
日本にまだなかった相席文化をつくり、国内に32店舗、海外に1店舗を展開する株式会社クラウドエヌ。まだ見ぬものを生み出すアイデアはどこから湧き出るのだろうか。事業内容とともに、インスピレーションを得る方法について、代表取締役の西山喜洋氏に話をうかがった。
「楽しい」という感情から始まった事業
ーー起業のきっかけを教えてください。
西山喜洋:
学生の頃から飲み会を開くことが好きで、たくさん企画してきました。所属していた工学部は、クラスの男女比が50:2と女性が非常に少なかったこともあり、私が飲み会を開くとみんながとても喜んでくれましたね。とはいえ、毎回人を集めるのが大変で、声をかけなくても自然と人が集まるような仕組みを作りたいと思ったことが起業の原点です。
ーー起業にあたり、特に力を注いだ点は何でしょうか?
西山喜洋:
弊社が運営する「オリエンタルラウンジ」は、豪華な内装が特徴的な大人の社交場です。女性は無料で絶品フード・飲み放題を楽しめ、男性は時間制の料金で利用できます。

当初は、前例のないサービス内容だったため「怪しい」という先入観を払拭することに苦労しましたね。内装やフード、接客において、一流のサービスを提供することに力を注ぎ、ネガティブな印象をとり払ってきました。特に、接客は一流ホテルのラウンジに匹敵するレベルを徹底しています。
そうすると店の質に合った客層が集まるようになり、結果として、店舗のイメージは私たちの接客次第であることを学びました。このように、店舗の質を上げることに注力しました。
ーーこれまでを振り返ってみて、特に事業が大きく前進したと感じた瞬間はありましたか?
西山喜洋:
2023年に恵比寿に出店した際、人気が爆発的に広がりました。この恵比寿への出店で、ステージが一段上がったと感じています。ただ、まだまだこれからです。ターニングポイントはこれから迎えると考えています。
顧客満足による口コミが原動力、異例の成長曲線
ーー札幌での初出店から、東京進出への背景を聞かせてください。
西山喜洋:
初出店の札幌店が繁盛しても、東京の経営者から東京では通用しないだろうと言われていましたね。当初は銀行から融資を受けておらず、初期費用がかなりかかることもネックでした。しかし札幌、仙台、沖縄、名古屋と地方都市で展開し、そのすべてで成功したことが後押しとなり、8店舗目で東京に出店することができたのです。
広告をほとんど出しておらず、口コミとリピートによってここまで成長できたのは、単純にお客様が楽しさを感じてくださっている証だと考えています。
ーービジネススタイルについて教えてください。
西山喜洋:
一つの繁華街に200坪という大規模な店舗を出すのが、弊社のビジネススタイルです。そのため、適したテナントは限られていますね。新規事業のコンセプトは基本的に私が考え、当たると思ったものに挑戦しています。「世の中にないもの、日本にまだないものをつくりたい」と、常にそう思って取り組んでいます。
アイデアを出すためには、経験が伴う情報量が必要

ーービジネスのアイデアはどこから生まれているのでしょうか。
西山喜洋:
私の場合は自分自身の体験からアイデアが生まれます。情報は、ネットからいくらでも仕入れられますが、私は実際に体験して情報を得るタイプですね。特に、私たちは店舗ビジネスを展開しているため、さまざまな店舗に足を運ぶことを大切にしています。
アイデアは0から生まれるものではないし、現代において完全に新しいものはもう存在しないと思っています。違う切り口や組み合わせ方によって、新しい事業を展開することができるのではないでしょうか。「オリエンタルラウンジ」も、飲食事業に「女性は無料で相席できる」という新しいアイデアを組み合わせたサービスです。
アイデアが浮かぶときはいつも唐突で、思いついたらすぐ行動していますね。
SNS人材採用とプロ経営者獲得で、グローバルエンタメにも挑戦したい
ーー採用について、また今後の展望についてもお聞かせください。
西山喜洋:
新卒採用に関しては、SNSを活用しています。現在の消費者がどのような行動をとっているか知るためには、SNSが必須です。X(旧Twitter)を見て応募してくる人材はというのは、普段からSNSを活用し、情報をチェックしている人たちです。弊社が求人にSNSを活用する理由は、そこにあります。
また、2年ほど前から、上場を意識し始めました。その目標達成のため、現在は事業責任者クラスの人材を求めています。
イメージとしては、将来社長を目指しているような方ですね。このビジネスが上手くいっているのは業態そのものに強さがあるからだと思っています。なぜなら、競争のない市場をつくり高収益を目指す、ブルーオーシャン戦略を選んだからです。
「オリエンタルラウンジ」は私たちが切り拓いた業態であるため、競合がおらず利益率が高い事業展開を可能としています。ここにビジネス展開に長けたプロ経営者が加わると、うまい具合にフィットするはずです。
そして、今後はエンターテインメントに特化した楽しい店舗を海外に出店することも視野に入れていきたいですね。
編集後記
マーケティング、ブランディングが得意な株式会社ダインと合併し、アプリ開発も手掛けるなど、新しい事業への挑戦を続ける株式会社クラウドエヌ。広告に頼るビジネス戦略を好まない理由として、「商品自体が強くなければいけない」という西山氏の言葉が印象的だった。

西山喜洋/2013年に株式会社クラウドエヌを創業。相席文化の発祥となった「オリエンタルラウンジ」を筆頭に、若い世代が楽しめるスポットづくりに尽力。世の中にないものを形にするというビジョンを掲げ、幅広い事業を展開する。