※本ページ内の情報は2025年5月時点のものです。

生花祭壇事業を軸に、ECサイトでの花卉販売、生花店向けコンサルティングを展開する株式会社フレシード。同社は社員の定着率向上とDX推進の両輪で業界の課題に挑み、次世代の花卉業界を見据えた経営を行っている。社員が安心して長く働ける環境づくりと、業界全体の持続的な発展に取り組む、代表取締役社長の土田淳也氏に話をうかがった。

植物、そしてお客様と真剣に向き合うなかで見つけた、花屋としての誇り

ーー起業に至るまでの経緯を教えてください。

土田淳也:
19歳のころに、熊本にある生花祭壇を扱う会社に入社しました。私は、もともと人と話すことが得意ではなく、1人で黙々と作業をすることが性に合っていました。その会社に入社する前にも植木屋でアルバイトをしており、花や植物を通じてお客様に喜んでいただけることに魅力を感じていたのも、この道を選んだ理由の一つです。母がきれいな花を好きだったことも影響していたかもしれません。

生花祭壇は、故人を偲ぶ場を彩る大切なものであり、故人への最後の贈り物だと考えています。その会社では、花をさまざまな形に生ける技術だけでなく、仕事に取り組む姿勢も教えていただきました。お客様から「ありがとう」と感謝されることも多く、同僚たちも仕事に誇りを持っていました。その後、お世話になった方が退社されるのをきっかけに、独立して弊社を設立しました。

生花祭壇からECサイト、コンサルまで幅広く事業を展開

ーー貴社の事業内容をお聞かせください。

土田淳也:
弊社は3つの事業を展開しています。まず主力となるのが生花祭壇事業で、故人を偲ぶ場にふさわしい、生花を用いた祭壇を設営しています。2つ目がインターネット事業です。個人のお客様向けに、ECサイト「FLABELの花祭壇」を運営しており、ギフト用や葬儀用の生花を直接販売しています。3つ目はコンサルティング事業で、葬儀用の花を扱う生花店向けに専門的な支援を行い、業務の発展をサポートしています。

ーー貴社の強みを教えてください。

土田淳也:
採用や教育、社員の定着に力を入れている点です。競合に勝つためには、お客様はもちろん、社員の確保も同様に大切だと考えています。

花卉業界は市場規模が伸び悩んでおり、労働環境の厳しさから若い人材が集まりにくい状況にあります。そこで弊社では、休日の増加や初任給の引き上げ、福利厚生の充実、退職金制度の導入など、安心して長く働ける環境を整えてきました。将来を見据えて働ける職場づくりを進めることで、若手の採用が進み、平均年齢が上がる業界のなかでも活気を維持できていることが大きな強みです。

また、財務情報の透明性にこだわっていることも強みと言えるでしょう。各支社の責任者には財務諸表を全て開示し、経営者として必要な判断力を養う機会を提供しています。経営に関する知識を身につけながら専門技術も磨ける点は、独立を目指す方々にとって大きな利点ではないでしょうか。

現時点では、ベテランの多い会社が評価されることもありますが、育った若者たちによって5年後、10年後に結果が出るよう、挑戦を続けています。

ーー採用においては、どのようなことを意識していますか?

土田淳也:
できるだけありのままの姿を見せることを重視しています。入社後に「イメージと違った」と感じることは、採用された側にとっても指導する側にとっても不幸なことですよね。採用のための社員インタビュー動画を撮影する際も、発言内容に指示を出さず、編集や添削も行いません。リアルな声をそのまま伝え、弊社の実情を理解した上で入社を希望する方に来ていただきたいからです。現実を正しく伝えることが、結果として良い人材の確保につながると考えています。

花卉業界を支えるネットワークをつくりたい

ーー社内ではDXも進められているそうですね。

土田淳也:
労務管理の分野では「SmartHR」を導入することで、管理業務の負担とコストを軽減しました。また、受注や売上の管理については「kintone」を活用しています。これまで手書きで作成していた社内のスケジュール表をデジタル化し、注文内容を入力すると自動でスケジュールに反映されるシステムを構築しました。DXの推進により業務の正確性と効率が向上し、現場の負担軽減にもつながっていると感じています。

ーー5年後、10年後のビジョンを教えてください。

土田淳也:
まずは、物流面の課題解決に取り組みたいと考えています。配達業務を外注し、売上が伸び悩んでいる生花店に新たな収益機会を提供することで、業界として新しい挑戦がしやすい体制を整えたいと思っています。

また、新たな事業の柱を築くことも今後の目標です。そのために、まずは生花店同士のネットワークを構築し、業界全体のつながりを強めていきたいですね。そして、そのネットワークを活かして、他の生花店の支援やM&Aを進めることで、持続可能な業界の発展につなげたいと考えています。

編集後記

「ありのままの姿を見せる」という土田社長の言葉が心に残った。採用活動や人材育成における透明性へのこだわりは、経営全体の誠実さを物語っている。社員と向き合い、業界と向き合う真摯な姿勢は、持続可能な花卉業界の礎となっていくだろう。

土田淳也/19歳のときに、熊本県の生花祭壇制作会社に入社。2009年、株式会社フレシードを創業し、2020年に代表取締役社長に就任。