
昨今、フリマアプリの普及や物価高による節約志向、SDGs達成のための世界的な取り組みの加速などが追い風となり中古市場は急拡大を続ける。今後もますますの成長が期待されるリユース市場で、エコリングリシャインはブランド品のメンテナンスと売買の2つのサービスを提供している。同社の代表取締役である三木清成氏に事業内容や今後の展望についてうかがった。
スカウトからグループ会社の社長へ
ーーまずは社長の経歴をお聞かせください。
三木清成:
エコリング社に入社する前は広告代理店の企画営業管理をしていました。当時エコリング社の広告も扱っており、その打ち合わせの際にエコリング社の桑田社長に「うちで働いたらどうか」とお声掛けいただいたことが入社のきっかけです。
最初にお声掛けいただいた時には創業当初で1店舗しかなかったので消極的な気持ちもありましたが、お付き合いを重ねていく中で、桑田社長のお人柄に加え、エコリング社の今後の経営戦略やビジネスモデル、将来性に惹かれ入社を決意しました。
ーー入社してからはどのようなことが印象的でしたか。
三木清成:
とにかく事業の成長のスピードが速かったことです。入社後1年目で店長、2年目でマネージャーをさせていただき、買取店の出店や運営管理に携わりました。既存店の運営、また新店舗のテナント探しやそれに伴うスタッフの採用、育成といった業務を繰り返すうちに、気づけば2〜3年で全国で40店舗に広がりました。入社当時は全国展開や世界展開をするようなイメージはありませんでした。しかし会社のスケールが年々大きくなり社員数もどんどん増えていく中で、その成長スピードに負けないぐらい自分自身もより成長し、「より良いリーダーシップやマネジメントをやっていかないといけないな」という責任感を強く感じました。
店舗立ち上げや事業拡大の業務はハードでしたが、社員皆で一丸となって会社を成長発展させることと共に、自分達の昇格やビジョンを実現していけるという実感が、仕事のやりがいや楽しさ、職場内の強固な仲間意識につながっていったことがとても印象深いです。そういった経験や社内の人間関係が自分自身の仕事観の根幹となり仕事をより充実させるものとなりました。
ーーエコリングリシャインの創業時、苦労されたことについてお聞かせください。
三木清成:
エコリングリシャイン社は2014年に当時のエコリング社の年度方針の中の成長戦略の一つとして、エコリングと全く同じビジネスモデルではない少し違いをつけた周辺事業を立ち上げていこうと創業しました。エコリング全体(現エコリングホールディングス)としての事業力・サービス力を高めるためです。そのため、それまでにエコリングでやってきたことと違う切り口でビジネススキームを創る必要があった点で苦労しました。
エコリングでは買取店で仕入れを行い販売することがビジネススキームでした。それに対してエコリングリシャインでは、社名の「リシャイン」の通り市場の中古品の価値を再び高めるべく修理やメンテナンスにも力を入れ、その要素を盛り込み事業化しています。そのため、それに即したビジネススキームやサービスを一から創り上げることや、収益化することに大変苦労しましたね。また、融資について金融機関の方々とやり取りすることも社長になる以前は経験がなかったので、それに携われたことは経営者としての自覚と責任が芽生えるとても良い経験となりました。
他にも、人材に関する部分でも頭を悩ませました。リシャイン設立に伴い、新しく採用した方々とは、関係性も少なく、教育も一からする必要があったため、苦心しましたね。
メンテナンスと融合させた独自の中古品売買モデル

ーー貴社の事業内容を教えてください。
三木清成:
多くのリユース店はお客様から商品を買い取りそれを販売しますが、エコリングリシャインはそれとは少し異なる事業形態です。もちろん店頭での買取も行っていますが、商品の仕入れの多くは全国に点在している業界のオークション会場にバイヤーが赴き、そこで自社が販売するものを選び仕入れを行っています。
コロナ禍以降は業界オークションのネット入札も増え、現在は月間1億円以上の仕入れを行っています。このようにして仕入れた各ブランドの商品の価値が再び輝くように丁寧にクリーニングやメンテナンスを行いWEBサイトで国内・国外に販売することが私たちの主な事業です。
WEB販売の顧客層としては6割が海外で4割が国内、そしてその大半がスモールバイヤーと呼ばれる小規模な古物業者様です。私たちの事業は、現段階ではBtoBに近い業務形態だといえるでしょう。
私たちを知ってくれている方であれば、一般のお客様でも自社の販売サイトやヤフオク、楽天のサイトなどで購入していただくこともあります。しかし、現在はまだ一般お客様の目に届くところでは大々的な広告宣伝を行っていません。今後はネット広告やSNSを駆使して海外や国内の一般の方にもアプローチを広げていけば更に事業拡大の可能性を広げていけると考えています。
