。

ーー起業後はどのような苦労がありましたか?

棚田誠:
経営については素人同然の3人で創りあげた会社だったので、本を読んだり勉強会に参加したりしながら、経営の知識を積み重ねました。「みんなで創りあげた会社」という団結力が高まったのはよかったのですが、開業から半年くらいは仕事がなくて困りましたね。

事前にリサーチしていた医療業界で求められているものを作りあげることばかりに注力していましたが、作った製品を売るということの大変さを思い知らされたのです。

起業したばかりの頃は、銀行にもなかなか相手にしてもらえず、大阪商工会議所中央支部の支部長が銀行を紹介してくれたおかげで、なんとか融資を受けることができました。

そんななか、前職で関係のあった企業の方による推薦や、社員による前職の会社への紹介など、人脈や地道な営業活動のおかげで少しずつ仕事をいただけるようになりました。まったく実績のなかった弊社の製品を医療機関で使っていただくということは、信頼のおける方の推薦や紹介なくしては成しえないことでした。

このようなご縁に助けられながら一つ一つ信頼と実績を積み重ねていくことで、次第に安定した顧客を獲得できるようになりました。

電子カルテと連携する統合型データ管理システムで医療DXを推進

ーー貴社の事業内容を教えてください。

棚田誠:
弊社は、医療機関向けの統合型データ管理システム「FORZシリーズ」の製造・販売を行っています。具体的には、超音波検査やレントゲン、MRIなどの画像を管理・閲覧する画像システムや、血液検査や尿検査などの検査データを管理する検査システム、健康診断の一連の業務をサポートする健診システムなど、各部門におけるデータ管理システムが弊社の主力製品です。

前述した各システムを統合し、電子カルテと連携することによって、患者さんの検査結果の履歴が一目でわかるような仕組みになっています。DICOM画像と呼ばれる医療用画像以外の汎用画像データ等も一元管理できるほか、病院の形態に合わせて機能をカスタマイズできるなど、使いやすい機能を搭載しています。2025年9月時点で、フィリピンの1施設を含めた1,730以上の医療機関で導入していただいています。

また、弊社の子会社であるAIメディカル株式会社では、医療機関で撮影した画像を専門の先生が読影する、「健診向け遠隔読影サービス」を提供しています。11名の専門医と契約して、健康診断や人間ドックなどにもスピーディーに対応できる体制を整えています。

そのほか、鹿児島大学・鹿児島放送と協力して、気象情報を加味したヒートショック注意情報を発信するサービスも展開しています。

ーー貴社の魅力はどのようなところですか?

棚田誠:
新しいことに挑戦できる自由な風土を大切にしているところだと考えます。社員のアイデアから特許の取得を目指せる新たなシステムの開発につながった事例もあります。

また、弊社の製品であるFORZシリーズは、現場に合わせたさまざまな機能のカスタマイズができるという特徴がありますが、最適な機能設定のためにはエンジニアの知識や技術力が欠かせません。社員の技術力向上が顧客へのサービス向上へ直結すると考えています。

そのため、弊社はIT企業として世界に通用する技術力のある会社を目指し、社員一人一人のスキルアップを促進するべく、資格取得応援制度にも力を入れています。

さらに、オンラインでビジネス・IT各種セミナーを受講できることや英会話教室、スポーツジムの無料利用などの福利厚生が充実しているところも魅力の一つであると思っています。節目の年には社員旅行も行っています。創業10周年の際はグアムに、15周年の際は船上パーティ、創業20周年は沖縄とハワイの2組にわかれて記念旅行に行きました。有志の社員による勉強会や、お花見などのイベント開催、昼休みを利用したトーク会などもあり、社員同士の交流の場も多く設けられています。私は、「楽しく仕事をしたい」と考えており、社員とも「いろいろな楽しみを見つけながら、一緒に仕事をしましょう」というスタンスで接しています。

社員それぞれのライフステージ、ライフスタイルに合わせた自由な働き方を意識しており、テレワークやフレックスタイム制を導入した柔軟で働きやすい環境が、社員の能力を十分に発揮させていると感じています。

東南アジアを中心に海外事業の拡大を目指す

ーー海外進出もしているそうですが、どのような事業を展開していますか?

棚田誠:
これまでの実績としては、フィリピンにある健診施設で弊社の画像システムが使用されているほか、2024年11月に、ベトナムのハノイに駐在員事務所を開設しました。まずはベトナムでの活動に注力し、その後、東南アジアを中心とした海外展開を加速させたいと考えています。また、弊社は経済産業省が支援する「Medical Excellence JAPAN(MEJ)」という組織に会員として参加しており、日本の医療を海外に広める取り組みを進めています。

ーー最後に、貴社の今後の展望をお聞かせください。

棚田誠:
弊社はIT企業なので、高品質なソフトウェア・サービスを開発して、医療機関に提供し続けたいという思いがあります。政府が医療DXを推進している今、医療機関が抱える業務効率化の課題や、医療情報の二次利用に関するニーズにも応えていきたいと考えています。より多くの医療機関に弊社の医療システムを導入していただけるよう、既存システムの機能拡張を行うとともに、AI技術を活用した製品など新たな製品の開発にも力を入れていきます。日本のIT技術で世界の医療を支えられるよう、日々成長し続ける企業でありたいと思います。

編集後記

医療現場のデジタル化という社会的な課題に向き合いつづけてきた棚田社長の言葉には、技術を通じて医療に貢献したいという強い思いが込められていた。SIer時代の経験を基に起業し、幾多の困難を乗り越えて成長してきた道のりは、システム開発企業の経営者としての矜持を感じさせる。自社製品の海外展開にも積極的に取り組む姿勢からは、日本の医療システムの価値を世界に広げようとする意欲が伝わってきた。

棚田誠/1965年、大阪府生まれ。1989年、龍谷大学経営学部卒業後、株式会社オービーシステムに入社。プログラマー、システムエンジニアを経験後、営業を担当。2004年、株式会社エクセル・クリエイツを創業し、代表取締役に就任。