※本ページ内の情報は2025年4月時点のものです。

国内で750万ダウンロード(2024年12月時点)を突破し、利用企業は80以上にものぼる子ども向け社会体験アプリ「ごっこランド」。このアプリの開発・運営を行っているのが、株式会社キッズスターだ。現在では、ごっこランドの世界観を再現したリアル体験型イベント「ごっこランドEXPO」も開催している。

アプリ開発に至るまでのエピソードや、企業ミッションの「子どもの夢中を育て、応援する」に込めた思いなどについて、代表取締役の平田全広氏にうかがった。

バックパッカーの経験で得た自ら道を切り拓いていく大切さ

ーーまずは平田社長のご経歴についてお聞かせください。

平田全広:
大学卒業後は広告制作会社に入社し、企画やコピーライティングの仕事をしていました。やりがいは感じていたものの、いずれスポーツに関わる仕事がしたいと思っていました。

そうした中、世界各国で開催されているサッカーや格闘技の試合を見に行こうと思い立ちます。その間に得た知見は、スポーツ関連の仕事に就いたときに活かせると思い、2年間の放浪の旅に出ました。バックパッカーは今夜泊まる場所や次の行き先など、常に自分で判断しなければいけません。

こうして自由な環境に身を置いたことで、自分の思いを実現していくためには、能動的に動くことが大切だと学びましたね。その後、帰国して転職活動をしているときに、サイバーエージェントがスポーツメディアを立ち上げると耳にしました。

この会社に入れば、自分がずっと携わりたかった仕事ができると思い、入社を決めました。入社後はFIFAワールドカップや、イチローさんのメジャーリーグでの活躍ぶりなどを取り上げるメディア制作に携わりました。

その後、エンタメやコンテンツ制作にも携わるようになり、芸能人も発信しているアメーバブログの立ち上げに参画しました。

750万ダウンロードを記録するお仕事体験アプリが誕生するまで

ーー今の事業を立ち上げ、社長に就任するまでの経緯を教えてください。

平田全広:
それまで関わっていた事業が一旦落ち着き、これから人生をかけて打ち込めるものを探していました。そのタイミングで子どもが産まれ、子育てをする中で、子ども向けコンテンツが自分の時代から変化がないことに気が付いたのです。

そこで、当時スマホが普及し始めたこともあり、お仕事体験ができる無料アプリをつくろうと思い立ったのです。協力してくれるところがないか探したところ、アイフリークモバイルに興味を持ってもらえたため、事業の立ち上げに注力するために転職しました。

はじめは資金を確保するため、課金制のサービスから始めようと考えます。そして2011年に立ち上げたのが、およそ400冊の絵本を月額300円で読める読み放題サービス「森のえほん館」です。それから2013年に「ごっこランド」の配信をスタートし、事業の子会社化にともない代表取締役に就任しました。

子どもの興味をかき立てるアプリの可能性。アプリから派生したリアルイベントの開催

ーーアプリの利用者からはどのような声が上がっていますか。

平田全広:
障害があるお子さんたちが通う特別支援学校からは、その子が興味のあるものに関連づけて勉強ができるところが良いというお声をいただいています。たとえば鉄道好きの子であれば、路線名や列車の名前から漢字を覚えられるといった具合です。

また、環境の変化が苦手なお子さんが多く、なかなか外出ができない中、アプリならばどこでもプレイでき、楽しみながら知識を得られる点が評価されていますね。

ーー体験型イベント「ごっこランドEXPO」を始めたきっかけを教えてください。

平田全広:
デジタルから飛び出し、実際に体験できる環境をつくりたいと思ったのがきっかけです。企業様からも協賛していただき、全国各地で週に1回のペースで開催できるよう、今年は30箇所での開催を目指しています。

このイベントを通じて、企業と親子の接点をつくる場にしたいと考えています。たとえば、ワークショップでメーカーの商品を知った親御さんが「今度買ってみようか」と販売促進につながることを期待しています。

そして企業の方々にとっても、子どもたちが楽しむ姿を見ていただくことで、新たな気付きを得られる場になればと思っていますね。

ーー最近では多くの企業とコラボレーションしていますね。

平田全広:
ユーザー数の増加に伴い、スクウェア・エニックスさんやサンリオさんなど、有名企業からお声がけいただけるようになりましたね。これは弊社が「子ども向けだからこの程度でいいだろう」と手を抜かず、子どもたちが本当に楽しめるものをつくっているからだと考えています。

こうした姿勢が、多くの企業様から評価されているのだと思います。

海外展開への意気込み。子どもたちのやりたいことを探すツールとして役に立ちたい

ーー今後のビジョンについてお聞かせください。

平田全広:
今後はアジア圏にも弊社のサービスを広めていきたいと考えています。2023年8月からはベトナムで配信を開始し、120万ダウンロードを達成しました。現在は日系企業を中心に展開を進めており、ドレッシングなどの製造を行うキユーピーさんには、楽しく野菜の知識を学べるコンテンツを提供していただいています。

実際に野菜嫌いだったお子さんが、ゲームをプレイしたのをきっかけに野菜を食べるようになったという声も届いています。こうしてゲームを通じて企業のPRになることをアピールし、弊社のサービスを海外にも浸透させていきたいですね。

ーー最後に読者の方々へメッセージをお願いします。

平田全広:
弊社は企業ミッションとして「子どもの夢中を育て、応援する」を掲げています。親は子どもに道を示すのではなく、子どもが夢中になれるものを一緒に見つけることが大切だと考えています。

そのため、子どもたちが自分の興味や可能性を探るためのツールとして、弊社のサービスを活用してほしいですね。そして、親御さんたちが経験したことのない分野を一緒に学び、疑似体験することで、視野を広げるきっかけになれば幸いです。

また、アプリ機能をバージョンアップし、将来の職業を探すお手伝いがしたいと考えています。たとえば、ごっこランドのプレイデータをもとに、お子さんの特徴を分析して適切な職業を提案し、さらにプロに相談に乗ってもらえるよう、マッチング機能の追加を検討中です。

こうして弊社のサービスを通じて子どもたちが夢中で取り組めるものを見つけられるよう、これから新たな可能性を探っていきます。

編集後記

「親ができるのは、子どもが夢中になれるものを一緒に見つけること」と話す平田社長。自分の考えを押し付けず、子どもが心からやってみたいことを見つけられるよう、そばで見守ることが大切なのだと改めて感じた。株式会社キッズスターはこれからもアプリやイベントを通じ、子どもたちの可能性を広げていく。

平田全広/1973年奈良県生まれ。関西大学卒業。
広告会社に3年間勤務した後、2年間バックパッカーとして海外を放浪。
2001年に帰国し、株式会社サイバーエージェントに入社、アメーバブログ事業などを手掛ける。
2008年に株式会社アイフリークモバイルに入社。子どもの誕生をきっかけに子ども向け事業を立ち上げ、2013年に「ごっこランド」の配信を開始。
翌年株式会社キッズスターを設立し、代表取締役に就任。