
2019年に設立されたコクー株式会社。ITインフラの運用やデジタルマーケティング事業、RPAツールの開発や運用サポート、データ分析・活用サービス等、DX支援で成長してきた企業だ。最も所属メンバーの多い事業は、Excelやマクロを駆使し、バックオフィスのDXを支援する人財サービス「EXCEL女子」。代表取締役CEOの入江雄介氏に、起業した経緯やIT業界における強み、今後の展望をうかがった。
IT業界の発展を確信し、人財×デジタル事業に辿り着くまで
ーー起業家としての経験をお話しいただけますか。
入江雄介:
「一度きりの人生で大きなことをしたい」という思いから19歳で起業。ちょうどインターネットバブルの時代でした。
その後、ITをしっかりと学んでから経営者になりたいと考え、20歳の時にSI企業に入社、エンジニアとして働くことになりました。当時の上長に促され、営業部に在籍したことも良い経験です。
十分に経験を積ませてもらった後、2008年4月に前身の会社で事業を立ち上げるのですが、リーマン・ショックが起こってしまいます。「何でも屋のままではIT業界で生き残れない」と思った私は、事業をITインフラ1本に絞り、どこにも負けない強みを作ろうと決めました。
上流工程から携わり、プロジェクト全体を管理する戦略も功を奏したと言えます。個人の仕事とキャリアアップが明確な環境を作った結果、ITインフラ志望のエンジニアが集まり、今の会社を形作っているというわけです。
ーー貴社を立ち上げた経緯もうかがえますか?
入江雄介:
2013年頃から、政府が少子高齢化の対策として「女性の活躍」を推進し始めたことが一つの転機です。自身も「手に職をつけたい」と考える女性たちと接し、当時お取引のあった約412社のお客様の意見も伺う中で、日本は労働需給のギャップを埋めていくべきだと判断しました。
そして、一般的な事務作業よりも少し高度なExcelスキルを扱える「ITに強い事務職」というニーズを掴み、主力サービスの「EXCEL女子」が生まれました。「女性の活躍」が経営における大きなテーマとなり、既存人財でDXを進めるという視点で「人財×デジタル」の事業を立ち上げ、弊社を設立した次第です。
女性が「未経験」からIT事務職に挑戦し、切磋琢磨できる風土が強み

ーー「EXCEL女子」の特徴や貴社の強みを教えてください。
入江雄介:
「EXCEL女子」は、関数を扱う業務からVBA・RPAツールの活用まで、お客様の目的に応じてバックオフィス業務のDX化を支援するDX人財サービスです。その上で、弊社が重視しているのは、IT未経験者の不安を解消する「採用力」です。具体的な取り組みとしては、「採用ブログ」というオウンドメディアの運営です。女性人財に「私にもできるかも」と思ってもらうために、身近な存在やリアリティのある体験談を発信したり、異業界からの転職例を紹介して、採用のきっかけを生んでいます。
人財の「育成力」も高く、Excelの基本は約1週間程の研修で習得可能です。学びのアウトプットは現場で異なるため、実務に必要な知識をピックアップする教育制度も整えています。資格の取得を優先する一般的な企業研修と、大きく異なるポイントではないでしょうか。
ーー現在注力しているテーマもうかがえますか?
入江雄介:
DXのニーズが顕在化されていない中小企業のサポートに力を入れています。手書き資料をExcelで処理するだけでも、生産性がぐっと上がるため、製造・建設・物流・観光の領域は特に伸びしろがあるでしょう。社内改革に意欲的な方や、次世代の担い手にもアプローチしています。
また、弊社のテーマの一つでもある「地方創生」に向けて、デジタル化と持続性の両輪を回す形で、地方拠点を拡大していきたいと思っています。
新規の取り組みとしては、株式会社エクサウィザーズのグループ会社である株式会社Exa Enterprise AI様と業務提携し、「exaBase 生成AI」というAIプラットフォームの利用を促進するサービスも開始しています。利用者である大手企業様から、「生成AI活用が社内に浸透しない」という課題を受けてスタートしたサービスです。
ーー社風についてもお話しいただけますか。
入江雄介:
多くの案件が、お客様のオフィスに出向く常駐支援型だからこそ、社員同士が交流する機会を設けています。
社員による社員のための学びの場としている「コクーアカデミー」には、100件以上の研修コンテンツがあり、スキルアップした人が自ら教育プログラムをつくることも可能です。制作者がインセンティブを受け取れるメリットから、切磋琢磨の連鎖が自然発生しています。
その他にも、「Qアワード」というMVP表彰制度や部署の枠を越えた社内イベントがあり、学び合う姿勢と遊び心を日々大切にしています。
すべての属性の「個」が好きな場所で働き、輝ける社会へ
ーーどのような人財が活躍していますか?
入江雄介:
社名の由来である、「個『CO』が、会社を担う最高執行責任者『COO』として、圧倒的な当事者意識を持って取り組んでいく」という姿勢を体現している人が多くいます。
自由度があるだけでなく、つまずく人がいれば、みんなでサポートするカルチャーもあります。入口はみんな一緒で、失敗から発見が、成長から自信が生まれ、その積み重ねで仕事が楽しくなるものです。自発的にチャレンジしていく人が、絶対に活躍できる環境だと言えます。
ーー今後の展望をお聞かせください。
入江雄介:
「一人ひとりが会社をつくる。一人ひとりが未来をつくる。」というミッションに共感した人たちが集まる会社でありたいですね。その上で、「デジタルの力でダイバーシティ&インクルージョンがあたりまえの社会を創る」というパーパスを実現していきます。
シニアや外国人、身体障害者、LGBTQ、すべての属性の人たちがテクノロジーの力を身につけ、いろいろな働き方やキャリアパスを選べる世界観を築くことが目標です。ハッピーな人たちを増やし、日本中を元気にする1stステージとして、今は女性の活躍にフォーカスしています。
編集後記
19歳で起業にチャレンジした入江氏は、「まず行動すること」が成長の循環における原動力だと語った。とはいえ、地方から上京する若者は、自分が成長できそうな環境が少ないと感じている。女性人財をはじめ、あらゆる属性の人にとって魅力的な職場を提供していくコクー株式会社。彼らが拠点を増やし、地域企業の採用が活性化すれば、日本全体が元気になるはずだ。

入江雄介/1979年生まれ。19歳で起業したのち、20歳で大手SI企業に入社。エンジニアとしてキャリアをスタート。2008年、第二創業としてIT事業を創業。人財×デジタル領域の事業を立ち上げ、2019年にコクー株式会社を創業。代表取締役CEOに就任。上場と働きがいのある会社No.1×女性活躍推進企業No.1でES日本一の企業を目指す。