
証券・保険・不動産を横断した総合金融サービスを展開する株式会社Japan Asset Management。同社は既存の金融機関が持つ常識に挑み、真に顧客本位の資産運用を日本の文化として根付かせることをミッションに掲げる。代表取締役の堀江智生氏は、野村證券株式会社で全国トップの営業成績を収めた後、30歳で独立。堀江氏を突き動かす哲学の原点と、独自の組織論、そして今後の展望に迫る。
圧倒的努力は「決意」から 野村證券で築いた揺るぎない原点
ーー社会人としてのキャリアの原点を教えてください。
堀江智生:
学生時代から起業を志しており、ファーストキャリアでは起業に必要なスキルを最速で得られる環境を選ぼうと決めていました。その基準で多くの企業のOBを訪ね、ヒアリングを重ねた結果、野村證券株式会社(以下、野村證券)、株式会社リクルートホールディングス、総合商社の名前が挙がりました。自然と就職活動はその3業界に絞られましたが、最後の決め手はやはり「人」でしたね。野村證券で出会った方々の熱量に強く惹かれ、「この会社で鍛えられれば間違いない」と確信し、入社を決意しました。
ーー若手の頃、成果を出すために意識されていたことは何でしょうか。
堀江智生:
入社から2年間は全く成果が出ず、底辺からのスタートでした。どうすれば勝てるかを考え抜いた結果、「まずは『時間』という資源でライバルに勝つ」というシンプルな結論に至りました。そこからは、文字通り仕事に全てを捧げました。平日に誰よりも熱量高く働くのはもちろんのこと、退社後や休日も、お客様のことを調べたり、新規開拓のためにお客様のご自宅にひたすら足を運ぶ。そんな毎日でした。
営業で最も重要なのは、「お客様になってくださる可能性のある方に、いかに多くの時間を割けるか」という見極めです。成果が出ない人は、見込みの薄い相手に時間を浪費してしまっているケースが多いです。諦めずにやり抜く覚悟と、勝つための戦略的思考。その両輪が揃った時、ようやく結果がついてきたのだと思います。
シリコンバレーで得た確信「営業こそが最強のソリューション」

ーーその後、どのようなキャリアを歩まれましたか。
堀江智生:
会社の新制度で海外研修制度が発足し、幸運にもその一員としてシリコンバレーへ行かせてもらえることになりました。起業を志す者として、世界の最前線を見ておきたいという強い思いがありました。渡米当初は英語も話せず、知り合いも皆無。それでも毎晩のように開催される交流イベントに参加し、なんとかインターンとして働かせてくれる会社を見つけ出しました。
ーーシリコンバレーでの経験は、どのような気づきをもたらしましたか。
堀江智生:
スタンフォード大学出身のような世界トップクラスの頭脳が集うITビジネスの世界で、単なる営業力だけでは太刀打ちできないという現実を突きつけられました。しかし同時に、彼らのような天才たちでさえ、プロダクトを「売る」ことには非常に苦労しているという事実にも気づいたのです。この経験を通じて、「どんなに優れたプロダクトやサービスも、それを届けられる営業部隊がなければ価値を発揮できない。これからは『何でも売れる営業組織をつくる力』の価値が相対的に高まっていく」と確信しました。本気で勝負するならこの領域だ、と。そう決意を固め、日本への帰国を決めました。
ーー日本へ帰国後、独立されるまでの経緯を教えていただけますか。
堀江智生:
帰国してリテール営業に戻った際、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)というビジネスモデルに出会いました。特定の金融機関に縛られず、中立的な立場で顧客に最適な商品を提案できる。これこそが自分の目指す道だと直感し、起業を決意しました。
その後香港に転勤になり、約2年間機関投資家向けのホールセール業務を経験することになりますが、起業準備を水面下で進めていきました。全ての準備が整ったタイミングで、満を持して野村證券を退職し、事業を本格的にスタートさせました。
壮絶な創業期と逆境でこそ燃える闘志
ーー創業期、特に苦労されたことは何でしょうか。
堀江智生:
最も苦しかったのは資金繰りです。5名ほどの仲間と船出しましたが、お客様はゼロからの開拓。さらに、私たちのビジネスは証券会社との提携が必要な事業ですが、私を含め創業メンバーが若かったこともあり、認可が下りるまでに想定以上の時間がかかってしまったのです。
本格的に売上を立てられないまま自己資金は半年で底をつき、身の回りの資産価値のあるものも全て売り、運転資金に充てるほど、精神的にも金銭的にも追い詰められました。しかし、幸いにも事業許可が下りてからはお客様にも恵まれ、初年度から黒字化を達成することができました。
ーー壮絶なご経験を乗り越えられた堀江氏が、一貫して大切にされている仕事の哲学とは何でしょうか。
堀江智生:
