※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

株式会社サンコミュニケーションズは、広告やプロモーション、イベントの企画や運営、演出までを手がけるイベント制作会社だ。創業は1979年と業界の中では老舗で、つくば万博や、愛・地球博、皇室の公式行事、プロサッカーやプロ野球のオールスターゲームや表彰式なども手がけてきた。

代表取締役社長の深澤哲洋氏は、バンドマンから会社員に転身するなど、多彩な経歴を持つ。経営者になるまでのエピソードや、書籍の出版などユニークな広報活動についてうかがった。

28歳でキャリアをスタート。経営者に抜擢されるまで

ーーまず深澤社長の経歴についてお聞かせください。

深澤哲洋:
学生時代はバンド活動に没頭し、大学卒業後も就職はせず、インディーズでCDをリリースするなど音楽活動に専念していました。しかし、27歳のときにバンドを解散し、そこからはじめて就職活動を始めます。

これまでバンド活動をしていたため、ライブの制作やレコード会社など、エンターテインメント関連の仕事を探していました。ただ、社会人経験がないため、なかなか雇ってもらえる会社はありませんでしたね。

そんな中、イベント制作を行っているサンコミュニケーションズの採用募集を見つけたのです。そこでようやく採用され、新卒入社の人たちと一緒になってイベント制作についてイチから学び、28歳で正社員になりました。

ーー入社から社長就任に至るまでの経緯を教えていただけますか。

深澤哲洋:
入社当時社員が40名ほどいたのですが、過酷な職場環境だったので、スキルを身に付けたら独立するか、別の会社に転職する方がほとんどでした。

先輩社員が次々と退職していく中、私はその仕事を引き継いだこともあり、年間数億円規模になるスポーツ関連の仕事など、大型案件を任されるようになりました。プロデューサーとして現場を統括することには、特別なやりがいと楽しさがあります。その後、赤坂にオフィスを移転したのを機に、30代前半で執行役員に就任します。

そして30代の後半に、当時の社長が体調を崩され、長期不在の状態が続いたこともあり、会長(創業社長)から次期社長に指名されました。

強みは数々のイベントを取り仕切ってきた実績と企画・提案力

ーー改めて貴社の事業内容について教えてください。

深澤哲洋:
弊社はイベント企画制作とプロデュース事業を行う会社です。弊社の強みは、イベント企画の立案からプレゼン、現場運営・演出、最終報告書の提出まで、すべてワンストップで行える点です。

イベント主催者からご依頼をいただいた後は、施工会社やデザイン会社、Web会社、演出会社、運営会社、警備会社などと連携し、イベントの開催に必要な手配の多くを請け負っています。依頼する側は弊社にすべて任せられるため、自分たちの手を煩わせずにイベントを開催できるのがメリットです。

これまで、数々のイベントを手がけてきました。ある大手IT企業様からはプライベートフォーラムや展示会の事務局や運営を任されるなど、行事を行う際は必ず弊社にお声がけいただいています。

プロサッカーやプロ野球のオールスターゲーム、表彰式、国際大会など、スポーツ系の大規模イベントの実績も豊富です。また、つくば万博や東京ミレナリオ(イルミネーション)などは、45年の弊社の実績の中でも重要なイベントでしたね。

ほかにも官公庁主催のイベントや株主総会、記者発表会、屋外のお祭り、各種式典なども数多く手がけてきました。

ーー貴社の強みはどんなところでしょうか。

深澤哲洋:
天皇陛下や総理大臣が臨席される公式行事を取り仕切るなど、豊富な経験と実績が弊社の強みです。弊社は特定の商品を売るのではなく、企画やプロデュースなどの人的サービスを提供するため、クライアントから業務を請け負うだけではなく、自ら提案する姿勢を大切にしています。

弊社の創業からのビジョンとして「新・珍・面」という言葉があります。これは多様なお客様のニーズに応えながら、「新しく」「珍しく」「面白い」ものを自分たちでつくり上げることを謳ったものです。こうして創意工夫を重ね、イベントを成功に導くことで信頼関係を築き、次の仕事につなげています。

ーー貴社の営業体制について教えてください。

深澤哲洋:
現在5つのチームに分かれているのですが、リーダーを中心に、プロデューサー、スタッフが協力しそれぞれチーム毎に異なる業種のクライアントを担当しています。IT系から、メーカー、行政、スポーツ関係などさまざまな種類のイベントを行っていることも強みです。

イベントやプロモーションを通じて、課題解決をすることでお客様から信頼していただけ、新たな仕事の獲得につながっていますね。

また、私たちは形にないものを提供する仕事のため、人材力を武器にした人的資本経営を行っています。具体的には、1人の社員にさまざまな案件を担当してもらい、スキルやノウハウを貯めてスキルアップできる環境を整えています。

イベントの仕事は案件ごとに扱う商材や内容が全く異なるため、常に学び続ける姿勢が重要です。そのため、好奇心旺盛で知識を貪欲に吸収し続けられる人が向いていますね。

発信力を高め、クライアントから直接声がかかる会社に

ーー今後の事業展開について教えていただけますか。

深澤哲洋:
現在は売上の約6割が代理店経由、4割が直接取引ですが、今後は直接取引の比率を高めていきたいと考えています。その理由は、コロナ禍でイベントができなくなったり、オンラインになるなど規模が縮小されたりしたこともあり、クライアントとダイレクトで、より強固な関係構築が必要だと感じているからです。代理店とタッグを組んで行う様々な案件に加え、一方ではクライアントと直接取引できるよう、営業を強化しようと考えています。

また、新しい取り組みとして、芸人さんのYouTube制作や運用をしております。これを機にエンタメ業界とのパイプも出来たり、他ジャンルのYouTubeチャンネルの制作やコンサルの依頼をいただけるようになり、新たな事業展開につながっています。

ーー今後のビジョンをお聞かせください。

深澤哲洋:
これまで、多くのイベント制作プロダクションは裏方的な存在でしたが、弊社は自らのブランド力を高め、多くの人たちに知ってもらえる存在にしていきたいですね。その為には、広報活動にも力を入れていこうと思っています。

その一環として経営者である私自身が、書籍を発売したり、ラジオや音声メディア(Voicy)で発信したり、講演会やイベントに登壇したりして、サンコミュニケーションズの名を広める活動を行っています。これからも個性あふれるイベント制作のプロフェッショナル集団として、弊社の魅力を発信していきたいと思っています。

そして「イベントならサンコミュニケーションズ」と、真っ先に思い浮かべていただける存在になれるよう、これからも活動を続けていきます。

編集後記

バンドの解散を機にサラリーマンに転身し、新人から成長し社長に就任した深澤社長。現在はイベントプロデュースに加え、経営者として会社の顔となり、自社のPR活動にも力を入れている。株式会社サンコミュニケーションズはこれからまで培ったノウハウや企画力で、顧客の期待を超えるイベントをつくり続けることだろう。

深澤哲洋/1978年東京都生まれ。慶應大学経済学部卒業。卒業後、バンド活動を経て2006年、株式会社サンコミュニケーションズ入社。プロサッカーやプロ野球などのスポーツ、メーカー、行政・東京都関連などさまざなイベントプロデュースを経験し、2018年代表取締役社長に就任。ダイノジ公式YouTube制作プロデューサー、Voicyパーソナリティ、fmGIG渋谷ラジオパーソナリティなどを務める。著書:『新時代のリーダーに必要な12のチカラ』(幻冬舎)