
コグニティ株式会社は、思考の偏りを指す認知バイアスの除去を目的としたAIによるコミュニケーション分析ツール「COG-SUITE」を提供し、企業の人材育成と評価を支援するサービスを展開している。同サービスは上場企業を中心に約400社、6万人以上に導入されており、科学的なアプローチによる公平な評価と教育を実現してきた。同社設立の経緯や事業内容、今後の展望について、代表取締役である河野理愛氏に話をうかがった。
19歳でNPO法人を設立、社会貢献を志し起業へ
ーー社長のこれまでの経歴をお聞かせください。
河野理愛:
14歳のときに公開した、「スポーツ科学」に関する学びをまとめたWebページが、社会貢献事業を始めるきっかけとなりました。このWebページは、次第にプロのアスリートや研究者が集うコミュニティ・インターネット掲示板として発展していきました。
そこでスポーツに関する多種多様な悩みの相談を受けるうちに、「この活動を法人化すれば、相談に対してもっと効果的なアプローチができるのではないか」と考え、19歳のときにNPO法人を設立するに至ったのです。
しかし、20代での経営には限界を感じて大企業で経営を学びたいと考え、2005年にソニー株式会社への入社を決意しました。幸運にも中期経営計画を策定する部署に配属され、経営層に近い仕事に携わるという貴重な機会を得ました。
その後、事業縮小という転機を迎え、新たな挑戦を求めて2011年に株式会社ディー・エヌ・エーへ転職しました。異なる意思決定プロセスを学んだ上で、改めてより社会に貢献できる道を模索し、数カ月の準備期間を経て、弊社を設立したのが2013年のことです。
認知バイアス除去サービスを約400社に提供

ーーどのような事業を展開していますか?
河野理愛:
弊社は、「人の思考や言葉をいかにして数値化するか」ということを商品開発のテーマにしています。認知バイアスを取り除くためのソフトウェア「COG-SUITE」は、上場企業を中心とする約400社に提供しています。ビジネスシーンにおいて、勘や経験で判断されてきたものに科学的なアプローチを入れて、誰でも改善できるようにし、フェアな評価ができるようにすることが目標です。
システムを導入した企業は、弊社のトークスキルAI検定サービスを社員に受けさせることで、「各自のトークスキルを向上させるためにどうすればよいか」を検出し、フィードバックを受けることができます。改善点をレポートとして提出することで、受検者のスキル向上に対するモチベーションアップにも貢献するのです。
株式上場を視野に組織拡充を図る
ーー今後、注力したいところをお聞かせください。
河野理愛:
営業部門の人材採用を強化したいです。弊社は、中小企業向けのパッケージを開発したことによって、昨年から地方の企業との取引が着実に増えています。今後はさらに多様なシーンに対応できるコミュニケーション分析プラットフォームを開発し、新規取引先を開拓する方針です。
同時に、より多くの方に弊社を知っていただくため、会社自体の規模拡大も目指しています。4〜5年後には、株式を上場したいですね。この目標達成のためにも、まずは強固な営業体制を構築し、売上を伸ばしていきたいと考えています。
ーー貴社で活躍できるのはどのような人材ですか?
河野理愛:
物事を科学的・論理的に捉えたい、数字で把握したいという方は、弊社と相性がいいと思います。営業先には上場企業の役員クラスの方々が多いので、先方の高度な知見に対応できる意欲的な姿勢を持った人材を求めています。
採用は新卒・中途を問わず行っていますが、特に若手にとっては1年という短い期間でさまざまな業種のトップレベルの方の課題に触れられる、貴重な機会となるでしょう。
経験者の方であれば、相手の立場や気持ちに寄り添いながら、多様な事業が直面する課題を深く理解できる資質を期待しています。企業向けのコンサルタントや研修といった分野でのご経験は、弊社の課題解決アプローチと共通点が多いため、大いに歓迎します。
また、営業職だけではなく管理職のポジションも不足しているので、バックオフィスの責任者としてチームをまとめ上げてくださる責任者候補の方も求めています。マネージャーとして実績のある方はもちろん、「これからマネージャーとして組織を引っ張っていくぞ」という気概がある若手の方からのご応募もお待ちしています。
ーー最後に、貴社の今後の展望をお聞かせいただけますか。
河野理愛:
「COG-SUITE」のラインナップを、さらに広げていきたいです。現時点でも営業トーク分析や特定の業界に特化したもの、異なるビジネスシーンの分析など、多様なラインナップを展開しています。今後はさらにラインナップを充実させ、幅広いお客さまのニーズに応えたいです。
さらに、新たな取り組みとして、2025年4月からは弊社の技術を活用してクライアント企業のソリューション強化を支援する、OEM(※)のようなサービスを始めました。この技術提供によって、クライアント企業のビジネスを陰から支えて、より深い貢献を果たしていきたいです。
(※)OEM(Original Equipment Manufacturing):メーカー(受託側企業)が、委託側企業の自社ブランド商品を受注して製造・提供すること。
編集後記
これまで上場企業との取引で培ってきた実績に、今後は中小企業へと支援の対象を広げていくコグニティ株式会社。新たにスタートさせたOEMサービスが、日本の企業研修の在り方にどのような変革をもたらすのか。「人の思考の癖」というテーマにAIで挑み、よりフェアな社会の実現を目指すその挑戦の行く末を見守っていきたい。

河野理愛/1982年生まれ、徳島県出身。慶應義塾大学総合政策学部卒業。大学在学中の2001年にNPO法人を設立し、代表に就任した。2005年にソニー株式会社に入社し、2011年には株式会社ディー・エヌ・エーに転職。2013年、「認知バイアスを取り除く」ためのソフトウェアを開発する、コグニティ株式会社を設立。