※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

静岡特化型移住転職エージェントとして、静岡県への移住(UターンやIターン)を希望する転職希望者と静岡県の地元企業とのマッチングサービスを主力事業に展開する株式会社TurnX(ターンエックス)。同社の代表取締役、酒井優一氏もまた静岡県の出身で、起業をきっかけに、自身も家族とともに静岡へUターン移住を果たしたという。

酒井氏はなぜ移住特化型の人材紹介サービスを始めようと考えたのか、また、その事業としての可能性をどう見据えているのかについてお話をうかがった。

上場企業での新規事業立ち上げ、スタートアップでの創業事業立ち上げを経験

ーー酒井社長のご経歴をお聞かせください。

酒井優一:
生まれは静岡ですが、東京の大学に進学、最初に就職したのも東京の会社です。東京で働き始めてしばらくの間は、静岡にUターンで戻ることも、起業することも、あまり意識していませんでした。

最初に入社した大手人材サービス企業では、売上を上げるために飛び込み営業の件数や、電話アポイントの件数などの、社員に課せられた行動目標数値がありました。当時、その目標を達成するために自分が心がけていたのは、「なにがなんでも達成する」ということ。自分の行動の数が、売上という結果につながっていると考え、ずっとこだわってきた部分です。

ーーその会社ではどのような業務を経験されたのでしょうか。

酒井優一:
最初は求人広告営業を経験し、その後は新規事業を立ち上げる部署に異動になりました。その部署で、ゼロの状態から事業を立ち上げるという貴重な経験を積むことができました。まさに何もないところから事業を作っていくわけですから、正解はないですし、まずは実際に動いてみることを重視する環境でした。もしかすると、それが失敗になるかもしれない。ですが、そうやってトライ&エラーを繰り返しているうちに、成功への道筋が見えてくる。そのプロセスが、私にはとても面白く、学びがありました。

ーー新規事業立ち上げを経験したことがきっかけで、起業したいという思いが芽生えてきたのでしょうか。

酒井優一:
いえ、その時点ではっきりと起業することまでは考えていませんでした。この後、社会人としていろいろと仕事をしていくうちに、「いつかどこかのタイミングで起業したい」、「会社の事業の責任者、トップとしてやってみたい」という気持ちが少しずつ生まれてきたように思います。

その後、HRスタートアップである株式会社LiBに転職し、創業事業立ち上げに関わることになります。ここでは大手からスタートアップまで幅広い企業への採用支援を行い、キャリアアドバイザーとして延べ2,000名の転職支援に携わりました。

自身のHR経験を活かし、地元静岡に貢献したい

ーー数々の採用支援に携わっていくなかで、どのような気づきがありましたか。

酒井優一:
企業には、それぞれの成長フェーズがあり、そのタイミングに合わせてほしい人材も変化することに気づきました。たとえば、まだ社員数が10人ぐらいのスタートアップ企業と、社員数3桁の会社が、採用を進めるフェーズでは採用すべき人材のタイプが異なります。会社の規模や状態によって、どういう人材が必要で、どういう人を採用すべきなのかは、まったく違うというわけです。

ーー転職希望者のキャリア支援をするうえで、大事にされていることはありますか。

酒井優一:
転職希望者の価値観をじっくり深掘りするようにしていました。人によってどういう環境が合うのか、あるいは合わないのか。なにを大事にしていて、どういう働き方がしたいのか。そういう個人の価値観が、企業の価値観とマッチしていることがなによりも大事だと思っています。

ーー株式会社TurnXを起業された経緯について教えてください。

酒井優一:
もし自分が起業するなら、まずは自分の強みを活かしたい、自分だからできることをやりたいという思いがベースにありました。そして、せっかく起業をするなら、自分がやる意義を感じられること、社会貢献性が高いものを考えているうちに、「地元の静岡に貢献できたらいいな」という気持ちが自然と芽生えたのです。

静岡県の人口は減少傾向であり、少子高齢化による経営者の後継者不足により地域経済を支える企業が少しずつ減り、地域経済の縮小が加速しようとしています。そこをなんとか改善したく、静岡移住、静岡へのUターン、Iターン転職を加速させ、将来的な人口減ストップを図りたい。と考えたのです。

静岡への移住転職を実現させ、ムーブメントにする

ーー株式会社TurnXでは、主にどういったことに注力されているのでしょうか。

酒井優一:
メイン事業は、静岡特化型移住転職エージェントとして、静岡県への移住を希望されてる方に特化した転職支援、移住支援サービスを提供しています。その他には、県内企業の人事コンサルティングや採用コンサルティングなども展開しています。

静岡には知られていない魅力的な企業がたくさんあるのですが、自社の見せ方や、アピール自体が苦手な企業も多いのが実情です。弊社はそのような企業と併走しながら、静岡の企業をどんどん盛り上げることで、静岡全体も盛り上げたいという思いで事業を展開しています。

ーー今後のビジョンをお聞かせください。

酒井優一:
私たちは「静岡への移住転職ムーブメントをつくる」というミッションを掲げています。そのために、会社として静岡へ移住転職する方の実績を積み上げていき、「静岡への移住転職だったらTurnXですよね」と、多くの人から認知されるよう、さらにブランディングを強化していきたいですね。

10年後は、おそらく地方人口がもっと減少しているでしょう。そうした状況のなかで、静岡への移住に興味があって、静岡の企業に転職したいと思ってくれる人をどれだけ増やすことができるかが、重要なポイントだと考えています。

弊社は創業して4期目となりますが、「静岡県内にいい求人があったら転職したい、移住もしてみたい」と考えている方の登録が増えてきています。しかし、転職活動中は静岡だけでなく都内の求人も並行してチェックしているのが実情です。

地方人口が減少している中で、静岡への移住転職者を増やすためには、いま以上に静岡県内企業の魅力を、全国に向けて発信しなければいけません。この点に注力していけば、私たちのサービスに賛同してくれる企業や、転職希望者はもっと増え、その結果、必然的に自社の実績も積み上がってくるはずだと考えています。

編集後記

終始、笑顔でインタビューに応えられた酒井社長。言葉の端々から感じられたのは、あふれんばかりの「静岡愛」だ。起業し、家族とともに地元・静岡へ戻ったことで、仕事も子育てものびのび楽しむことができ、移住転職希望者にとって理想的な生活を自ら実践しているようだ。意欲ある県内の企業とタッグを組んで、これからもますます静岡のビジネス界を盛り上げてほしい。

酒井優一/静岡県静岡市葵区出身。静岡県立静岡高等学校、東京学芸大学卒業後、株式会社キャリアデザインセンター入社。営業マネージャー、新規事業立ち上げを経て、株式会社LiB(リブ)創業に携わり、人材紹介事業の立ち上げに参画。これまで、大手からスタートアップまで幅広い企業に対する採用支援、キャリアアドバイザーとして延べ2,000名の転職支援に携わる。2021年9月、静岡特化型移住転職エージェント、株式会社TurnX(ターンエックス)設立。自らも2023年に家族(妻、子2人)で静岡へUターン移住。