
2007年に設立された株式会社タクテック。物流センターにおける仕分け・ピッキング、運搬、発送作業のシステム化と、物流資材の提供で成長してきた会社だ。サービスの中心は、トータルピッキング後の仕分けで人的ミスを防ぎ生産性を向上する、ゲート開閉式仕分けシステムの「GAS(Gate Assort System)」。代表取締役社長の山崎整氏に、入社の経緯やソリューションの強み、今後の展望をうかがった。
工場見学で物流に興味を抱き、機械工学の道へ
ーー物流業界に入ったきっかけをお話しいただけますか。
山崎整:
物流に興味を持ったのは、小学2年生の時に飲料の製造工場を見学し、生産ラインの全体像を把握してからです。缶の供給、飲料充填、蓋をする、段ボールへの格納、パレットへの積付けがすべて全自動ラインの光景はとても衝撃的でした。
また、父がコンベアの設計業務に携わっていたことも大きいですね。自宅で設計図を描く父への憧れと、工場見学で受けた衝撃が重なり、将来は自身もコンベアの設計に携わりたいと思うようになりました。その夢を叶えるため、大学で機械工学を学んだのち、物流ソリューション事業を行うトーヨーカネツへ入社しました。
ーートーヨーカネツではどのような経験をされたのでしょうか?
山崎整:
入社後に配属されたのは設計部署ではなく工事部門でした。1つの現場は、3ヶ月から大きなもので1年に及び、チームのメンバーも都度変わるので、会社内で転職する感覚で多くの人と知り合い、いろいろな現場を経験でき、社会人として大いに成長できましたね。
コストを要するマテハン(※)の導入は、お客様にとって一大事業です。チームとお客様が一丸となり、新しい物流拠点を作り上げる取り組みは、責任も大きいけれど、お祭りに近い楽しさがありました。また、お客様に心から「ありがとう」と言っていただくこともあり、やりがいをダイレクトに感じられる環境でした。
(※)マテハン:マテリアルハンドリング(Material Handling)の略。物流や製造の現場において、機械を使う運搬作業全般を指す。
仕分け・発送業務のDXと企業の枠を超える提案力が強み

ーー貴社に入社した経緯もお聞かせください。
山崎整:
3社目の転職先でロジスティクス分野の勉強会に参加し、先代代表の侘美と出会ったことが始まりでした。前職で「GAS」の販売事業に携わっていた侘美が独立し、弊社を立ち上げる際に「次期社長として入社してほしい」と声をかけられたのです。
その後2008年にタクテックに入社し、約10年を経て現職に至ります。侘美は「ザ・昭和の営業マン」という人で、営業における鋼のメンタリティは彼から教わったと言えます。
ーー現在の事業内容や強みを教えてください。
山崎整:
「GAS」を中心に、物流センター内の業務効率化に役立つ設備・システムを展開し、開発・設計、メンテナンス、設備導入時のコンサルティングも行っています。
独自のシステムは、複数オーダーのピッキング・仕分けを同時に進める「MOPS」、品物を素早く探し出せる無線LEDタグ「STOC」、自由にレイアウトできるコンベアの「フレックスキャリー」、袋包装と送り状の貼付けを自動化する「D-PaLS」など、多種多様な設備を揃えています。
最大の強みは、お客様にとってベストなソリューションを提案できることです。「物流業界唯一無二の駆け込み寺」として、時には自社システムにこだわらず、他社製品ともコラボレーションも行っています。
インフラとしての需要性を誇りに、物流全般の統括を実現
ーー今後の展望をお聞かせください。
山崎整:
さまざまな業界の方に、物流やロジスティクスの重要性を知ってもらうことで、お手伝いできる領域が他にもたくさんあると思っています。お取引する業界を自ら狭めずに、SNSなども活用しながら弊社の魅力を広くアピールしていきたいところです。
また、「2030年までに年間利益を倍にする」という目標もあります。そのためには単純計算で年間売上を倍にする必要があり、現在の事業領域だけで30億円を達成するというイメージです。まずは部分的なソリューションに留まらず、物流センター全体をエンジニアリングする案件を増やすことで、必然的に利益が上がる状態を目指していきます。
そして、施設の施工・保守を含めて物流全般を統括する事業を構築できれば、10年後には100億円のステージが見えてくるでしょう。極端な例え話ですが、私は1年間の売り上げがゼロになっても社員に給料を払える会社になりたいのです。
ーーいっしょに働きたい方へメッセージをお願いします。
山崎整:
物流を構築・安定させることの大切さが世間に知れ渡ったのは、1995年の阪神・淡路大震災の時ではないでしょうか。
物流会社の役割は、単なる輸送にとどまらず、電気や水道と同様に世の中に欠かせない社会インフラの一つであり、生活基盤や地域の発展を支える重要な存在だと考えています。
このような私の思いや、会社のビジョンに共感してくれる方にぜひ来ていただきたいですね。弊社は社会人歴10年以上のメンバーが多く、「社長を社長と呼ばないルール(山崎社長とは呼ばず山崎さんと呼ぶ)」があるなど、風通しの良いコミュニケーションができる職場環境です。
日本企業の多くは中小企業ですから、大手だけを目指すのではなく、チャレンジや成長の機会が豊富なベンチャーもぜひ選択肢のひとつに加えてください。
編集後記
従業員・顧客・協力企業をワンチームだと捉えて、物流のソリューションを生み出していると語った山崎社長。彼がキャリアを通して大切にしてきたのは、チーム全員でプロジェクトの成功を喜び合える瞬間だ。タクテックの事業が拡大するほど、物流にかかわる人々の感謝の輪が広がっていく未来のストーリーにワクワクした。

山崎整/1968年生まれ。小学2年生時の工場見学をきっかけに物流に興味を持ち、物流機器の開発を志して法政大学工学部機械工学科へ進学。大学卒業後、トーヨーカネツ、LVMHウォッチ・ジュエリージャパン、フレームワークスを経て、2008年に株式会社タクテックへ入社。2018年、代表取締役社長に就任。