
1953年の創設以降、全国約4,000店の花店のネットワークを活かした花の通信配達「花キューピット」の運営を行っている一般社団法人JFTD。花に関わる仕事に従事するフローリストを養成するJFTD学園日本フラワーカレッジの運営や、フラワーデザイン競技会の開催を通じ、花業界の発展に貢献している。
生花の安定的な供給を維持するための取り組みや、花を贈る文化を次世代に残したい思いなどについて、会長の堀切実氏にうかがった。
花業界の基盤を支える生花を届ける配達システムとフローリストの養成について
ーーまずは会長に就任するまでの経緯を教えてください。
堀切実:
スポーツ選手だった私は30歳の頃に現役を引退し、家業の花屋を継ぎました。しかし、右も左もわからない状態だったので、まずは花業界のことを勉強しようと花キューピットの支部に所属したのです。支部の活動をするうちに、本部の方々と関わる機会が増えていきました。
その流れでJFTDで働くようになり、プロジェクトリーダーや常務理事、業務室長、副会長を経て、2024年に会長に就任した次第です。
ーー貴団体の活動内容についてお聞かせいただけますか。
堀切実:
私たちの主な活動は、全国の加盟店を通してお客様に花をお届けする生花通信配達システム「花キューピット」の運営です。注文を受けた店が、お届け先の最寄りの店と連携し、希望のお花をお客様にお渡しするシステムで、北海道から沖縄まで全国に加盟店があるため、遠隔地の方にもお花をお届けできます。
さらに、花に関わる仕事に従事するフローリストを養成する「JFTD学園日本フラワーカレッジ」の運営も行っています。
ーーフローリスト養成校について詳しく教えてください。
堀切実:
一般的な養成校は2年制のところが多いですが、幣校は1年でフローリストになるための必要な科目を履修できるのが特徴です。短期間でも一人前のフローリストとして活躍できるよう、緻密にカリキュラムを組んでいます。
また、全生徒のうち花業界への就職を希望した人の就職率はほぼ100%と、就職に強いのも特徴です。卒業までに2回インターンシップに参加できるため、就職後のイメージがしやすいのも幣校ならではのメリットです。全国に加盟店があるからこそ、インターンシップの受け入れ先が多いのもポイントですね。
入学者数はその年によって差がありますが、現在は30〜40名ほどです。以前は花屋のご子息・ご息女が大半でしたが、今では入学生の3分の2が自ら花業界で働きたいと志願して入学してきています。
1991年に第1期生を受け入れて以降、これまで数多くの卒業生を輩出してきました。この団体の役員にも、この学校の卒業生が多くおります。卒業後も業界の発展のために日々仕事に取り組んでいるみなさんの姿を見ると、この仕事に関われてよかったと思いますね。
生産者との連携強化で、生花の安定供給を目指す

ーー業界の課題と貴団体の取り組みについても教えてください。
堀切実:
花業界で深刻な課題となっているのが、気候変動の影響により、花の生育時期と購入ニーズのずれが生じている点です。日本ではお正月は梅や菊、ひな祭りは桃の花、卒業・入学シーズンはガーベラなどの明るい色の花など、決まった時期に特定の花の需要が高まります。
これまでは季節のサイクルに合わせて開花していたため、供給が追いついていました。しかし、昨今は異常気象により開花時期がずれ、必要なときに花がなく、需要が下がった頃に売れ残った花が大量に出回る状況が続いています。こうして需要と供給のバランスが崩れることで、花の価格が乱高下しているのです。
この問題に対応するため昨年立ち上げたのが、生花生産者の方との情報共有を行う連絡協議会です。これまで生産者の方は「だいたいこの時期だろう」と、推測で販売時期を決めていました。しかし、今後は需給の正確な把握が必要になります。
そこで、お客様と直接接する私たちが、ニーズが高まる正確な時期を伝え、生産時期とぴったり合うよう情報を共有することにしたのです。生産者の方々には種を植えてから開花するまでの日数を共有してもらい、需要が高まる時期に合わせて生産できるよう調整しています。
お客様が適切な価格で購入でき、生産者は収益の安定が見込めるよう、この取り組みを通じて今後さらに連携を強化していこうと考えています。
仕事の魅力を伝え花業界を盛り上げるための施策について
ーー今後注力していきたいテーマについてお聞かせいただけますか。
堀切実:
年々縮小傾向にある花業界の活性化のため、就業者数の増加に力を入れていきたいと考えています。私たちが運営するフローリスト養成校には、花業界への就職を希望する方が集まっています。
その一方で、世間一般では何となく「花屋の仕事っていいな」と思う方はいても、具体的な仕事内容が伝わっておらず、就業につながっていないのが今の課題です。そこで、花業界の仕事の魅力をアピールする一環として、全国からフローリストを集めて花の技術を競う、フラワーデザインコンテストを開催しています。このコンテストを通じ、花業界の技術の高さや仕事の奥深さを知っていただき、フローリストが憧れの職業になることを目指しています。
ーー貴団体職員に求める人材像について教えてください。
堀切実:
私たちは加盟店をまとめるプラットフォーマーとして、各店舗のモチベーションを高める役割を担っています。そのため、周囲の人と協力して目標達成に挑むチームプレーが得意な方に来ていただきたいですね。
また、今後は全国各地に点在する加盟店が、地域に根ざした店舗運営をしている強みを活かし、地域ぐるみの活動を進めていきたいと考えています。そのため、新しいアイデアを生み出してくれる、想像力が豊かな人材を求めています。
さらに、前述したとおり、フローリストが憧れの仕事になるべく、花業界をけん引する人材を発掘したいですね。多くの方に、花に関わる仕事に興味を持っていただきたいです。
花を贈る文化をもっと身近なものにしたい
ーー最後に今後のビジョンについて教えてください。
堀切実:
次の世代に花業界を残すため、さらに加盟店を増やし、プラットフォームとしての規模の拡大を目指しています。そのためには「花に関わることはなんでも教えてもらえる」「花キューピットに加盟すれば安心だ」と言ってもらえる組織になることが、今後の課題です。
この課題を解消するため、生花の流通面や生産面の改善を進め、安定した収入を得られるよう環境を整備していきたいと思っています。「より身近に、花のある生活、花を贈る、潤いのある暮らしを、全国に普及拡大させる。」をモットーに、これからも大切な人に花を贈る文化を守り続けていきます。
編集後記
気候変動による生産量の不安定化や人員不足など、花業界の課題解決に奔走する堀切会長。花屋に行けばいつでも花が買える状況を当たり前に思っていたが、その影には多くの人の努力があるのだと改めて感じた。一般社団法人JFTDはこれからも業界の発展に貢献し、大切な人を思って花を贈る文化を次世代へ継承していくことだろう。

堀切実/1967年生まれ東京都出身。1998年に合資会社大花園に入社し、2001年代表に就任。1998年に合資会社大花園に入社し、2001年代表に就任。花キューピット城南支部長、東京ブロック長を経て、2006年花キューピット協同組合理事に就任。その後、常務理事、業務室長、情報化プロジェクトリーダーなどを経て、2016年一般社団法人JFTD副会長、2024年会長に就任。