※本ページ内の情報は2025年5月時点のものです。

1930年の創業からスクールネクタイの製造を行ってきたハネクトーン早川株式会社。現在は、制服や事務服、ユニフォームの製造・販売を手がけている。ユニフォームアパレルメーカーのパイオニアとしてのこれまでの歩みや、同社の強みである時代に合わせた商品開発などについて、代表取締役社長の早川智久氏にうかがった。

周囲との軋轢に苦しんだ若手時代。社内改革を先導し、業績のV字回復を達成

ーー入社から社長就任当時のエピソードをお聞かせください。

早川智久:
一人っ子だったこともあり、小学生の高学年くらいから「家業を継がなければいけないのだろうな」と思っていましたね。そして大学卒業後、そのまま家業に入りました。私が入社した当時は会社の業績が悪かったため、とにかく組織の体制を変えなければと必死だったことを覚えています。

ただ、これまで成功体験を積んできた経験から、自分のスタンスを変えたくない方が多く、周囲への説得は苦戦しましたね。また、若気の至りで私もわかったように偉そうな物言いをしてしまっていたのも災いしました。

こうして社内改革をしたくても周りから足止めされる状況が続き、思うように動くことができず、とても歯がゆい思いをしていました。このときは組織として統率が取れておらず、各々が違うベクトルを向いていましたね。

そうした中、父が退任し、私が社長に就任することなります。父には、「会社の方針については相談するけれど、手段や戦術については任せてほしい」と伝えました。それからは、今までできなかった社内改革に着手していくことになります。

まずは財務体質の分析を進め、中期経営計画と事業運営基本指針を策定しました。また、計画生産の実施や決算期の変更、販売組織体制の強化、新ブランドの立ち上げなども行いました。

その結果、見事V字回復を果たしたのです。この実績に加え、健全な経営基盤が評価され、2013年に第5回千代田ビジネス大賞を受賞しました。父もとても喜んでくれて、「じいさんと俺とお前の3人で取った賞だ」と言われたときは、誇らしく思いましたね。

社長に就任する前は、自分の思うようにいかずもどかしく感じることもありましたが、この受賞を機に、家業を継いで良かったと心から思えるようになりましたね。

ーーその他の取り組みについても教えてください。

早川智久:
組織の活性化を図るため、女性営業職の採用を始め、採用面接には営業社員にも参加してもらい、どのような人材が必要かを議論しました。さらに新たに導入したのが、組織力を高めるための社員研修です。

当初は社員からの発言が少なかったのですが、次第に自ら主張する雰囲気が醸成されていきました。今では社員同士が自由に意見を言い合える、風通しの良い組織になっていると感じていますね。

ニッチな領域で他社と差別化を図り、市場をリード

ーー貴社の事業内容と強みについてお聞かせください。

早川智久:
弊社はレディースユニフォームやスクールネクタイ、オフィシャルネクタイなどの企画・製造・販売を行っています。レディースユニフォームは主に企業やホテルなど接客サービス向けのユニフォームを手がけています。オフィスユニフォームのマーケットが需要拡大期には事務服の企画をしておりました。

弊社はこれまで時代の流れに合わせた商品提供も行ってきました。たとえば、ワンタッチで付けられるネクタイがそのひとつです。そこから派生し、ユニフォーム用の「おしゃれネクタイ」の販売も行っており、東京メトロや東急電鉄、警察などの制服に採用されています。

さらに、市場ニーズを先取りした施策を次々と打ち出してきました。弊社ではいち早くユニフォーム素材にニット素材を取り入れました。当初はまったく売れず、他社は早々に見切りをつけ撤退してきましたが、「これからは機能性が求められる時代になる」と信じ、販売を続けました。

すると、予想通り動きやすいニット素材が主流となり、他社に先駆け製造と販売を行っていたおかげで、大きな差別化となったのです。

また、これまでレディースユニフォームはベストとスカートの組み合わせが一般的でした。しかし、屈んだときに背中が見えるという声が多く挙がっていました。そこで仕事中に制服が乱れるのを気にせず自由に動けるようにしようとジャケットとワンピースのセット商品を増やした結果、売上アップにつながりました。

ーー組織運営で意識していることを教えていただけますか。

早川智久:
社員の心得として第一に「誠実であり正直であること」と謳っているとおり、地道にコツコツ仕事に取り組む姿勢を大切にしています。さらには「ポジティブな思考を持つこと」「変化を起こし、筋を通すこと」も重視しています。

また、変化を恐れず、常に挑戦を続けることも意識していますね。進化論で「強いものではなく、変化に対応していくものが生き残る」というように、ビジネスでも常に変わり続ける企業だけが残ると思うのです。

弊社では新しいプロジェクトを進める際、「前年と同じで」はNGにしています。変化の激しい時代に、自分たちが変わらないままでは退化していくばかりです。現状維持は退化と同義なので、これからも常に新しいことに取り組み続けていきたいですね。

創業100年の節目に向けた今後の目標

ーー今後の展望についてお聞かせください。

早川智久:
創業100周年を迎える2030年を目途に、売上高15億円の達成を目指しています。そのために、ユニフォーム事業の高級路線の強化を進めていきます。人口が減少し全体の売上低下が見込まれるため、高付加価値の開発に注力していきたいですね。

また、発展途上国での人件費が高騰しているため、国内の縫製工場を買収し、自社で運営する体制を整えていきたいです。後継者不足も問題となっているので、縫製部門をグループに取り込み、生産基盤を自社で構築することで、生産体制の強化を図っていく予定です。

さらに今後注力したいのが、採用の強化です。その一環として、工場がある栃木県宇都宮市を拠点に活動するプロバスケットボールチーム・宇都宮ブレックスのスポンサーになるなど、認知度向上に努めています。

現在従業員が86名のところから100名体制を目指しています。さらに機械の導入で属人化を防ぎ、未経験でも服の縫製を行えるようにすることで、生産力をアップさせていきたいですね。

進化論では「変化に対応していくものが生き残る」と言われていますが、会社にも通ずるものがあると思うのです。競争が激しい業界で生き残るために、これからも常に変化を続けて行きます。

ーー最後に求職者の方々に向けてメッセージをお願いします。

早川智久:
弊社は自動裁断機(CAM)の導入など設備投資を継続的に行い、効率化と品質向上を図っています。データを取り込んで生地の裁断をするため、熟練のスタッフでなくても正確なカットができるのがメリットです。

そのため、製造工場の従業員の平均年齢が30代後半と、同業の中では若いのが特徴です。また、製造工場は女性が多いイメージだと思いますが、弊社は男性社員も活躍しています。高い製造技術を活かしたものづくりの現場で働きたい方、常に新しいことに挑戦できる環境で働きたい方をお待ちしています。

編集後記

若い頃から自分をよく知る幹部が退任する際、「社長は頑張っているよ」と労いの言葉をかけられ、とても励みになったという早川社長。社員との衝突もありながら社内改革を押し進めてきた早川社長の努力は、組織を成長へと導いてきた。ハネクトーン早川株式会社はこれからも学生や社会人が居心地良く過ごせるよう、時代に合ったネクタイ・リボンやユニフォームを提供し続ける。

早川智久/1979年東京都生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業。2001年新卒でハネクトーン早川に入社し、経営企画室長、専務取締役を経て2010年に代表取締役社長に就任。地域の町会活動や法人会などの活動にも注力している。