
容量無制限で利用可能なWiMAXや公衆無線LAN、格安SIM、インバウンド向けeSIM(イーシム)など、顧客のニーズを満たすさまざまなサービスを提供している株式会社ワイヤレスゲート。同社は大手キャリアでは対応しきれない「隙間」のニーズに応える戦略で成長を続けてきた。リアル店舗とオンライン両方での販売体制を強みに事業を展開する、代表取締役CEOの成田徹氏に話を聞いた。
自身の直感を信じ、通信業界の道を選んだ
ーー通信業界に入ったきっかけを教えてください。
成田徹:
私が就職活動をしていたころは携帯電話が流行り出したタイミングでしたが、通信業界はあまり注目されていませんでした。周りの就活生は、百貨店や金融に集中していた記憶があります。しかし、私は反対に「通信業界はこれから伸びるのではないか」と考えていました。
そうしたときに、自宅のコードレス電話を外に持ち出そうというコンセプトのPHSサービスを展開するDDIポケット社に出会い、革新的で新しいものを安く提供していこうという会社の姿勢に惹かれたのです。特にPHSは、それまで携帯電話を持っていなかった若年層に新しい通信手段を提供するという意義があり、その点に大きな魅力を感じて入社を決意しました。入社後は企画や営業、コールセンターなどの部署に配属され、お客様対応を通じてお客様目線で考えることの大切さを学んでいきました。
ーー貴社にはどのような経緯で入社したのでしょうか?
成田徹:
前職のときから弊社の存在は知っていました。Wi-Fiという新しい技術に取り組む先進的な会社という印象でしたね。35歳のタイミングで今までのスキルを活かしながら新しいことへのチャレンジをしたいと考えていたころ、ご縁があり、当時の株式会社トリプレットゲート(現:株式会社ワイヤレスゲート)に入社いたしました。
当時はマンションの1室に数名の社員しかいませんでしたが、これから大きく成長しそうな雰囲気を感じました。私自身もWi-Fiの将来性を感じていましたし、コールセンターと営業の経験を活かせると考えたことも入社の後押しになったといえます。入社後は、ビジネスサイドの実務全般を担当することになりました。
リアルとネットの融合で実現する顧客満足

ーー貴社の事業内容について教えてください。
成田徹:
弊社の主力事業は、通信容量無制限で高速通信ができる「WiMAX」というWi-Fiサービスです。カフェなどの特定スポットだけでなく、電波が届く範囲であれば、どこにいてもインターネットに接続できる環境を提供しています。また、格安SIM事業も展開しており、通信費を抑えたいお客様のニーズにも応えています。
近年、特に注力しているのがインバウンド向けのeSIM事業です。外国人観光客は従来、日本での通信手段の確保に苦労していましたが、弊社のeSIMサービスなら事前に準備ができるので、来日したらすぐにスマートフォンでネットへの接続が可能となります。旅行前の準備段階から利用するケースの他に、日本に来てから購入いただくケースも多いため、今後はあらゆるシーンで購入いただけるように、弊社サービスをアピールする為のメディアサイトも準備中です。
ーー貴社の強みはどのようなものですか?
成田徹:
リアル店舗販売とネット販売の両方を併せ持っている点が弊社の強みだと考えています。店頭では「WiMAXとスマホを組み合わせての利用方法を案内する」といったお客様ニーズにあわせた具体的な利用シーンを直接案内できる利点があります。
一方、ネットではご自身で比較して購入したいという別の層にアプローチできます。「リアルかネットか」という2択ではなく、両方の良さを融合させている点は、業界でも特徴的な取り組みだと自負しています。
成長意欲あふれる人材とともにオンリーワン企業を目指す
ーー今後の事業展開について教えてください。
成田徹:
デジタルマーケティング部門を特に強化していく予定で、2026年中に10億円の売上を目標としています。国内向けのECサイトについては、商品ラインナップの整備が進んでおり、今後はサイトの魅力をさらに高めつつ、適宜新たな商材を投入していく予定です。
一方、海外市場に向けては、国ごとのニーズや特性を踏まえながら、さまざまな施策を実施し、試行錯誤を重ねる中で最適なアプローチを見出していきたいと考えています。
また、パートナーシップの強化も重要なポイントです。たとえば、不動産の賃貸契約と合わせて、弊社の通信商材を販売するなど、他社の顧客基盤を活かせるような連携を進めていきたいと思っています。
ーー長期的なビジョンと求める人材についてお聞かせください。
成田徹:
大手キャリアと戦うのではなく、そこにはない「隙間」のニーズを満たしていきたいです。「あって良かった」と思われるオンリーワンな存在として、お客様に支持される企業を目指しています。そのためには、自分の立場や利益だけでなく、チーム全体のことを考え、周囲と協力できる人材が必要です。
特に今はデジタルマーケティングを強化するため、ウェブマーケティングやECサイトに強い方、海外の商習慣に詳しい方を求めています。人生の大切な時間を使って何かをつかみたい、成長したいという意欲のある方に来ていただけるとうれしいですね。そこから生まれるサービスこそが、お客様に喜ばれるものだと信じています。
編集後記
通信業界の「隙間」を埋めるという明確なポジショニングが印象的だった。大手が見落としがちな顧客層や用途に光を当て、そこに独自の価値を提供し続ける。こうした「オンリーワン」を追求する姿勢こそが、ワイヤレスゲートの成長を支えているのだと実感した。

成田徹/1975年、神奈川県生まれ。法政大学経営学部卒。1998年に株式会社DDIポケットへ入社。2010年に株式会社トリプレットゲート(現:株式会社ワイヤレスゲート)へ入社。取締役COO執行役員営業本部長兼新規事業本部長を歴任し、2024年に代表取締役CEOへ就任。