※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

株式会社YSGホールディングスは創業120年を超える歴史を持ち、不動産事業を中心にグループ全体で多角的な事業展開を行う企業だ。同社は石油事業からスタートし、時代の変化に合わせて事業構造を転換。現在は不動産事業を基盤としながら、グループ企業を通じてシステム開発や介護、外国人材紹介など、幅広く事業を手がけている。今回、次の100年を見据えて経営に臨む、代表取締役社長の長堀真己氏に話をうかがった。

結婚を機に入社した老舗企業で、新たな成長の柱を育て上げた

ーー貴社に入社した経緯を教えてください。

長堀真己:
私は2003年に大学を卒業後、大手生命保険会社のIT子会社に就職しました。大学時代は法学部でしたが、就職活動をする中でIT業界に興味を持ち、金融系SEとして社会人のキャリアをスタートしました。そして妻との結婚から数年後の2008年、義父の経営する横浜石油株式会社(現:株式会社YSGホールディングス)へ転職しました。

ーー入社後から代表取締役社長就任までの経緯をうかがえますか。

長堀真己:
入社後は、弊社グループの株式会社YSLソリューションを任され、縮小傾向にあった石油事業に代わる新たな成長の柱として、IT事業の拡大に注力しました。最初に取り組んだのが海外展開です。2010年から中国での開発拠点を立ち上げ、グローバルな開発体制の構築を推進。その後の2011年には建設業向けソフトウェアの自社開発を開始し、それまでメインだった受託開発から自社製品をベンダーに展開するビジネスへ転換を図りました。

これらの取り組みにより事業は順調に成長し、2013年にはYSLソリューションの代表取締役社長に就任。その後もプロジェクト管理体制の強化やエンジニアの質向上に取り組み、収益力を高めていきました。その結果、2016年に弊社の代表取締役社長に就任することになりました。

就任後は「次の100年をどうつくっていくか」という視点で企業理念の再構築にも取り組み、現在も「いつの日も、人とともに。」という理念を中心に据えた経営を追求しています。

4社体制で多角的に展開する社会課題解決型ビジネス

ーー貴社グループ全体の事業内容をお聞かせください。

長堀真己:
弊グループは現在、4つの会社でそれぞれ事業を展開しています。1つ目は、ガソリンスタンド跡地の再開発事業として1986年から不動産事業をはじめ、現在は横浜、東京を中心に国内外で15棟ほどの賃貸不動産を保有し安定した収益を上げています。

2つ目は、YSLソリューションのソフトウェアサービス事業で、グループ全体の約7割にあたる売上を誇っており、社員数は国内外を含め約400名の規模にまで成長しました。

3つ目は、YSナーシングが展開する施設介護・在宅介護事業で、こちらも不動産事業の一環として、ガソリンスタンド跡地を活用して老人ホームを建設したことをきっかけに始まった事業です。

そして4つ目がYSタレントで行っている外国人就労支援・教育事業です。日本企業の人材不足という社会課題の解決に向けて、海外3か国に拠点を持ち、外国人材の教育から就業支援まで行っています。

ーー今後、注力する領域について教えてください。

長堀真己:
現在の日本社会で特に不足しているのはDXと人材だと認識しており、この2つの領域に注力していく予定です。人材面では、単に外国人材を紹介するだけでなく、彼らの日本での生活基盤も含めたトータルサポートが必要だと考えています。

そこで弊社は、不動産事業を組み合わせて、企業への人材紹介と同時に、外国人が安心して暮らせる住環境を提供する体制づくりを進めています。これにより定着率も向上し、地方の空き家活用など社会課題の解決も期待できるでしょう。

DXの面では、ソフトウェアサービス事業において、自社アプリの提供からソフトウェアの開発、運用、保守までワンストップで手がけています。現在は、建設業向けのソフトウェアを提供していますが、これを他の産業分野にも広げ、ハードウェアと組み合わせることで、より高い価値を生み出せるのではないかと考えているところです。

社会に足りないものを見極め、次の100年を目指す

ーー今後の展望をお聞かせください。

長堀真己:
「足りないを探し、足りないを満たそう」というコンセプトのもと、社会の変化に合わせて常に進化していきたいと考えています。今はDXと人材という日本社会の課題に取り組んでいますが、時代が変われば他の事業に取り組む可能性も十分にあるでしょう。重要なのは、その時々の課題に対して最適な解決策を提供し続けることです。

そのために必要な変革は恐れずに実行し、社員にもチャレンジの機会を提供し続けていくつもりです。創業から100年以上の歴史を持つ企業として、次の100年を見据えて新たな価値を創造し続けていきます。

編集後記

長堀社長が語った「永遠に続く事業はない」という言葉が印象的だった。時代の変化に応じて主力事業を大胆に転換してきた歴史は、常に変わりゆく社会課題に向き合い続けてきた証といえるだろう。柔軟性と先見性を武器に次の100年を見据える長堀社長の眼差しに、企業存続の真髄を見た気がした。

長堀真己/1980年、埼玉県川口市生まれ。立教大学卒業。2003年、国内大手生命保険会社のIT子会社に入社し、外資系保険会社向け基幹系システム開発に従事。2008年、横浜石油株式会社(現:株式会社YSGホールディングス)に入社。2013年、同社グループのIT子会社である株式会社YSLソリューションの代表取締役社長に就任。2016年、株式会社YSGホールディングスの代表取締役社長に就任、現在へ至る。