※本ページ内の情報は2025年7月時点のものです。

1972年の創業以来、ダイヤモンド工具の製造を行ってきたインターナショナルダイヤモンド株式会社。同社の主力製品である超極細のシャープペンシル型のやすり「マイクロフィニッシュ」は、第28回大田区中小企業新製品・新技術コンクールにて最優秀賞を受賞している。

ものづくりの現場を支える同社の製品の強みや、現在力を入れていること、今後の展望などについて、代表取締役社長の江口國康氏にうかがった。

大阪・船場で幼少期に学んだ社会の仕組み

ーーまず江口社長の幼少期からのエピソードについてお聞かせください。

江口國康:
私は商人が集まる大阪の船場で幼少期を過ごしました。当時の大阪は繊維産業を中心に栄えており、荷物を満載した車両がひっきりなしに往来していました。東京で言えば丸の内のようなオフィス街で、学校は地域の一角にあり、私たちにとってオフィスビルは遊び場でしたね。

特に商品の仲介業務を行う商社が多く、出入りする大人たちのやり取りを見聞きしているうちに、お金や物の流れなど自然と社会の仕組みを学びました。このときに得た知識は社会人になってからとても役に立っています。

大学卒業後は、イギリスに留学して2年ほど現地で生活しました。イギリスを選んだのは、せっかく学ぶなら英語発祥の地で勉強しようと思ったからです。この留学中に外国人との付き合い方など、異文化を学びました。今後は海外展開も考えているので、このときの経験がこれから活かせればと考えています。

スポットライトは当たらないが、ものづくりの現場を支える重要な存在

ーー貴社の事業内容について教えていただけますか。

江口國康:
ダイヤモンドをベースに、機械工具や研磨材の製造を行っています。ダイヤモンドは現存する物質の中で最も硬く、この特性を活かして主に金型加工用の機械工具に使用されています。

弊社がつくった製品は、機械工具メーカーさんに納めています。そこで機械工具が製造され、その工具が自動車メーカーさんなどに提供されるという流れです。そのため、あまり目立たない存在ではありますが、日本産業を支える縁の下の力持ちとして、ものづくりの現場で重要な役割を担っています。

なお、ダイヤモンド工業協会の統計では市場規模は約1000億円と、他の業界と比べると市場規模が小さいのが特徴です。そのため、新たに参入してくる企業が少なく、ライバルが限られているため、比較的業績は安定しやすい業界ですね。

ーーダイヤモンド総合メーカーとして多数の製品を展開していますが、それらはどのように生まれるのですか。

江口國康:
お客様から相談を受け、試行錯誤しながら取り組んできた結果、気付いたら数多くの製品ができていた感じですね。弊社は1972年に創業して以来、ダイヤモンドの加工技術に関するノウハウを蓄積してきました。それをベースにお客様のニーズに合わせ、さまざまな製品を提供しています。

さまざまな場面での活用を期待できるシャープペンシル型やすり

ーー貴社の主力製品である「マイクロフィニッシュ」について教えてください。

江口國康:
これは超極細のシャープペンシル型のやすりです。これまで届きにくかった狭い部分の加工も可能になり、金型などの組み立てや加工後の製品のバリ取りなどの最終仕上げに使われています。

大田区主催のコンクールで受賞した際、東京工業大学(現・東京科学技術大学)の副学長から「製造現場の自動化が進んでも、最後は人間の手で仕上げなければならない。そうした場面でかゆいところに手が届く商品である」とコメントをいただきました。

今後は微小加工ができるハンドツールとして、幅広いメーカーさんに提供していきたいと考えています。この先受注量が増えていけば、販売体制も強化し、安定的な供給ができるようにしたいですね。

なお、最近ではプラモデルを組み立てるツールとしても注目されています。こうした流れを受け、今後はBtoCも展開していきたいと思っています。

ーー採用についてはいかがですか。

江口國康:
これまでは欠員補充のために中途採用を行い、新卒採用は行っていませんでした。ただ、現在弊社は年齢層が高い社員が多く、若い世代が少ない逆ピラミッド型になってしまっています。これがピラミッド型になるよう、今後は新卒を含めた採用を考えています。

製造業ですので、ものづくりが好きな方が向いていると思いますね。ダイヤモンドはさまざまな分野に応用できるので、柔軟な発想力で、新製品のアイデアを提案してくれる方をお待ちしています。

中途の方の場合、前職の経験は問いません。むしろ前職のやり方がベースになってしまうと、新しい発想が生まれにくいからです。ものづくりに興味ある方は経歴を問わず歓迎します。

ーー社内の雰囲気を教えてください。

江口國康:
和気あいあいとした職場なので、気軽に意見を言いやすい雰囲気だと思いますよ。社内にはさまざまな業界出身の方がいて、多様性がありますね。また男性だけでなく、多くの女性従業員も活躍しています。

後継者育成と海外への販路拡大について

ーー今後の注力テーマとビジョンについて教えてください。

江口國康:
これからも会社を存続させていくために、次世代の育成に力を入れ、人事評価制度の見直しを行っています。一生懸命努力している社員がきちんと恩恵を受けられるよう、公平に評価できる制度に整えたいですね。

ただ、一方の意見を立てればもう一方の意見が立たないように、こちらに関してはまだ多くの課題が残っています。分け隔てなく適切な人事評価ができるよう、引き続き取り組んでいきます。

また、現在は国内事業が中心ですが、これからは海外を含めてお客様の幅を広げていきたいです。そのために主力製品のPRと、営業力の強化に注力しています。汎用力が高い弊社の製品は、海外でも需要があると思うので、世界中のお客様にお届けしたいですね。

ーー最後に読者の方々へメッセージをお願いします。

江口國康:
ダイヤモンドはどの物質よりも強度が高く、優れた特性を持つ材質です。この特性はあらゆる場面で応用でき、無限の可能性を秘めています。弊社の製品を通じて、より多くの方にダイヤモンドの素材としての価値を認識していただけるよう、これからも精進していきます。

編集後記

「もっと多くの人にダイヤモンドの価値を知ってほしい」と話してくれた江口社長。ダイヤモンドと聞くとジュエリーが頭に浮かぶが、ものづくりの現場で欠かせない重要な素材なのだと学んだ。インターナショナルダイヤモンド株式会社はこれからもダイヤモンドの強みを活かして、さまざまな分野で製品を提供し、ものづくりを支えていくことだろう。

江口國康/1966年大阪府生まれ。問屋街である船場で幼少期を過ごす。大学卒業後に渡英し、約3年間ポリテクニック社会学部でビジネスコミュニケーション学を専攻。帰国後は機械工具メーカーに就職。1998年家業であるインターナショナルダイヤモンド株式会社に入社し、2007年代表取締役社長に就任。