
兵庫県姫路市を中心に、人材派遣・人材紹介・業務アウトソーシングの3本柱で事業を展開する株式会社マインズ。同社は地域密着型のアプローチで、幅広い顧客企業の多様なニーズに応えている。2008年のリーマン・ショック時に仲間とともに創業し、2023年に代表取締役社長へ就任した矢野卓也氏に、同社の歩みと今後の展望について話を聞いた。
トラックドライバーから転身した先で、自分の天職を見つけた
ーー人材派遣業界に入った経緯を教えてください。
矢野卓也:
私は大学を中退してから、トラックドライバーを2年ほど経験しました。その後21歳のときに、自分でスケジュールを決めて働ける仕事に就きたいと感じ、転職活動をする中で人材派遣会社とご縁があり、そこに転職したのです。
営業職として採用されて実際に働き始めると、仕事を求める人と企業をつなぐ役割の重要性を肌で感じるようになりましたね。
社会人として生活していく上で基盤となるのは仕事です。その仕事を決める手助けをする、人の人生を左右しかねないような重要な部分に直接関わるというのは、とても価値のある、やりがいのある仕事だと感じました。
「矢野くんのおかげで仕事が決まった」と感謝の言葉をかけていただくことも多く、いつしかこの仕事が天職だと思うようになりました。
ーーどのようなきっかけで貴社を創業したのでしょうか?
矢野卓也:
創業のきっかけは、前職での経験にあります。2008年ごろ、私は別の人材派遣会社に転職しており、姫路地域の責任者をしていましたが、その会社の経営方針に疑問を感じていました。
当時はリーマン・ショックの影響で業界全体が厳しい状況に立たされていた時期でもあります。拠点を閉鎖して、人員を削減するような動きが見られる中で、「社員一人ひとりの顔と人生が見える会社をつくりたい」という想いが芽生え、同じ志を持つ仲間とともに5人で弊社の創業に踏み切りました。
社名の由来は「mind」の複数形です。一人ひとりが持っている想いや考えを集めて会社を立ち上げたことから、「マインズ」と名付けました。
地域密着型のサービスで実現する多角的なサポート

ーー貴社の事業内容と強みについて教えてください。
矢野卓也:
弊社の事業は大きく分けて3つあります。1つ目の人材派遣では、弊社に登録いただいている方々を企業に派遣し、働く機会を提供しています。2つ目の人材紹介は、企業と求職者のマッチングをサポートし、企業の採用活動を支援するというものです。そして、3つ目は業務アウトソーシングで、自治体や企業の業務そのものを請け負うサービスを展開しています。
こうした事業を展開する上での弊社の強みは、地域に特化していることです。大手企業の場合、特定の業種や職種に特化し、エリアを広げる戦略をとることが多いのですが、弊社はその反対の戦略をとっています。
地域ごとに考え方も違うため、兵庫県という地域に特化することで、技術職や事務職、販売職など幅広い職種に対応できる体制を整えてきました。これにより地域のさまざまなニーズに柔軟に応えることが可能になっています。
ーー顧客との関係づくりについては、どのような方針ですか?
矢野卓也:
顧客の数を増やすよりも、既存の顧客とより深く関われるような関係構築を重視しています。一時的なものではなく、長期的なパートナーとして信頼していただける関係を築くことが大切だと考えています。
この考え方は先ほど申し上げた事業において、お客様の抱える課題に対し多角的にアプローチするという姿勢につながっています。今後も、お手伝いできる範囲を徐々に広げていき、いずれは事業全体をサポートできるようになれたら嬉しいですね。
既存事業の深化と新規事業への挑戦で描く企業の未来像
ーー人材育成において、特に注力されている点をお聞かせください。
矢野卓也:
私が最も重視しているのは、社員一人ひとりが成長し続けられる環境づくりです。そのために、各部門の責任者には部下の育成に力を入れ、成長をサポートすることを求めています。
また、社内の教育に加えて、業界団体の勉強会や外部研修に積極的に参加する機会も設けています。勉強会や研修などで同業他社の方々と交流することで、新しい視点を養ってもらっているのです。こうした取り組みを通じて、やりがいや生きがいを感じながらキャリアを築いていける環境を提供したいと考えています。
このような人材育成に加えて、弊社では働きやすい環境づくりにも力を入れています。たとえば育休取得率の高さがその一例で、現在社員の約1割が育児休暇を取得中です。
ーー今後の展望について教えてください。
矢野卓也:
今後は、既存の事業をさらに深化させながら、新しい事業にも積極的に挑戦し、日本一と呼べる特色ある事業を模索していきたいと考えています。実際、すでに子会社では「あさり」などの養殖事業に取り組んでいるところです。人材ビジネスと養殖というユニークな組み合わせは、これからの事業展開において大きな強みになるでしょう。
今後も社員からの発案など、さまざまなアイデアを大切にしながら、地域に根ざした新たな価値創造に挑戦し続けたいと思います。
編集後記
リーマン・ショックという厳しい時期に創業し、地域に密着したサービスで成長を続けてきたマインズ。矢野社長が語る「人の人生を左右しかねない重要な仕事」という言葉からは、人材ビジネスへの誇りと責任感が伝わってくる。創業時の志を守り抜き、新たな地域貢献の道を模索し続ける姿勢に胸を打たれる思いがした。

矢野卓也/1982年、兵庫県姫路市生まれ。兵庫県立太子高等学校卒業。大学中退後、トラックドライバーを2年経験し、21歳から人材派遣業界に入る。2008年に株式会社マインズを創業。営業を約10年経験し、2023年に同社代表取締役社長へ就任。