
株式会社タハラは、電動ダイレクトブロー成形機の製造・販売を手がけている会社だ。シャンプーのボトルや各種食品容器、コピー機のトナー容器など、プラスチック容器のほとんどに同社の技術が活用されている。
高度なものづくり技術が強みの同社だが、国内シェアNo.1という圧倒的な結果を残すことができるのは、それ以外にも理由があるからだ。今回、代表取締役社長の植田祐治氏を取材し、同社の強さの理由と次の挑戦について聞いた。
顧客との距離が近く、製販一体で連携できている点が強み
ーー社長に就任するまでの経緯を聞かせてください。
植田祐治:
1989年にタハラの親会社である株式会社日本製鋼所に入社し、製作所や研究所、本社勤務を通じて、主にプラスチック射出成形機にかかわる技術全般に携わってきました。タハラは2006年に日本製鋼所グループの一員となりましたが、私は2023年4月に顧問としてタハラへ赴任し、同年6月に代表取締役に就任しました。
ーー貴社の強みはどういった点にありますか。
植田祐治:
日本製鋼所グループのコア・コンピタンスは「溶かす」「混ぜる」「固める」技術+「機械要素技術」「精密制御技術」ですが、溶かしたプラスチックに空気を吹き込み、中空の容器製品をつくり出す産業機械「ダイレクトブロー成形機」の分野で、国内トップシェアを誇っている点が1番の強みです。ダイレクトブロー成形機の心臓ともいえるヘッド回りの部品はすべて自社で設計・加工・組立しており、お客様から高い評価を得ています。
また、お客様との距離が近く、お客様第一で行動できている点も強みです。「いつどんなときもお客様の立場に立ち、高度で多様化するご要望にお応えし続ける。」これは弊社のホームページにある私のトップメッセージにも込めたタハラのポリシーですが、実際にお客様からは「タハラさんは呼んだらすぐに来てくれる」とお褒めの言葉をいただいています。
タハラは2019年に現在の千葉県印西市に移転しましたが、新しい本社工場では営業と技術が同じフロアーに同居し、1本階段を降りれば製造現場というロケーションになっています。そのため、お客様からリクエストを受けた営業はすぐに技術に相談し、ともに製造現場に降りてモノを確認するなど、必要な情報をただちに共有し、製販一体となって対応に動き出せる点も強さの理由です。
高い成果を生み出せるのは、風通しが良くチームワーク力が高いから

ーー社風について教えてください。
植田祐治:
顧問として赴任して最初に気づいたのは、タハラの風通しの良さです。私が社長に就任してから特に何かを変えたわけではなく、もともとタハラには良い風土が根づいていました。
社員の性格はさまざまで、皆、個性豊かです。年齢層も10代から80代までと幅広く、魅力的な人間が集っています。そんな社員たちから「皆で社員旅行に行きたい」という提案があるなど、今の時代では珍しいほど社長と社員、そして社員同士の距離も近いと感じています。
また、弊社は個人の成績だけを評価するのではなく、チーム全体としても評価するようにしています。そのため、各部・各チームとも強固なチームワークが形成されています。たとえば個人の営業成績はその担当者がどのお客様、どのテリトリーを担当しているかによっても影響を受けます。だからこそ、お客様へのアプローチの仕方や部・チームとしての業務プロセスも評価するようにしています。
ーー社長としてどのような考え方を大切にしていますか。
植田祐治:
社員同士が部門間を超えて協力し合う「結束は和を以て貴しとなす」や、現状に甘んずることなく変化する勇気を持つ「変化なくして未来なし」など、私が大切にしているのは会社の行動指針です。他に「行いは知行合一と心得よ」、「感性で気付け違和感を見過ごすな」がありますが、これはタハライズムともいえるものであり、この行動指針は全員参加の朝礼で、毎朝、社員たちに唱和してもらっています。
また、社員たちに向けては、「その仕事に就いた以上、その道のプロになってほしい」と伝えています。タハラにはその道のプロフェッショナルが多くいますが、皆がプロ意識を持って自信を持って仕事をして欲しい。そして、タハラのキャッチコピーである「ふくらむ想いをカタチに」を体現すべく、世界中にタハラの電動ブロー成形機を届ける、その役目を担ってほしいと思っています。
さらに、社員のプライベートも重視しています。社員には家族や友人、恋人、そして趣味もあります。仕事をがんばるためにも、ぜひプライベートを充実させてほしいと思っていますし、仕事とプライベートのワークライフバランスを大切にしてもらうようにしています。
今後は国内と海外の事業比率を半々にし、2028年までに1.5倍の売上高を目指す
ーー今後の目標をお願いします。
植田祐治:
現在、弊社の事業の多くは国内向けですが、今後、海外向けの比率を高め、売上・利益ともに拡大させていくのが目標です。近い将来、海外へのダイレクトブロー成形機の販売・サービスが、タハラにとって当たり前の事業となるよう社内体制の整備に力を入れていきます。
ただ、急に体制を整えようとしても我々のキャパシティーを超えてしまうので、社員個々のスキルアップを図るのはもちろんのこと、たとえば外国人籍の社員を採用するなど必要な人材を必要な部門に適宜補充、拡充しながら、海外向けの事業が永続的に続けられる環境を整えていく予定です。
また、弊社は2017年からRPA(ロボティック プロセス オートメーション)による一部業務の自動化に取り組んでいますが、今後、DXやAI技術の導入も視野に入れ、さらなる業務の効率化と利益の最大化を図り、得られた利益は株主や社員、社会に還元していきたいと考えています。4年後の2028年には現在の1.5倍にまで売上を高めたいと考えています。
編集後記
タハラの強さの理由は、技術力の高さはもちろんだが、風通しの良さや社員同士の連携などにもある。この強いチームワークにより、「ダイレクトブロー成形機の国内シェアNo.1」という結果を生み出しているのだろう。
「弊社は大企業と違い社員1人1人の存在が大きいからこそ、それぞれの社員が会社の役に立っているという実感を得やすい。これは中小企業ならではの楽しさだ。」と語った植田社長。今後は少数精鋭の高いチームワーク力で海外事業にも成功し、日本のものづくりの強さ、そしてきめ細やかなカスタマーサポート力を世界に広めていってほしいと思う。

植田祐治/1967年生まれ、兵庫県神戸市出身。大学では機械工学を専攻し、1989年に株式会社タハラの親会社である株式会社日本製鋼所に入社。製作所、研究所、本社勤務を通じ、主にプラスチック射出成形機にかかわる技術全般に携わる。株式会社タハラへは2023年4月に顧問として赴任し、前社長との引き継ぎののち同年6月に代表取締役に就任。