※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

製造業やサービス業など、さまざまな業界の現場に向けて、自社開発のハードとソフトを掛け合わせたソリューションを提供するシステムギア株式会社。同社は業界ごとのニーズに深く入り込み、縁の下の力持ちとして業務の効率化や省力化を支えることに強みを持つ。

その根底には、代表取締役である岸上新弥氏の「目立たなくても必要とされる存在になりたい」という思いがある。そんな同社が描く、次のステージに向けた事業戦略と組織づくりについて話を聞いた。

父の急逝により21歳の若さで入社を決意。周囲に支えられ経営者としての土台を築く

ーー岸上社長のご経歴をお聞かせください。

岸上新弥:
システムギアは1972年に私の父が創業した会社です。私の家は代々続く農家だったのですが、父が田畑を売却して会社を興し、電子計算機器の製造に乗り出しました。

当時は父の仕事にあまり関心を持てず、むしろ、叔父が行っていた果物や野菜を輸入する貿易の仕事に興味を持っていました。そこで私は、高校卒業後にアメリカに留学し、貿易会社勤務を目指し始めました。

しかし、私が描いていた将来像は、父が急逝したという知らせで大きく変わります。私は急いで帰国するとともに、周囲からの「会社を継いでほしい」という期待の声を受けて、父の会社を継ぐことを決意したのです。こうして、21歳のときにシステムギアに入社しました。

入社後はまず購買部に配属されて、数千点に及ぶ部品の発注や納期管理を担当し、商売における信頼と責任の重みを学びました。この時期にいただいた厳しくも温かい上司の言葉や、取引先とのやり取りは、私の社会人としての基礎を形づくっています。改めて当時を振り返ると、周囲に育ててもらったおかげで今日の私があることを改めて実感します。

ーー経営に携わるようになってから、どのような変革に取り組みましたか?

岸上新弥:
私が経営に本格的に関わるようになってから、最初に取り組んだのは自社製品比率の引き上げです。それまでは、顧客の要望に合わせた特注の高付加価値製品を得意とする開発会社でしたが、安定性に欠ける側面もありました。そこで、事業の安定と持続的成長のためにメーカーへの転換を目指したのです。

特に注力したのが「自動認識機器」への依存から脱却することです。バーコードや磁気カードリーダーは弊社の代名詞のような存在でしたが、それだけでは時代の変化に対応しきれないと感じ、あえて依存度を下げる道を選びました。

こうして、前任者が構築した土台を引き継ぎながら、自社製品比率を3割から8割超まで高めることに成功しました。

もう一つ力を入れたのが、幹部候補を育て各事業部を子会社化し、事業専念型の経営を実現するためのホールディングス体制の導入です。

現在は人材育成や現場の環境整備などに力を注いでおり、今後もじっくりと組織を成熟させながら、社会課題を技術で解決する企業を目指していきたいと考えています。

ハードとソフトの融合と業界特化型ソリューションで成長を加速

ーー貴社の強みはどのような点にあるとお考えですか?

岸上新弥:
弊社の強みは、組織内にハードとソフト両方の技術力を有している点です。

弊社は創業当初からハードウェアの開発・製造に力を入れてきましたが、パソコンやスマートフォンといった汎用端末が普及した今の社会では、ハードだけで生き残っていくことは困難です。しかし、そこにソフトの技術が追加されれば、ハードで差別化をしてソフトで稼ぐという事業構造が実現可能となります。

また、各業界に特化した戦略と、業界ごとに柔軟にカスタマイズできる対応力も私たちの強みです。運送業やゴルフ場、教育機関といった、それぞれの業界に深く入り込み、その現場特有の課題を技術で解決することで「この業界ならシステムギア」と信頼される存在を目指しています。

そして、これらの根底を支えているのが、現場経験を新商品開発に活かす考え方です。他社パッケージソフトウェアの受託業務や、常駐(派遣)型開発(SES)や受託業務をただの請負で終わらせずに、次のプロダクトづくりへの種まきと捉えることで、走りながら成長していける組織づくりを実現していきます。

販路拡大と新商品開発を両輪に、価値観を共有できる仲間とともに次の時代を目指す

ーーこれから注力したい取り組みをお聞かせください。

岸上新弥:
特に力を入れたいのが新商品開発です。すでに企画専任の部門を設け、2年間限定で現場から人材を派遣するサイクルを導入し、NTTデータや京セラとの共同開発といった実績も生まれています。

今後は製造部門を独立させて、EMS(電子機器受託製造サービス)型のビジネスモデルへの転換を進めていく予定です。

また、販路の拡大にも注力していきます。すでに強みを持っている運送業界やゴルフ場においては、取引数を現在の2〜3倍に引き上げたいと考えています。また、養殖業や飲食業など、深刻な人手不足が課題となっている分野へのアプローチも目指しています。

ただ、これらの取り組みでネックになるのがやはり人材面の課題です。弊社ではちょうど社員の世代交代が起こっている最中で、新たな時代を任せられる担い手が必要だと感じています。そのため、経験の有無や年齢にかかわらず、弊社の価値観に共感し「ここで根を張りたい」と思ってくれる人を積極的に迎え入れていきます。

ーー最後に、読者へのメッセージをお願いします。

岸上新弥:
私たちシステムギアは、業界の縁の下の力持ちとして、社会の中で確かな役割を果たせる企業でありたいと願っています。運送業界の業務効率化やゴルフ場のオペレーション改善など、その現場での課題を技術の力で解決していくことこそが私たちの本質です。

目指しているのは、社会にとってなくてはならない会社になること、その結果としてその業界のなかで誰でも認知してもらえる会社になることです。今後も一人ひとりの技術者が、課題解決の主人公になれるような環境を整えながら、社会課題に、技術で挑む企業として、着実に歩みを進めてまいります。

編集後記

システムギアが掲げる、社会課題に技術で挑むという姿勢は、ただの理念に留まらず、製品開発や組織運営に一貫して根づいている点に強さがある。今後は現場からの発想を軸にした商品づくりや目的が明確な体制整備が進むほどに、多様な業界で存在感を発揮する存在になるはずだ。技術と信頼を武器に、社会の不可欠なインフラ企業として地位を築く日が楽しみだ。

岸上新弥/1968年6月兵庫県宝塚市生まれ。1989年6月、創業社長岸上新治氏逝去により、ワシントン州立ヤキマバレーカレッジを中退、帰国。1989年6月、システムギア株式会社(旧:日本システム開発株式会社)に入社し、経営企画、調達部門を経て、営業職に従事。1995年8月、株式会社システムギアビジョン(旧:ジェイ・テック有限会社)代表取締役に就任。2001年4月システムギア株式会社代表取締役就任。