※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

足場工事業を中心に、サッカークラブやフィットネスジムなどの運営を展開している株式会社BRAST。同社は代表取締役の柏原英輝氏が、前職からの独立を機に立ち上げた会社だ。

なぜ同社は足場工事業と関係が薄い事業にも取り組んでいるのだろうか。これらを紐解くカギとなる柏原社長の人柄を軸に、同社の設立の経緯と目指す将来像などを聞いた。

リーマン・ショックのあおりを受けて前職の社員たちと独立。絆に支えられた創業当時

ーー貴社を設立した経緯をお聞かせください。

柏原英輝:
BRASTは前の職場で一緒だった社員たちと立ち上げた会社です。以前私は大手の建設機器レンタル会社に勤めていたのですが、同社はリーマン・ショックのときに経営が大きく悪化し、事業を売却せざるを得ない状況にまで追い込まれました。

そんなとき私が持ち掛けられたのが、所属していた事業部を5,000万円で買ってくれないかという話でした。さすがに一社員の身で対応できる話ではなかったのでこの提案は断り、私は同じ事業部の社員たちと会社を後にしてBRASTを立ち上げる道を歩むことにしたのです。

創業当時は本当にやっていけるのか不安でしたが、前の会社の顧客が多くついてきてくれたこともあって、なんとかスタートを切ることができました。その後も多くの方のご縁に支えられてここまで成長することができました。今後は、その縁に報いる気持ちで、お客様や社員、さらにその家族が幸せに暮らせるように会社を運営していく所存です。

ーー貴社の設立に関して、特に印象に残っているエピソードはありますか?

柏原英輝:
資材の調達に苦労したことが印象に残っています。創業したときはとにかく忙しく、当時の記憶があまり残っていないほどあちこちを走り回っていましたね。そのうえ、実績不足で銀行から融資が受けられない状態だったため、資材を集めることにすら不安を抱いていました。

そんな弊社が事業を続けられたのは、親切にしてくださったメーカー様のおかげです。創業したばかりの弊社にいろいろと融通してくださったので、資材の都合をつけることができ、苦しかったスタート直後を乗り切ることができました。

この経験から実感したのは、人と人のつながりの大切さです。私は何か特別な能力や資格を持っているわけではありませんが、そこにある絆を大切にすることはできます。顧客とも社員ともこの絆を大切にして、相手の期待に応えられるように日々努力しています。

さまざまな業種に取り組む理由は、収益の積み上げとリスクの分散

ーー貴社の事業内容と強みを教えてください。

柏原英輝:
弊社の主な事業内容は足場工事業ですが、それ以外にもサッカークラブ、フィットネスジム、幼稚園や飲食店の運営なども手がけています。

弊社の強みは、このような経営の多角性にあります。一つの業種に特化すると、その業界での競争に勝ち抜くために技術やサービスを磨いていかなければなりません。しかし、これは簡単なことではないのです。

そこで、別事業を立ち上げることで全体の収益を増やしていく手法を取っています。さらにリスクの分散にもつながりますし、それぞれの分野で実績を積み上げていけば、幅広い分野に弊社の名前を広げることも可能です。

弊社の事業は地域性が高いものが多いので、さまざまな角度から地域の方々と信頼を構築していければ、地域に必要とされる企業として成長を続けられると考えています。

足場工事業という柱を強固にしつつ、新規事業で地域住民との信頼構築を目指す

ーー貴社をさらに成長させていくために、注力したいテーマは何でしょうか。

柏原英輝:
注力していく必要があると感じているのが、幼稚園とサッカークラブ、フィットネスジムの3事業です。足場工事業と比べて十分なノウハウが蓄積されていないので、課題をクリアしながら安定した運営を目指さねばなりません。

たとえば幼稚園事業やフィットネスジム事業では、保護者や地域社会との良好な関係を築くこと、そして事業の採算性を確保することが優先事項です。早期に地域社会の一員として信頼を得るために、地域の皆さんのニーズに応えるサービスをしっかりと提供していきたいと思っています。

サッカークラブの運営はこの課題に加えて、スポンサー企業との信頼関係を深めていくことも必要です。そこで、スポンサー企業をサッカークラブのイベントに招待し、地域とのつながりを深めていければと思っています。

ーー今後、貴社をどのように成長させていきたいとお考えですか?

柏原英輝:
まずは、弊社の土台となっている足場工事業に力を入れ、より幅広い分野の仕事を取れるように努力していきたいと考えています。そのために、千葉県の地元のゼネコンを中心に、東京都や神奈川県など、東京湾沿岸のエリアに対してアピールを強めていきたい考えです。

その他の事業については、今後も引き続き多角的な事業運営に取り組み、さまざまな角度から地域社会に貢献していきたいと考えています。地域の方との絆を深めながら弊社の知名度や独自性を高めていき、会社全体を強化していく方針です。

地域で弊社を中心としたコミュニティが構築できれば、そこから地域向けの新たな事業をスタートすることもできるでしょう。

将来は、地域社会との結びつきを一層深めて、地域全体の発展に貢献できる会社になりたいと思っています。弊社のさまざまな事業が何らかの形で地域に還元され、地域と一体になって成長していけたら最高に嬉しいですね。

編集後記

BRASTという会社と同社が手掛ける多角的な事業は、社員のため、地域のためという柏原社長の優しさから生まれたものだ。幼稚園やサッカークラブなどは、利用者と接することで同社の思いが伝わりやすい事業である。そのため、利用者が増えるほどに地元思いの企業として知られることだろう。優しさを事業に昇華できる同社にこそ、地域と共に成長する企業の資質があるといえるのではないだろうか。

柏原英輝/大手建設機器レンタル会社に勤務していたが、リーマン・ショックの影響による所属部門の売却を機に独立。2010年に足場工事業を軸とした株式会社BRASTを設立。ドローンスクール運営・ダイビング事業などの多事業展開を図り成果を上げる。2019年年にはサッカースクール「ACミランアカデミー千葉」の運営を始め、さらなる事業展開を進めている。