
不動産の開発・分譲を主軸としながら、M&Aによる事業承継を独自の強みとして成長を続ける、株式会社Livenup Group。現在は“第二創業期”を掲げ、IPO(新規株式公開)を見据えて組織の変革を加速させている。同社を率いるのは、代表取締役の二川良介氏。幼少期をベネズエラで過ごし、金融業界を経てトップに就任した異色の経歴を持つ。彼の原体験からくる「常識を疑う」という視点は、会社の成長戦略そのものに深く根差している。
本記事では、独自の事業モデルと挑戦意欲のある人材が輝ける企業文化、そして未来への展望に迫る。
常識を疑え ベネズエラでの原体験が培った独自の視点
ーー社長の原点である幼少期の体験についてお聞かせください。
二川良介:
父の仕事の関係で小学5年生から4年間、南米のベネズエラに住んでいました。現地のインターナショナルスクールに通っていたのですが、そこでの日常は、日本での“当たり前”が全く通用しない世界でした。国や文化が違えば、人々の価値観や“普通”の基準がいかに異なるかを、子どもながらに肌で感じた4年間でした。
この経験から得た私の信条は、「常識を疑い、自分の頭で考える」ということです。エリアや時代が変われば“常識”など簡単に覆る。だからこそ、“こうあるべきだ”という固定観念は一度フラットに見つめ直します。もちろん周囲のアドバイスは真摯に受け止めますが、最終的には必ず自分自身で考え抜き、納得して行動する。この姿勢は、ベネズエラでの経験が間違いなく育んでくれたものです。
金融業界からM&Aの世界へ 異色のキャリアパス
ーー大学ご卒業後は、どのような進路を選びましたか。
二川良介:
大学卒業後は大和証券グループの投資会社に入社し、企業投資のノウハウを学びました。実は金融の道へ進んだのも、ベネズエラでの経験が原点です。ベネズエラは世界有数の石油埋蔵量を誇りながら、経済の仕組みが機能しておらず、豊かな国とは言えませんでした。どんなに優れた資源も、それを活かす金融や経済のシステムがなければ宝の持ち腐れになる。その現実を目の当たりにし、社会を動かす金融の力に強く惹かれ金融業界を選びました。
ーー貴社へ参画された経緯を教えてください。
二川良介:
金融というフィールドでさらに専門性を高めたいと思い、米系のシティグループ証券に移り、M&Aのアドバイザーとして4年ほど経験を積みました。その後、独立して自己資金で企業投資を行う中で、弊社の前身企業(株式会社Liv-up)へ共同で資本参画したのが出会いです。株主という立場から経営に携わるようになった、少し珍しい経緯かもしれません。
「思い」を承継する不動産M&A Livenup Groupの真価

ーー貴社の事業と、その中核となる強みをお聞かせください。
二川良介:
戸建て分譲やマンション開発が主な事業ですので、一見すると一般的な不動産会社です。しかし、私たちの最大の特徴であり強みは、M&Aによる事業承継を積極的に行い、事業領域を拡大している点にあります。私が参画してからの4年間で、この事業承継を通じてマンション開発や売買仲介、管理といった機能を次々とグループに加えてきました。
私たちのM&Aは、投資ファンドのように短期的な利益を求めて転売しません。また、他の事業会社のように自社色に染めることもしません。事業承継の現場では「創業者が人生を懸けて築いた社風や哲学を残したい」というオーナーの“思い”が何より大切にされます。私たちはその独立性を最大限尊重し、柔軟な形でグループに加わっていただく。この「思いを継承する」という姿勢こそが、私たちの真価だと考えています。
ーーこの事業ならではの、やりがいは何でしょうか。
二川良介:
後継者が不在で未来が描けなくなってしまった会社に、私たちのグループから意欲ある若い経営者を送り込み、事業の灯りを未来へ繋ぎ、さらに成長させられる点です。社員にとっては、若いうちから経営に挑戦できる機会が豊富にある。これが、何よりのやりがいにつながっていると確信しています。
第二創業期のリアル 挑戦意欲ある仲間と上場を目指す
ーー社内の雰囲気やメンバーはいかがですか。
二川良介:
不動産業界一筋のプロフェッショナルもいれば、私のような金融出身者もいる。多様なバックグラウンドを持つ人材が、互いの知見をぶつけ合いながら事業を推進しています。特に事業承継を本格化させてからの4年間は、まさに“第二創業期”。IPOという共通の目標に向かって、会社全体がベンチャーさながらの熱気に満ちています。
ーーどのような方が貴社で活躍していますか。
二川良介:
挑戦心が強く、自らの領域を積極的に広げたいという方が活躍しています。既存の枠組みに満足せず、常に新しい挑戦を求めるエネルギーを持った方にとって、最高の環境を提供できる自信があります。
私自身、サラリーマン時代に「もっと挑戦したいのに」という、もどかしい思いをした経験があります。だからこそ弊社では、年齢や経歴を問わず、意欲と能力ある人材に大きな裁量と責任あるポジションを任せています。挑戦に失敗はつきものですが、その失敗を許容できる文化、すなわち「挑戦ができる土俵」がなければ、社員は思い切った一歩を踏み出せません。様々な試みの中から成功したものを育てていくという考えが、会社全体の風土として浸透しているのです。挑戦したい人を全力で応援するカルチャーが、私たちの誇りです。
ーー今後のビジョンと目標をお聞かせください。
二川良介:
M&Aによる事業承継、承継後の経営改善、そしてIPO向けた管理体制の強化。この3つを一体として加速させることが、私たちのビジネスモデルの根幹です。今後はIPOに向けて事業承継のスピードをさらに上げていくため、M&Aチームの経営人材、そして管理部門の強化が急務です。第二創業期の中核を担うCxO候補やM&A責任者といった経営人材を本気で求めています。
3年後、5年後のビジョンとしては、まず市場への上場を成し遂げることが一つの大きな目標です。そして、共に働く仲間たちには、自分の個性を存分に発揮し、担当する組織を“自分色に染める”くらいの気概で、未来をつくっていってほしいと強く願っています。
編集後記
幼少期をベネズエラで過ごし、“常識は国や時代で変わる”と肌で感じた二川氏。その哲学は、創業者の“思い”ごと未来へつなぐ独自の事業承継モデルとして結実し、会社の“第二創業”を力強く牽引している。年齢や経歴を問わず、挑戦者に機会を与えるという方針のもと、社内は変革期の熱気に満ちている。同社が不動産業界に新たな風を吹き込む日は、そう遠くないだろう。

二川良介/2013年に大和証券株式会社に入社し、傘下の投資会社である大和PIパートナーズ株式会社にて再生可能エネルギー、不良債権、企業投資業務に従事。2016年よりシティグループ証券株式会社にて、上場会社向けのM&Aや資金調達戦略の策定や実行支援業務に従事した後、2021年に取締役として株式会社Liv-up(現株式会社Livenup Group)に入社。2024年より代表取締役就任。