※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

2025年4月、オリックス・クレジット株式会社から社名変更し、NTTドコモグループの一員として新たなスタートを切った株式会社ドコモ・ファイナンス。同社は個人向けの金融サービスに強みを持ち、アセットビジネスとフィービジネスをバランスよく展開することで、安定した成長を実現してきた。「NTTドコモグループへの参画が最大の成長戦略」と語る、代表取締役社長の岡田靖氏に話をうかがった。

人との縁が紡いだ、金融業界でのキャリア

ーー貴社に入社した経緯を教えてください。

岡田靖:
もともと金融業界に興味があり、就職活動の結果、証券会社から内定をいただいていました。しかし、バブル崩壊の影響で内定が取り消されることに。他の内定はすべて断っていたため、私は行き場を失ってしまいました。

そんなとき、当時私がアルバイトしていた飲食店によく来店していた弊社の人事担当者とつながりができ、そのご縁があって、オリックス・クレジット株式会社(現:株式会社ドコモ・ファイナンス)に入社することとなりました。入社後は加盟店営業や延滞金回収など、信販会社としての業務をひと通り経験しました。

ーーこれまでのキャリアで、特に注力された取り組みをお聞かせください。

岡田靖:
私の実績として、住宅ローンである「フラット35」の導入があります。

オリックスグループではこの事業をすでに行っていましたが、法人向けビジネスが中心だったため伸び悩んでいました。一方、弊社は個人向けビジネスに強みがあり、多くの顧客に対応できるノウハウを持っていたのです。そこでこの強みを活かせると考え、4年ほどかけて交渉した結果、住宅ローン事業を弊社に移管させることに成功。これにより、ローン事業・信用保証事業・モーゲージバンク事業(※)という3つの柱を持つ、安定した経営基盤を築くことができました。

(※)モーゲージバンク:住宅ローンを専門に取り扱う金融機関のこと

デジタル化の時代にあえて追求する、人間味のあるサービス

ーー貴社の事業内容について教えてください。

岡田靖:
弊社は主に3つの事業を展開しています。

1つ目は、カードローンを中心とするローン事業です。これは弊社がお金を調達して、お客様に貸し出すシンプルな仕組みです。

2つ目に、銀行などが行う融資に対して保証を行う、信用保証事業があります。この事業は弊社が融資の保証人となり、お客様が返済できなくなった場合に代わりに支払うというものです。リスクを引き受ける代わりに保証料をいただいています。

そして3つ目が、住宅ローン「フラット35」を取り扱うモーゲージバンク事業です。これは住宅ローンの申込みを受けて審査し、融資実行後すぐにその債権を住宅金融支援機構に売却するため、手数料だけをいただくような仕組みですね。

このように、資金を使う事業とそうではない事業をバランスよく持つことで、金利環境が変化しても影響を受けにくい構造になっています。

ーー他社と比較した際の強みはどういったものですか?

岡田靖:
お客様ファーストの姿勢を徹底していることが最大の強みです。具体的には、コールセンターの人材育成に力を入れており、接客品質の向上に努めています。最近ではデジタル化やチャットの普及も進んでいますが、弊社ではあえて人と人とのコミュニケーションを重視しています。

理由は顧客層が競合他社と異なるためです。弊社のお客様は、上場企業の管理職クラスの方が中心で、画一的なサービスではなく、状況に応じた柔軟で丁寧な対応を求められています。このようなニーズに応えることで、お客様からの高い信頼を獲得していると考えています。

NTTドコモグループの一員として描く未来

ーーNTTドコモグループへの参画を決断した背景を教えてください。

岡田靖:
新型コロナウイルスの発生を機にキャッシュレス化やデジタル化が急速に進んだことにより、顧客の囲い込み、いわゆる“経済圏”が広く普及するなど、ビジネス環境が大きく変化。これにより、お客様の獲得方法も大きく変わり、以前と同じ広告費を使っても3分の1ほどの成果しか得られないという状況に陥っていました。

そんな中、NTTドコモグループは「d払い」や「dポイント」など、多くの方が日常的に使うサービスを展開し、大きな顧客基盤を持っています。こうしたプラットフォームと力を合わせることで、お客様はより便利に弊社のサービスを利用できるようになりますし、弊社も効率的に事業を展開できます。お互いの強みを活かしたWin-Winの関係が構築できると考え、参画を決断しました。

ーー今後の展望をお聞かせください。

岡田靖:
今回の社名変更は、弊社の第2の創業期だと位置づけており、今後はNTTドコモグループの金融サービス拡大に貢献していくつもりです。

グループと弊社のノウハウをかけ合わせれば、従来はアプローチできていなかった層にも融資できる可能性が広がると考えています。回収業務は長年弊社が携わってきた部分のため、その強みも活かせるはずです。NTTドコモグループの金融領域の中核企業になるべく、今後も全力で取り組んでまいります。

編集後記

岡田社長の「バランス」への意識が印象的だった。アセットビジネスとフィービジネスを組み合わせる経営戦略、そして時代のデジタル化に対応しながらも人間味のあるサービスを維持する姿勢。どちらか一方に偏ることなく、複数の要素をうまく融合させる発想が根底にある。こうした柔軟な思考が、これからのドコモ・ファイナンスの成長を支えていくのだと確信した。

岡田靖/1970年、広島県生まれ。専修大学経済学部卒業。大学卒業後、オリックス・クレジット株式会社(現:株式会社ドコモ・ファイナンス)へ入社。営業部長、経営企画部長、執行役員(経営企画部、システム企画部、経理部、内部監査室管掌)を経て、2021年に同社代表取締役社長へ就任。