※本ページ内の情報は2025年7月時点のものです。

1990年に株式会社ブリュッケを設立した髙橋芳郎氏。東京と大阪で「翠波画廊」を開き、数多くの絵画を販売しているだけでなく、顧客との信頼関係を大切にしながら、アートビジネスの新しい可能性を切り開いてきた。そんな髙橋氏に、画廊としての信念や今後のビジョンを聞いた。

アートとビジネスの融合を目指し、画商の道へ

ーー画商を目指したきっかけをお聞かせください。

髙橋芳郎:
私の興味の原点は、子ども時代に絵を描いたり工作をしたりすることが好きだったことにあります。加えて、父が会社を経営していたことも影響し、ビジネスに対する関心が芽生えました。アートの世界で生きていきたいという思いもあり、アートとビジネスを結びつける仕事として「画商」を目指すようになりました。

経歴としては、美術大学を卒業後に専門学校でも学びを深め、2年後に美術会社へ就職しています。そこで画商として経験を積んだ3年後に独立し、1990年に株式会社ブリュッケを立ち上げました。

お客様の心を動かす絵画の本質を大切に

ーー具体的な事業について教えてください。

髙橋芳郎:
主な仕事は絵画を仕入れて、お客様に販売することです。画廊では印象派の作家さんやフランス画家、現代アートなどのジャンルを中心に取り扱っています。

ーー絵画を売るにあたって、どのような思いがありますか。

髙橋芳郎:
1枚の絵が人の感情をポジティブに変えたり、元気を与えたりするのがアートの魅力です。芸術を身近に感じ、心が満たされる方が増えることを願いながら、絵画を提供しています。

ただ、世間一般では、絵画を投資の対象としてみる傾向があるのも事実です。本来絵画はコレクターズアイテムのようなものなのですが、なかには裏付けがないまま高値がつくこともあり、価格も流行による波があります。それを私たちが予測することは難しいので、スタッフには投資的な側面のみに着目した提案を控えるように伝えています。長期的な視点で資産の一つとして絵画を持つのは良いと思いますが、人の心を動かすという絵画の本質を大切にしたいですね。

ーー貴社の強みはどのようなものでしょうか。

髙橋芳郎:
一番の強みは、豊富な在庫を持っている点です。特にフランス画家の作品が多く、日本では弊社だけが販売権を持つ作品や、弊社でしか取り扱っていない作品も多数あります。

ただ、そこで大きな問題になってくるのが、本当に本物であるかという点です。当たり前のことですが、私たちの仕事で大切なのは、「偽物をお客様に売らない」ことです。贋作の問題が日常的に起こり得る画商の世界で、本物だけをお客さんに提供することは、画商としての一番のモラルだと思います。そのため弊社では鑑定機関と密に連絡を取り合うようにしています。

信頼関係を築きながら販路拡大を目指す

ーースタッフに求める能力を教えてください。

髙橋芳郎:
前向きに挑戦できること、お客様のニーズに対して積極的なアプローチができることです。「ビジネスは何かを売って初めて会社が継続できる」という意識を持つことで、仕事への主体性が生まれます。

その上で、お客様と信頼関係を築く力も大切です。一方的に売り込むのではなく、まずはお客様が何を望んでいるのか、本音を聞き出せるような関係づくりが基本だと考えています。営業職に限らず、スタッフ全員がそういった意識を持って働いてくれたらうれしいですね。

ーーお客様との信頼関係を築くために、一番大事な要素は何でしょうか。

髙橋芳郎:
本音で話ができることではないでしょうか。お客様の意見をすべて受け入れるのではなく、自分なりの意見をしっかり持ち、それを適切に伝えることで、お客様との信頼関係が築けると思います。

ーー販売において注力していることをお聞かせください。

髙橋芳郎:
現在、ジョイントベンチャーに力を入れています。具体的には、「顧客基盤はあるものの、提供できる商品が少ない」といった企業と協力し、販路の拡大を目指しています。

たとえば、北陸に37店舗を展開している眼鏡屋は年に数回大きな会場で販売をしているため、そういったところで一緒に絵画を紹介するつもりです。他にも、家具屋や高級自動車取り扱い店などには、それぞれ独自のお客様がいらっしゃいます。ブランドや高級な商品を扱う企業と弊社には親和性があると思いますので、コラボを通じてお互いに刺激し合い、販路の拡大や「翠波画廊」のブランド価値の向上を目指したいと考えています。

ーー貴社の今後のビジョンを教えてください。

髙橋芳郎:
今後5〜10年後には「絵画といえば翠波画廊」と認識してもらえることを目指しています。質の高い絵画を取り扱っているというイメージを定着させ、確固たる知名度を築きたいと考えています。

編集後記

日常を豊かにするアートは、そのものの美しさだけでなく、画商とお客様との信頼関係があるからこそ価値がある。その強い信頼関係は、髙橋氏の絵画への情熱と、お客様を大切に思う気持ちから成り立っているのだと感じた。アートとビジネスの融合を展開するための戦略は、アートの世界を今後ますます発展させるだろう。

髙橋芳郎/1961年愛媛県生まれ。1983年に多摩美術大学を卒業後、専門学校で現代美術を学ぶ。1985年株式会社アートライフに入社。1989年に同社を退社し、1990年5月に株式会社ブリュッケを設立。