
1956年創業のタキロンシーアイシビル株式会社は、プラスチック製品の製造販売、各種工事の設計・監理などを手がける、歴史ある企業だ。大阪に本社を構え、全国で事業を展開している。タキロンシーアイ株式会社を中核とする合成樹脂加工の総合メーカー「タキロンシーアイグループ」の一員であり、2021年にはインフラ関連事業を担うグループ各社が経営統合され、現在の体制が整った。今では業界を牽引する存在として、幅広い商材を展開している。その代表取締役である木村啓二氏に、これまでの歩みと今後の展望について話を聞いた。
タキロンシーアイグループ各社を経験し、一つひとつの業務の中から「挑戦」を続けてきた
ーー代表取締役に就任された経緯をお聞かせください。
木村啓二:
私のキャリアは、タキロンシーアイ株式会社に勤めていた大学時代の先輩の勧めで入社したことから始まりました。当時は就職氷河期で、就職するだけでも大変な時代。だからこそ「入社できるだけでありがたい」と思い、迷うことなく飛び込みました。
営業職として社会人をスタートしましたが、大きな野望があったわけではありません。ただ、自分の担当する仕事の中で「何か新しいことにチャレンジできないか」と常に考えていたことは、今でも誇りに思っています。
もちろん、チャレンジには失敗がつきもの。大きなミスをしたこともありますが、先輩たちの支えのおかげで多くの経験を積むことができました。タキロンシーアイグループ各社での勤務を経て、2024年に代表取締役に就任しました。
ーーこれまでに、特に苦労した点はありますか?
木村啓二:
営業職時代、工事図面の理解が不十分で、積算(コスト見積)を大きく誤ってしまったことがあります。当時の私は経験不足で、「責任を取って辞めるしかないのでは」と思い詰めていましたが、先輩方が力強くフォローしてくださり、何とか乗り越えることができました。また、代表取締役に就任した際には、「社員とその家族の生活を守る」という責任の重さを改めて実感しました。何ができるのか、どう変えていけるのかを常に考え、今もなおチャレンジを続けています。
「三現主義」を軸に、課題に立ち向かう組織づくり

ーー経営者として、大切にしている考え方を教えてください。
木村啓二:
最も大切にしているのは、タキロンシーアイグループに根付く「三現主義」です。現場・現物・現実を重視して、課題の本質を見極め、解決へ導く。この考え方は、トヨタやホンダなど、ものづくりのトップ企業でも実践されており、我々にとっても非常に重要な経営哲学です。
弊社は長い歴史を持つ一方で、2021年のグループ再編を機に、まったく新しいスタートを切った企業でもあります。既存事業の強みを活かしながら、新分野への挑戦にも意欲的に取り組んでいます。
ーー具体的には、どのような取り組みをされていますか?
木村啓二:
弊社の強みは、豊富な商材を持ちながら、設計から工事監理まで一貫して対応できる点にあります。だからこそ、部門間の連携による相乗効果を最大限発揮することを常に意識しています。
一方で、時代に合わなくなった製品やサービスは、思い切って終了させる決断もしています。ひとつの事業を終えることで、新たなチャレンジの余地が生まれると考えています。今後は、管理会計の導入や生産体制のDX推進にも取り組んでいく予定です。
また、社員が安心して働ける環境づくりも重視しています。平均残業時間は月8時間程度、有給休暇の取得率は約93%、育児休暇の取得率は男女ともに100%と、業界内でも高水準です。ワークライフバランスを大切にすることで、仕事にもより集中できる環境を整えています。
採用と育成で未来を築く。「挑戦し続ける風土」を次世代に

ーー今後、注力していきたいことは何でしょうか?
木村啓二:
ひとつは新規事業展開、もうひとつは採用活動です。
特に力を入れているのは、「新規事業の展開」と「採用活動」です。
新規事業では、たとえば水素社会の到来を見据えて、下水道で使用している配管製品や工事ノウハウを、水素関連インフラに応用できないかという研究を進めています。
また、土木分野で使用されてきた樹脂製ネットを、半導体洗浄装置の内部に活用し、水処理への応用を試みるなど、技術の転用にもチャレンジしています。
これらの挑戦を支えるには、新たな人材の確保が欠かせません。当社では新卒・中途を問わず採用を強化しており、「インフラを支える仕事に関わりたい」「働きやすい環境でキャリアを築きたい」といった方々に多くご応募いただいています。
文系・理系を問わず、入社後に必要な知識はしっかりと学ぶことができます。実際に、社員の出身分野は文系・理系がほぼ半々で、それぞれが着実にキャリアを築ける環境が整っています。
私自身も、社員も、そしてこれから加わる仲間たちも、常に「現状に満足せず挑戦し続ける組織」でありたい。年次に関係なくチャレンジでき、困ったときには経験豊富な先輩がしっかりと支える――そんな企業文化を、これからも大切にしていきます。
編集後記
若手が挑戦し、先輩が支えるという風土は、タキロンシーアイグループ全体に共通する文化であり、タキロンシーアイシビル株式会社の大きな魅力でもある。既存事業の強みをさらに磨きつつ、時代の変化を敏感に捉えた新規事業にも積極的に挑戦するその姿勢は、今後ますます存在感を高めていくだろう。

木村啓二/1986年、大学卒業後にタキロンシーアイ株式会社へ新卒入社。営業職としてキャリアを積み、グループ各社への出向も3社経験。タキロンシーアイ株式会社の常務執行役員を経て、2024年よりタキロンシーアイシビル株式会社の代表取締役に就任、現在に至る。