※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

1990年に設立された株式会社エプコ。給排水・電気などの住宅設備の「設計サービス」、住宅オーナーが安心して住み続けるための「メンテナンスサービス」、脱炭素社会への貢献を目的とした「再エネサービス」の3つを軸に、全国で事業を展開している。代表取締役グループCEOの岩崎辰之氏に、設立の経緯や事業を通して伝えたい思い、今後の展望をうかがった。

工事図面のデジタル化で水道工事業界を変革し、エプコを設立するまで

ーー起業した経緯や、それまでのご経験をお話しいただけますか。

岩崎辰之:
起業するきっかけになったのは、東京都の水道工事店、いわゆる「町の水道屋さん」で取り組んだ事業改革です。

前職の東芝エンジニアリングでCADの操作を学んでいたことから、工事の図面を手書きでなくPCで製作したいと思い、会社に設備投資を提案したのです。PCが世の中に普及する前の1980年代において、非常に画期的なチャレンジだったと言えるでしょう。

デジタル化によって図面の製作スピードが上がれば、役所への申請から着工までの時間も短縮できます。図面の見やすさ・管理のしやすさもアップするメリットも得られ、結果的に売り上げが高まり、月商は約3年間で10倍となりました。

私はまだまだ事業規模を拡大できると考えていましたが、経営者の方とは方針が異なったため、独立して岩崎設計サービスという会社を創業しました。

ーー独立後のターニングポイントもうかがえますか?

岩崎辰之:
水道工事店向けの図面製作サービスを通して、大手ハウスメーカーと出会い、新しい事業にチャレンジしたことが大きな転機ですね。

その大手ハウスメーカーは、家づくり用のパーツを工場でつくり、現場で組み立てる「プレハブ住宅」を得意としています。しかし、当時の法律上の制約から、水道工事だけは各地の業者に依頼する必要があり、自社のビジネスモデルを活かしきれずにいました。工事費の相場や使用できる材料も市区町村ごとに異なるため、一括管理すらできない状況だったのです。

また、全国に拠点を持つ大手ハウスメーカーにとっては経営課題であり、私としても事業拡大には大手ハウスメーカーの経営課題解決が必須と考えておりました。

この共通課題を解決するため、エプコを設立し、施工方法の全国標準化と材料・基本工事費のデータベース化に注力していきました。

給排水設備の設計・メンテナンス受付・再エネ事業を展開

ーー事業内容と強みを教えてください。

岩崎辰之:
給排水設備の総合サービスとして、設計から水道工事の積算、部材加工情報の提供を行っています。大きな特徴は、工事に必要な材料を工場で生産・加工し、配管セットとして現場に届けるプレファブリケーション・システムです。

また、住宅のオーナー様からのお困りごとや要望を受け付けるメンテナンスサービスを提供しています。住宅会社のアフターサービスを代行する形で、独自のプラットフォームを活用し、専門スタッフが24時間365日、対応にあたっています。

そして、東京電力エナジーパートナー社との合弁事業として、2017年より再生可能エネルギーの普及を目指す「再エネサービス」もスタートしました。太陽光発電設備の設置にかかる初期費用を0円とし、月額料金のみで利用できる「エネカリ」という独自サービスを提供しています。

いろいろな切り口で、住宅に関わる事業を展開していることがまさに弊社の強みですね。

ーー貴社ならではと感じる取り組みや社風はありますか?

岩崎辰之:
私は自身の経験や考えを発信する場として、「a route(みちすじ)」というCEOブログを20年以上、毎日配信しています。特に期待しているのは、会社が進む方向や課題を社員に意識させる社内報の役割になっていることです。

結束力の高さと風通しの良さにもつながっており、社内は全体的にアットホームな雰囲気があります。社員が自主的にバーベキュー大会を企画したり、運動会には100名もの参加者が集まったりと、仕事以外でも一致団結する文化が根付いています。

「進化への挑戦」をスローガンに100億円企業を目指して

ーー今後の展望をお聞かせください。

岩崎辰之:
企業スローガンの「Challenge to Evolution(進化への挑戦)」にこめた、「変化に対して常に挑戦する意欲を持つ」という考えを大事にしながら、業界や時代を変革するようなチャレンジを続けていきたいと思っています。

2027年までの中期計画として、2024年時点から20億円アップの「年間売上75億円」を達成し、設立40周年を迎える2030年には100億円企業になる。この目標に向かって、みんなで歩いていくというのがこれからのエプコですね。

また、既存業務の効率化にも注力していきたいところです。具体的には、現場のDXをはじめ、図面を3D化するBIMの普及、メンテナンスやリフォームの受注時期を予測する蓄積データの活用、AI導入によるオペレーター業務の負担軽減に取り組んでいきます。

弊社は「事業を通じて社会課題を解決したい」という価値観から、地球温暖化対策の一環として再エネサービスに取り組み、建築工事のプレハブ化で人手不足を補ってきました。

今後は事業承継に向けて、経営層の育成はもちろん、価値観を共有できる企業様とのパートナー経営も進めていく方針です。

編集後記

水道工事における配管セットの提供と、プロセスのデータ化・マニュアル化により、住宅品質の安定化を図ってきたエプコ。多くの事業者に必要とされるカンパニーとなった背景に、独立の決め手にもなった「事業をもっと成長させたい」という社長の向上心と、社会課題への問題意識の高さがうかがえた。

岩崎辰之/1964年生まれ。1982年、東芝エンジニアリング株式会社に入社。有限会社三静水道工業所での勤務を経て、1988年に岩崎設計サービスを創業。1990年に株式会社エプコを設立し、代表取締役グループCEOに就任。2002年、ジャスダック上場を果たす。2004年に中国、2011年に香港で現地法人を設立し、海外に視野を広げた事業も展開。