※本ページ内の情報は2025年4月時点のものです。

社会が目まぐるしく変化し、ビジネスにおいて柔軟性や創造性が求められる今、人と組織の変革は多くの企業が課題とするところだろう。1964年の創業以来、人材開発と組織開発に取り組み続けている株式会社ジェックの代表取締役社長である松井達則氏は、人と組織の価値観を変える取り組みが重要であると語る。

では、同社はどのように人や組織を変革へと導いているのか。松井社長に、その方法や背景となる企業文化、同社が目指している将来像などを聞いた。

外資系企業からジェックへ。人材開発の大切さを痛感したエピソードとは

ーー松井社長の経歴をお聞かせください。

松井達則:
私はもともと文学部の出身で、当時は脚本家を目指して努力していました。しかし、就職氷河期だったこともあり、思い描いていた道には進めなかったのです。夢への道を閉ざされた私は、それならばとことん挑戦しようと考え、実力次第で結果が期待できる、外資系の金融会社に入社することにしました。

同社での日々は想像以上に厳しいもので、「目標達成率99%は0%と同じ」と言われたことが、今でも強く印象に残っています。自分を追い込む日々が続きましたが、このときの経験のおかげで、否が応でも成果を上げる姿勢が当たり前になったことが、今につながる財産となりました。

そこから現在の人材開発分野に興味を持ったのは、営業所長を任されたことがきっかけです。営業所長になって間もない頃、目標を達成できなかった部下数名が退職してしまったのです。それまでの私は、自分が頑張ることばかり考えていました。しかし、この一件で人を育てることの大切さを知り、特に、営業社員が元気に働ける環境をつくりたいと思うようになったのです。

こうした経緯から、営業教育の分野で評価の高かったジェックへと転職することとなりました。それ以来、弊社で長年キャリアを積み重ねた末に、社長に就任しました。

ーーこれまで社長を経験してきた中で、特に大変だったエピソードを教えてください。

松井達則:
コロナ禍を乗り越えるのが特に大変でした。コロナ禍以前は対面でコンサルティングや集合研修をするのが当たり前だったため、それができなくなることは、弊社にとって会社が存続の危機に陥るほどの一大事だったのです。

それでも乗り越えられたのは、状況を変化のチャンスと捉えなおし、サービスのオンライン化を一気に進めたからです。約1か月という短期間でオンライン化を完了し、危機を乗り越えると共に事業モデルの進化に成功しました。

これは、社員自身が主体的に変革を起こす「イノベーター文化」が根付いていたからこそ成し遂げられたことだと感じています。社員一人ひとりが変革の大切さを理解しているからこそ、一致団結して大きな困難に立ち向かえたのではないでしょうか。

キーワードは「お役立ち」。顧客に真の価値を届けるために必要なこと

ーー貴社独自の強みはどのような点にあるのでしょうか?

松井達則:
弊社の強みは、コンサルティングや研修に「お役立ち」の視点を加えることで、企業の価値観や行動を変革へと導けることです。

弊社におけるコンサルティングや研修は、一過性のイベントではありません。同じ対象者に対して、取り組みをくり返し、そこで得た行動変革を組織文化へと定着させるきっかけと位置づけています。この考えを体現するためにも努力を惜しまず、顧客の状況に合わせてサポートをしながら、組織全体のスタンダードになるまで、しっかりと支え続けていきます。

このように一貫した「お役立ち」姿勢を貫いているおかげか、今では弊社の受講者は延べ270万人を超え、2万社以上との取引実績を実現するまでに至りました。

ーー貴社の中で、特に大切にしている考えや行動原理を教えてください。

松井達則:
業務の中で顧客の役に立つことを強く意識し、信頼へとつなげる「お役立ち道」という理念を大切にし、共有に取り組んでいます。この理念を発展させた「お役立ち共創コンサルティングファーム」という方針を掲げ、顧客の現場で課題解決に直接取り組み、お客様と共に価値を創出する活動も行っています。

また、イノベーター文化を醸成するために行っているのが、社員一人ひとりと直接対話し、現場の声を取り入れる取り組みです。社員たちが、自分の意見が組織の変革につながることを実感することで、イノベーター文化をますます育てていきたいと考えています。

根本的な価値を追及するために、組織の変革を促す会社への進化を目指す

ーー今後、貴社をどのような姿に成長させたいとお考えですか?

松井達則:
顧客に根本的な価値を提供する取り組みを続けることで、人材開発に強みを持つ人材・組織開発会社から、組織の動きや組織文化を変革する組織変革会社へと進化を遂げたいと考えています。

これは簡単な目標ではありません。しかし、会社全体で成長し続ける姿勢を持ち、新たな価値の創出に注力し続ければ、近い将来に達成できると信じています。最終的には、組織変革コンサルティング会社として、確固たるポジションを確立したいです。

そのためには、既存取引先との長期的なパートナーシップの構築や、弊社が得意とする、営業やサービス分野に特化した「人だからこそできる」付加価値の創出など、顧客のニーズを先取りした取り組みが必要となるでしょう。

人を育て、組織を変革し、社会に新たな価値を創出するために、弊社はこれからも全力で取り組んでいく所存です。

編集後記

松井社長が繰り返し口にしていた「お役立ち」という言葉は、顧客を深い部分で理解し、真に役立つことを追及するという、根本的かつ最終的な価値を何より重視したものだ。多くの会社が変革を求められる中、腹を割って提言してくれるジェックのような会社こそが、本当に求められるのではないだろうか。

これからの時代、社会の変化はさらに激しさを増すと考えられる。しかし、この信念さえあれば、同社は時代に関係なく成長を続けるはずだ。

松井達則/1972年千葉県生まれ。立教大学文学部卒業。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士前期課程修了。修士(経営管理学)。外資系金融会社での管理職経験を経て2001年に人材開発コンサルティング会社の株式会社ジェックに入社。コンサルティング部門を統括する取締役を経て2023年に代表取締役社長に就任。