
マリオット・インターナショナルと連携したホテル「フォーポイント フレックス by シェラトン」を、大都市や中核都市を中心に展開している株式会社K+ホスピタリティマネジメント。同社を率いるのは、外資系ホテルで30年以上の経験を積み、2024年に代表取締役社長となった江上正巳氏だ。同氏に、現職に辿り着くまでの道のりや同社の強み、今後のビジョンなどを聞いた。
「1番になる」を目標に掲げ、いちバーテンダーからホテル運営会社の社長へ
ーーどのようなキャリアからスタートしましたか。
江上正巳:
高校卒業後、大阪ヒルトンに就職しバーテンダーの仕事に就きました。これが、私のキャリアのスタート地点です。もともと私は「1番」という言葉が好きで、「この会社で1番になりたい」と思いながら仕事に向き合っていました。
しかし、目標は立てたものの、どのようにすれば1番になれるのかが分かりません。そこで、当時ホテルでトップのポジションにいたフランス出身の総支配人に「あなたの椅子に座るには、どうすれば良い?」と聞くことにしたのです。質問をした時、そのフランス人は「何を言っているんだ」と笑っていたのですが、その目標を達成するために重要な3つのヒントを教えてくれました。それは、ヨーロッパで修業すること、英語を学ぶこと、大学などの高等教育機関で学び続けることです。
その話を聞いた私は「それなら、ヨーロッパのヒルトンで働きながら、現地の学校に通えば良いのではないか」と思い、ロンドンのヒルトンで働きたいと希望を出しました。会社からは「面白いやつだ」と思ってもらえたようで、それから3年7か月後、ロンドンのヒルトンで仕事の空きが出たため、渡英が決まりました。
ーーその後、どういった流れで貴社の社長に就任することになったのでしょうか。
江上正巳:
ロンドンへ渡った後は、欧州のヒルトンで働きながら夜間学校に通い、英語も話せるようになりました。私は、ヒルトン大阪でフランス人上司に言われた3つのことを達成したのです。
ただ、ロンドンや欧州ではどうしても「日本語を話せるスタッフ」という扱いを受けてしまいます。この「日本人」というラベルがなくても活躍できるようになりたいと思い、日本人が少ない地域で仕事をすれば日本人相手のお仕事も減るのではと考え、中近東のホテルで経験を積むことにしたのです。
さまざまな国のホテルで要職を務め、最終的には11か国で経験を積み、帰国しました。日本でも多くのホテルの運営を任され、2024年にヘッドハンティングされる形で弊社の代表取締役社長に就任した次第です。
社長就任を決めたのは、株式会社K+ホスピタリティマネジメントの「日本と海外の両方のお客様に喜んでもらえるサービスを提供しながら、会社をもっと成長させてプロ集団として育て、日本一のホテルオペレーターになる」という考えに共感したからです。
マリオットブランドとして、厳しい基準に則ってホテルを運営している点が強み

ーー貴社のホテルの強みはどういった点にありますか。
江上正巳:
14のホテルを一度にリブランディングしたこと、着実にホテル数が増えていること、国内主要都市をカバーできている事、高いスタンダードとブランド力があることなどが、弊社の特筆すべき点であり強みでもあります。ホテル数に関しては、東京や大阪などの主要都市を中心に数を増やしていきたいと考えています。
また、弊社はマリオットブランドのホテルを運営していることから、欧米の非常に厳しい基準に従ってホテルを運営し、サービスを提供しています。そのため、お客様も弊社のホテルでの滞在に安心感を覚え、信頼を寄せてくださっています。
ーー代表として意識している考えを教えてください。
江上正巳:
最も意識しているのは、従業員やお客様など周りの人を大切にすることです。ホテル業界は人が中心ですので、働きやすい環境をつくり、楽しんで仕事をしてもらい、成長の機会を与えることで彼らが幸せになる。その結果としてお客様の満足度も上がり、売上高も向上すると思っています。
長いキャリアの中でいろいろな経験を積ませていただき、お客様や従業員の気持ちを理解できるようになりました。他者を理解できる自分になれたことを非常に嬉しく思っており、このことはホテル経営にはとても重要な事だと考えます。
総支配人など、若いうちから責任ある仕事ができるのがホテル業の魅力
ーー今後のビジョンを聞かせてください。
江上正巳:
ホテルの店舗を増やしたいですね。店舗数が増えると多くの人の雇用が可能となり、社会にも貢献できます。同時に、社内の有能でやる気のあるスタッフに様々なチャンスや経験を積んでもらえる機会が生み出せます。また、サービスの向上を目的にホテル運営面に好影響を与えるような投資もどんどんしやすくなるため、お客様にもより良いサービスをご提供でき、さらなる売上高拡大を実現できると考えています。
また、国内に多くのホテルを展開できれば、ホテルを全国展開する信頼度の高い会社として弊社のバリューは向上し、お客様が弊社に抱く印象も今よりさらに好意的なものに変わってくると思っています。
その一方で、店舗数が増えるほど厳しい目で見られるようにもなると思うので、社内で切磋琢磨しながらサービス面を向上させていきたいです。
ーー最後に、社会で活躍する若手人材にメッセージをお願いします。
江上正巳:
ホテル業というと、厳しくつらい仕事というイメージを持たれる方が多いかもしれません。しかしそのイメージは昔のもので、実際のホテルの仕事は、人を喜ばせることができる楽しいものです。
また、若いうちから責任のある仕事に就いたり、総支配人になっている方も多くいます。若いうちに上の役職に就き、成功したいと考える方にとってはとても夢のある仕事でもあります。ホテル業を営む弊社としても、この仕事に興味を持ってくださる方が増え、業界が盛り上がることを願っています。
編集後記
「多くの人に、ホテルの仕事は楽しいものだと知ってもらいたい」という江上社長の言葉からは、ホテル業界で長年経験を積んできた同氏の、この仕事に対する誇りが感じられた。
まだ成長途中にある、株式会社K+ホスピタリティマネジメント。同社のホテルが大都市や中核都市以外にも広がり、多くの人のホテルステイをより豊かなものにしてくれることに期待したい。

江上正巳/1970年生まれ。大阪の高校を卒業後、大阪ヒルトンでバーテンダーとしてキャリアをスタート。その後、欧州のヒルトンを皮切りに世界10か国(欧州、中近東、中央アジア、東南アジア、インド洋、アフリカ)のLuxury、Deluxe Hotelで要職を歴任。直近ではケンピンスキーホテルズのJordan、Seychellesで総支配人を歴任。その後Agora Hospitality Groupで最高執行責任者を務め、2024年8月より現職。グリニッジ・スクール・オブ・マネジメント(イギリス)、経営学士「Postgraduate Diploma in Management Study (DMS)」、ネオマ・ビジネス・スクール(フランス)、経営学修士「Postgraduate Executive Master of Business Administration (EMBA)」を取得。