「成果を出すか出さないかではなく、出すと『決める』かどうか」ということです。誰かに勝ちたいのであれば、人一倍努力するのは当たり前です。特に私たちのビジネスは、地道な活動の量が質に転化する、積み上げ型の仕事です。やるか、やらないか。すべてはその「決め」の問題だと考えています。
金融の常識を覆すプロダクトと人材が最大の強み
ーー貴社の事業の独自性や強みについてお聞かせください。
堀江智生:
ハード面での強みは、扱うプロダクトの幅広さです。証券を軸に、生命保険、損害保険、そして不動産の売買まで、お客様のあらゆるニーズにワンストップで応えられる体制を整えています。
そしてソフト面では、人材の質、特にその圧倒的な熱量とモチベーションの高さだと自負しています。営業メンバーは皆、覚悟を持ってこの世界に飛び込んできています。圧倒的な業務量をこなし、お客様と真摯に向き合う。そのカルチャーこそが弊社の真価です。
ーー顧客や社会から、どのような存在として認知されたいとお考えですか。
堀江智生:
私たちは、良い意味で「金融の会社らしくない」存在でありたいと考えています。残念ながら、証券会社や銀行に対する世間のイメージは、必ずしもポジティブなものばかりではありません。私自身、野村證券を辞める時は「『野村』という看板があったから営業ができていたのだ」と思い込んでいました。しかし独立してみると、現実は全く逆。むしろ「『野村証券』という看板があったからこそ、営業がやりにくかった部分があった」とさえ気づかされました。既存の金融機関とは全く違う、新しい価値を持つ存在なのだということを、もっと知っていただきたいですね。
ーー貴社が組織として大切にしているカルチャーはありますか。
堀江智生:
「できることは、全部やる」という姿勢です。目の前に「できること」があるのに、面倒くさがったり、後回しにすることはしません。この積み重ねこそが、個人の成長を促し、サービスの質を極限まで高めると信じています。この文化を、マネージャーを通して全社員に浸透させています。
成長を渇望する仲間と目指す7年後の日本一
ーー今、特に注力している事業分野はありますか。
堀江智生:
集客面の強化です。中でも、NEC発の金融テクノロジー企業である株式会社Painter様と共同展開する、職域金融サービス「Shines(シャインズ)」に最も力を入れています。これは、導入した企業の従業員の皆様に向け、福利厚生の一環として私たちの金融サービスを提供する仕組みです。すでに、2023年に提携をしたNEC様をはじめ、NECグループ会社や複数の大手企業様に導入いただいており、人的資本経営への関心が高まる中、日本を代表する大企業への展開を加速させることが当面の目標です。
ーー貴社では、どのような方が活躍できるのでしょうか。
堀江智生:
第一に「素直さ」。その上で「一心不乱に努力ができる」ことです。弊社が社員に求めるレベルは正直、非常に高いです。しかし、その分、どこよりも速い成長を約束します。
その成長を後押しするのが、徹底した実力主義の文化です。年齢、性別、社歴は一切関係なく、成果を出した人間が、正当に評価されます。実際に新卒入社2年目でマネージャーに昇格した社員もいますし、新卒4年目での役員就任も、決して夢物語ではありません。自らの成長に貪欲で、成果に見合った評価を求める方にとって、最高の環境だと断言できます。
ーー最後に、会社としての今後のビジョンをお聞かせください。
堀江智生:
私は7年後、45歳で社長を引退します。これは30歳で起業した時から決めていることです。そのときまでに、この会社を「日本一の会社」にする。私にとっての日本一の定義は、仲介するお預かり資産額です。もし目標が達成できなかったとしても、私の後を継ぐ者が、本気で日本一を目指せるだけの強固な基盤を築くことが、私の使命だと考えています。
編集後記
「成果を出すと決めるかどうか」。堀江氏の言葉は、インタビューを通して終始一貫していた。野村證券でのトップセールス、シリコンバレーでの武者修行、そして壮絶な創業期。全ての経験が、このシンプルな哲学に集約されている。彼が語る「圧倒的な量」とは、単なる精神論ではなく、勝利から逆算されたロジックに裏打ちされた戦略だ。「7年後の引退」という明確なタイムリミットを自らに課し、日本一へと突き進む若き金融集団の挑戦から、目が離せない。

堀江智生/慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村證券株式会社に入社。リテール営業として全国トップの成績を収め、野村證券CEO賞を受賞。2014年には海外修練制度でサンフランシスコに派遣され、2016年には野村香港で機関投資家営業に従事。2018年、お客様に寄り添う金融機関を目指し、株式会社Japan Asset Managementを創業。現在、3,800名以上のお客様から900億円を超える資産を預かり、資産運用コンサルティングを提供している。