※本ページ内の情報は2025年5月時点のものです。

国際興業株式会社は80年以上にわたり、バス事業を中心に運輸・交通、観光・レジャー、商事、不動産の4つの事業を柱に成長を遂げてきた。その多角的な事業展開を支えるのは、社員一人ひとりの情熱とチャレンジ精神にほかならない。

近年では、新卒採用と中途採用の双方に力を注ぎ、人財の多様性を確保し、長期的な成長を見据えた育成施策を強化している。今回は、代表取締役社長の黒滝寛氏に、多面的な事業戦略と人財育成の展望について話をうかがった。

営業職の現場から多角経営のリーダーへ

ーー社長のこれまでの経歴を教えてください。

黒滝寛:
前職では油圧機器メーカーで主に営業部門を統括し、BtoBビジネスで、航空機器、産業機械の部品販売に携わり、技術部門との詳細な仕様調整や資材部門との納期・価格交渉等、多くのお客様と仕事をさせていただきました。そしてお客様のニーズの把握、問題解決やアイデアの提案等、それらが自身のスキル形成となり、更にはキャリアアップにつながりました。

こうした経験は、現在弊社がさまざまな分野に展開する多角的な事業運営や、それらをまとめる部門間の連携等、事業を推進する上で活かすことができると思っています。

ーー経営方針について、特に意識していることは何ですか?

黒滝寛:
弊社に入社後は、お客様と直に接して要望を受けとるBtoCの業務が中心となりました。前職で経験した企業間のBtoBの業務とは、サービス提供へのアプローチ方法が全く異なることに気づき、新しい視点を持つ必要を強く感じました。

2024年の代表取締役就任後、経営において最も重視するようになったことは「お客様の声をどのように経営に取り入れるか」という点です。お客様の要望を経営方針に反映し、現場での取り組みを通じて実現することは、社員にとっても貴重な学びになっています。

現場主義を徹底することが社員の成長につながり、それが顧客満足の向上につながるという好循環を生み出していると実感しています。

ーー貴社の事業内容と特徴を教えてください。

黒滝寛:
弊社は、路線バスや高速バスなどの運輸・交通事業を中心に、観光・レジャー、流通・商事、開発・不動産と多岐にわたる事業を展開しているのが特徴です。基幹事業であるバス事業においては、900台以上の車両を保有し、乗合バスや夜行高速バス、空港連絡バス、観光バスを運行し、地域住民や観光客の多様な移動ニーズに応えています。

また、商事部門では、白元と共同開発した業務用消臭スプレー「清水香(SEISUIKA)」を開発し、ホテル業界でトップクラスのシェアを誇るなど、高い評価を得ています。さらに、国内外のホテルやゴルフ場、不動産業などの多角的な事業をグループ一体となって手掛けることで、これらの相互連携により際立った競争力が発揮され、安定した成長を支えていると分析しています。

多様な事業展開がもたらす成長の舞台

ーー多岐にわたる事業展開は、働く環境としてどのような魅力がありますか。

黒滝寛:
特定の分野に縛られずに経験を積めることが強みです。入社後に「この業務は自分に合わないかもしれない」と感じた場合でも、他の部署や職種への異動を通じて新たに挑戦できる機会があります。特に、自分が何に向いているのかを模索している段階の方にとって、このような選択肢の多さは成長の幅を広げる大きなメリットだといえるでしょう。

ーー求める人財像と、その育成についてお聞かせください。

黒滝寛:
積極性があり、挑戦を恐れない方を求めています。弊社では、幅広い経験を積むことができますので、その中で柔軟な対応力を発揮できる方が理想です。特に「現場主義」を重視しており、入社後には、弊社の事業内容を理解してもらうために、事業全体にわたる現場体験型研修を実施しています。

新卒入社後の研修期間において、営業部門・管理部門をはじめ、バス営業所での事務業務や、ホテルでのオペレーションといった多面的な業務に携わることで、各事業の特徴や相違点への理解を深め、社員の視野を広げるとともに、早期に現場感覚を身につけることができるでしょう。

また、求職者には弊社の仕事をより具体的にイメージしていただけるよう、バス運転手向けの体験会を実施しています。実際に営業所での運転体験を通じて、仕事内容を肌で感じられる場を提供することで入社後のミスマッチが減り、定着率の向上にもつながっているのだと考えています。

弊社が社員に対して最も大切にしていることは、人とのコミュニケーションです。近年、パソコン作業が増えていますが、それはあくまでツールであり、仕事の本質は対話や現場での気づきだと考えています。お客様や同僚と積極的にコミュニケーションをとることで、新しい発見や課題解決へのヒントを得られることが多々あります。こうした姿勢を持って働ける方にとって、弊社は非常にやりがいを感じられる環境だと思います。

5年後、10年後を見据えたビジョンと未来への挑戦

ーー中長期的な事業展開について、どのようにお考えですか。

黒滝寛:
多様な事業展開を活かし、俯瞰力のある幹部候補の育成に注力するとともに、5年後、10年後には、既存事業の強化に加え、新たな分野への進出も視野に入れて、さらなる成長を目指しています。そのためには人財こそが鍵です。「国際興業で働きたい」と思っていただける企業づくりを目指し、社員が働きやすさを実感できる体制を整えていきます。

ーーその実現に向けて、具体的にどのような取り組みを進めていますか。

黒滝寛:
弊社は事業領域を次々と拡大してきた経緯から縦割りの構造が根強く残っているため、より柔軟な人財配置や事業間の連携を進め、企業全体の成長を促進したいと考えています。具体的には、現場研修の復活や、社員が働きやすい環境づくりなど、今までになかった取り組みを通じて、社員全員と多くのお客様に「国際興業のファン」になっていただける会社を目指していきたいと考えています。

編集後記

多様な事業を展開し、現場主義を徹底した柔軟な人財育成を行う黒滝社長のビジョンには、社員一人ひとりの成長を支える強い意志が感じられる。現場での貴重な経験を企業全体の発展へと昇華させる取り組みは、社員のやりがいや満足度を高め、企業の魅力を大きく引き上げていくことだろう。今後もさらなる成長を遂げ、働きたいと思われる企業へと進化する姿に期待が膨らむ。

黒滝寛/1960年東京都生まれ、日本大学国際関係学部を卒業。油圧機器メーカーのカヤバ出身で、主に営業部門を統括する。2022年に国際興業に監査役として入社、2024年に同社代表取締役社長に就任、現在に至る。