※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

JTBグループとして、決済関連のソリューションを提供している株式会社JTBビジネスイノベーターズ。同社は、特にキャッシュレス決済サービスを通じて、観光業界が抱える課題の解決に大きく貢献してきた。

同社のサービスが多くの顧客に選ばれ、全国に広まっている理由とは一体何なのか。代表取締役兼社長執行役員の上田泰志氏に、事業の詳しい話を聞いた。

宿泊施設向けに、旅行・IT・決済の3領域をつなぐサービスを展開

ーー貴社の事業内容について教えてください。

上田泰志:
弊社では、3つのソリューションを主に宿泊施設向けに提供しています。

1つ目が、宿泊施設に、クレジットカード一括加盟店決済サービスを提供する事業です。これは、宿泊施設でクレジットカード決済を始めたい事業者に対して、弊社がクレジットカード会社との契約や精算業務を一括して代行するというもの。現在、全国で約4,000施設にご利用いただいています。

2つ目が、宿泊施設の自社ホームページ予約で事前決済を可能にするサービス「JTB Book & Pay(JTBブックアンドペイ)」の提供です。同サービスでは、セキュリティ対策にも力を入れており、不正利用などが起こったときのフォローにも対応しています。

そして3つ目が、予約状況やそれぞれのお客様の単価、宿泊代金の請求日などを管理するクラウド型ホテルシステム「INCHARGE 7(インチャージ・セブン)」の展開です。

他社とのパートナーシップにより、自社だけでは難しい課題を解決する

ーー貴社の強みはどういった点にありますか。

上田泰志:
JTBグループ全体のサービスと連携したお客様への提案や取引先との折衝ができることが強みです。

例えばクレジットカード一括加盟店決済サービス事業に関しては、JTBグループ全体での取り扱い規模をベースに弊社がクレジットカード会社と経済条件の交渉を行っているので、宿泊施設が自らクレジットカード会社と交渉するよりも、リーズナブルな手数料率を実現できるとともに、JTBの宿泊販売全体と連動した精算代行によって、施設の経理業務工数削減にも貢献しています。

そのほか、外部のインターネット企業や金融系の会社などとのパートナーシップが非常に強固で、他社と協力することでより良いものをつくる仕組みを構築できている点も強みです。

また、社員たちにお客様基点の考え方が根付いている点も特徴です。私は代表に就任してから社員たちに「口を開けばお客様の話をし、考えるときはお客様を基点にし、習慣としてお客様のためにイノベーションに挑戦し続けること」を大切な考え方として伝えており、社内に浸透しています。

ーー新しいソリューションの展開なども計画していますか。

上田泰志:
現在、オープンイノベーション型で、ほかの企業と連携したソリューションの提供に力を入れています。その1つが、キャンセル料の請求・回収業務を自動化するサービスを展開しているPayn(ペイン)社との連携です。

宿泊施設の中には、お客様に悪い印象を持たれるのではないか?という精神的負荷や、請求行為自体時間を要する業務的負荷から、キャンセル料の請求や回収に悩んでいるケースが少なくありません。弊社はそのようなお客様に「Payn」を推奨し、自ら請求する負担を減らしながら、キャンセル料を自動で回収できる仕組みの提供を、2024年から開始しました。

今回のPayn社との取り組みのように、弊社だけでは対応が難しい問題は他社と連携し、お客様の課題をどんどん解決していく会社を目指しています。

お客様の成長を導く「イノベーション・パートナー・カンパニー」を目指す

ーー貴社で求められる人材について聞かせてください。

上田泰志:
弊社は決済サービスを扱う会社なので、前提としてお金にまつわる業務に雑にならず、ガバナンス重視で遂行できる人が求められます。

その上で、成長意欲があり、自分自身の成長がお客様の成長につながることに喜びを感じることができる仲間と一緒に挑戦していきたいですね。

私自身、今まで数々の失敗をしてきたので、チャレンジをして失敗することをマイナスに捉えるのではなく、むしろお客様のためにチャレンジできる人を仲間として求めています。

社名に「イノベーター」とあるとおり、社員全員がさまざまなイノベーションを起こしながら仕事に取り組んでいけるように、社長として牽引と後押しすることを日々の最優先事項と考えています。

ーー今後の注力テーマや展望をお願いします。

上田泰志:
観光業のお客様が、引き続き弊社のサービスを喜んで使っていただけるようにカスタマーサクセス(お客様の体験品質&成果を高める)の実現に取り組むことに加えて、ソリューションのラインナップを増やし、他業種のお客様にも使っていただけるようにしていきます。それによってさらに弊社のイノベーション力を向上させ、その力を観光業のお客様にも提供する。この相乗効果を高めていきたいと思っています。

一例として、弊社では廃棄物処理リサイクル精算ソリューション「WaReSS(ワレス)」という新しい事業を手がけており、このソリューションでは処理業務と精算データを紐づけることにより廃棄物処理費を透明化したり、処理費用の適正化を図ったりすることができます。

このような事業を通して、弊社のソリューションをさまざまな業界で役立ててもらおうと、現在観光業界以外にも積極的に進出しているところです。

そして今後の展望は、弊社がビジョンとして掲げている「お客様基点でのイノベーション・パートナー・カンパニー」になることです。

私たちはお客様の顕在課題へソリューションを提供するだけでなく、弊社の提案によってお客様が思いもよらなかったイノベーションを遂げるなど、お客様に「自分たちはまだ成長できる」と実感していただけるようなパートナーとして永く支持していただけることを目指していきます。

編集後記

全国でのべ約8,000もの宿泊施設に提供されている、JTBビジネスイノベーターズのクレジットカード一括加盟店決済サービス、JTB Book&Pay、INCHARGE 7。品質の高さはもちろんだが、同社の「お客様基点」の考え方に信頼感を覚え、システムの導入を決めた施設も多いのだろうと感じた。大手グループの強みを活かし、他社と協力し合うことで相互に利益と成長を生み出すビジネスモデルにより、今後もイノベーターとして業界を変革していくだろう。

上田泰志/横浜国立大学経済学部卒業。1988年、日本交通公社(現JTB)に入社し、営業、事業企画を経験後、JTBコーポレートソリューションズ執行役員、ジェイティービーモチベーションズ代表取締役社長、JTB執行役員事業開発室長、経営戦略本部副本部長、事業改革推進部長を経て、株式会社JTBビジネスイノベーターズ代表取締役兼社長執行役員に就任。「交流」×「IT・デジタル」×「金融・決済」を強みに、カスタマーサクセスを最上位においた経営・事業改革・事業開発に邁進中。