
AIが台頭する昨今、「対話力」の重要性がより一層高まっている。株式会社アイグローブは、対話によって顧客の課題を的確に把握し、ITの力を活用して解決へと導く企業だ。その高度な技術力により多くの顧客から厚い信頼を得ており、大手の金融、通信、建設会社との取引実績がほとんどだ。同社を率いる代表取締役の宮城勤氏に、人材育成や組織づくりについて話をうかがった。
社会の一員として「世のため、人のため」になることをしたい
ーー社長のご経歴を教えてください。
宮城勤:
私は、父から「自分で責任を取れるポジションで仕事をしなさい」と教えられて育ちました。そこで、安定よりも成長を重視する考え方が身についたのだと思います。大手通信企業のグループ会社に入社し、工業用ロボットの研究開発に携わりました。
しかし、マーケットの規模を考えると、独立後の事業とするには厳しいと判断し、金融系のシステム開発へ進むことに。そして、よりマーケットの規模が大きい金融分野で経験を積んだ後、1997年に独立し、3人のメンバーとともに弊社の前身となる会社を立ち上げました。その後、2005年に組織変更を行い、現在のアイグローブとなりました。
ーー貴社の事業内容をお聞かせください。
宮城勤:
弊社の事業は大きく分けて2つあります。まず1つ目のSI(システムインテグレーション)事業は、企業が抱える課題をITの力で解決するためのシステムを構築するというものです。特に金融、公共、通信業界のお客様が多いですね。
もう1つはクラウドサービス事業です。こちらでは、お客様がクラウド上で利用するさまざまなサービスの価値を最大化できるよう、サービス同士を最適につなげる技術(Connect Services)を提供しています。
ーー仕事において大切にしている考えを教えてください。
宮城勤:
弊社が目指しているのは、ITの力で社会の課題を解決し、より良い環境をつくることです。それこそが弊社の企業理念であり、社会に対する責任だと考えています。また、社会の一員になるということは、誰かの役に立つということです。社員には「世のため、人のためになることを皆で追及しよう」と伝えています。
誰かの役に立ちたいという思いこそが、成長の原動力

ーー人材を採用する際に重視しているポイントを教えてください。
宮城勤:
採用で重視しているのは、何よりも「人間性」です。これまでに学んできたことよりも、その人自身の考え方や信念、将来の目標を大切にしています。技術は後から身につけられますが、土台となる考え方がしっかりしていないと、いくら知識を積み重ねても伸び悩んでしまうと思うのです。
弊社はお客様との対話やコンサルのような業務が多く、技術力に加えて、お客様の抱える課題を引き出すための、人間としての幅や深さが求められます。お客様と強固な信頼関係を築く上で、やはり「人間性」は欠かせません。
ーー上記の他に、どのような人が貴社に向いているのでしょうか?
宮城勤:
「人のために働きたい」という思いを持っている人です。身近な家族や友人のためだけでなく、顔の見えない多くの人々に価値を提供し、喜んでもらうことにやりがいを感じる人が向いていると思います。自分の周りだけでなく社会全体を視野に入れ、相手の立場に立ってどう貢献できるかを考えられる人が成長し、活躍していますね。
ーー社内はどのような雰囲気ですか?
宮城勤:
非常にフラットな雰囲気ですね。弊社では、年次や役職に関係なく、自分ができることを考え、自発的に動く姿勢を大切にしています。ただ上司の指示に従うのではなく、意見を出し合いながら議論し、より良い方法を模索できる環境だと思います。
グローバル展開を視野に、組織体制の強化を目指す
ーーより良い組織づくりのために、どのようなことに注力していますか?
宮城勤:
経営幹部の育成と管理部門の体制強化に力を入れていきたいと考えています。幹部育成では、私の考え方を浸透させるために、会議を通じて経営の重要なポイントを共有したり、コーチング研修を導入したりしています。管理部門の強化については、弊社が2025年に上場予定であるため、社会性やコンプライアンスをより適正化し、それにふさわしい組織体制や人材教育を進めているところです。
ーー最後に、今後の展望をお聞かせください。
宮城勤:
今後は、やはりグローバル展開が不可欠だと考えています。日本は人口減少や高齢化が進み、労働人口も減少しているため、国内市場だけでは事業の持続が難しくなることが予想されます。今後成長が見込まれる地域、特にアジア市場を視野に入れ、展開を進めていきたいですね。その地域のニーズに合ったサービスを提供しながら、より多くの人々に価値を届けていくことを目指していくつもりです。
編集後記
アイグローブの取引先は大手企業が中心であるが、積極的に営業をかけるよりも企業側から依頼が寄せられることが多いという。宮城社長の思いが社員にしっかりと伝わり、一人ひとりが共感を持って働いているからこそ、クライアントの課題解決において高いクオリティを実現し、多くの企業から信頼を得ているのだろう。社員の自主性を引き出しながら組織としての一体感も醸成する、同社のバランスのとれた経営手腕に感服した。

宮城勤/1968年、福島県生まれ。大手通信企業のグループ企業で工業用ロボットの研究開発に従事。その後、金融系のシステム開発の仕事を経て、1997年に独立。2005年に株式会社アイグローブを設立し、代表取締役に就任。