個人のスキルアップと自己実現につながる人材育成
ーー現在人材戦略において、どのようなことに力を入れていますか。
三木清成:
事業拡大に伴う人材の採用と育成です。そして拡大に沿って社員さん達が成長できる環境とチャンスを与えていきたいと考えています。私自身エコリングで与えてもらいチャレンジさせていただいた業務や役職での体験、また受けさせていただいた研修や教育によって今の自分があると感謝していますので、そういった環境を弊社の社員さん達にも与えていきたいです。
昨今の社会情勢では大手企業でも終身雇用も危うく、働く人にとって先行きが不安な時代だと思います。未来に夢が持てない、仕事が楽しくないという方も多いと思います。だからこそ、事業成長していける弊社の業務を通じ社員さん達がスキルを高めてもらい、社員さんたちが未来を描けそれを実現していけるような環境を今後も提供していきたいです。基本的に弊社は残業や転勤はありませんが、専門スキルを身につけて年収1000万円を超える社員さんも在籍しています。
人生の大半を仕事の時間に使いますので、割りきり嫌々仕事するのではなく各々が自分自身の自己実現のために主体的に会社を発展させていき、それによって自分自身も物心共に幸せになっていってもらいたいと思っています。
ーー具体的にはどのような取り組みをされているのでしょうか。
三木清成:
皆さん未経験からスタートしますので先輩社員さんがしっかりとサポートしていきます。専門知識が必要な仕事なので社内勉強会や業務時間中にも個人的な勉強時間も設けています。
例えばバイヤーとしてのスキルを成長させるためには先輩と一緒に実際にオークション会場に同行したくさんの商品を見ながら教えます。
また、職能のスキルアップだけでは状況判断力や対応力が足りない部分があるので人間力の成長のために外部研修なども設けています。他にも、エコリンググループの他の会社との交流会や合同研修も積極的に行い、皆で切磋琢磨しています。
こうした取組みで各社員さんが自発的にスキルアップを図ってもらい、今後の人生の中で出産や介護などで一時的に職場から離れないといけない場合があったとしても、また戻ってきて働けることができ、一生安心して働け、一人ひとりの人生ビジョンを実現していける会社を目指しています。
インターネットを駆使して世界へ広げるアプローチ
ーーこの先どのような事業展開を考えていますか。
三木清成:
EC部門を強化することで海外への販路拡大を考えています。現時点では広告などの宣伝活動をあまりしていないながらも海外からの需要が年々高まっています。ブランド品の需要は全世界にあります。ECの部門に力を入れることで国内はもちろん海外にもアプローチし事業を伸ばしていきたいです。
また中古市場の規模は拡大傾向にありますが、コロナ以降ブランド各社が定価の値上げや販売数を制限していますので、程度の良い中古商品が年々少なくなってきています。そうした中で弊社は仕入れた商品を丁寧にメンテナンスし、価値ある商品を再び輝かせ世の中に流通させ、社会に貢献していきたいという想いがあります。
具体的には、弊社の3つのサービス(販売、買取、メンテナンス)を通して、お客様には「価値あるものを安く買える」「価値あるものを長く使える」「価値あるものを高く売れる」というお得感や喜びをお客様に提供しお役に立っていきたいと考えています。この3つのサービスは弊社が今後の事業展開する上において大事にしている要素であり、そのサービスを融合させることにより今までにないお客様満足やサーキュラーエコノミーにつながっていくと考えています。
ブランド品というものは単なる贅沢品消耗品ではなく個人資産としての価値も高く、中古市場でも高値で売買されます。また親から譲られたものや自分へのご褒美や自信を持つために買ったものといったように、多くの人にとって特別な思い入れがあるものもあるはずです。
そういったお客様の大切なお品物や世の中の大切な資産・価値あるお品物に対して弊社の存在が強い味方となれるよう、理念に基づいたサービスを提供していくことが私たちの使命だと考えています。
編集後記
中古品販売の市場は拡大を続け、2030年には市場規模は4兆円に至るという予測もある。こうした中でブランド品に込められた思いを大切にした三木社長の姿勢は、エコリングリシャインの強みであるメンテナンスと売買を融合させたビジネスモデルに表れていると感じた。
「安く買える」「長く使える」「高く売れる」の3つのモットーを掲げたエコリングリシャインの活躍には今後も注目である。

三木清成/エコリング創業時期に携わり、買取店店長、エリアマネージャー、取締役を歴任。2014年、エコリングHDのグループ会社として株式会社エコリングリシャインを創業。同社代表取締役に就任。