※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

ブランド品や古着の魅力に惹かれ、リユース業界に飛び込んだ佐藤有亮氏。入社から数年で「古美術部」を立ち上げ、独立を経て株式会社緑和堂を設立した。現在は全国8拠点で展開し、高い査定力と「誰にでも開かれた店舗」を強みに、骨董品買取のハードルを下げながら事業を拡大中。時代を超えて受け継がれる品々に新たな価値を見出す、その姿勢の根底にあるものとは何か、佐藤氏に話をうかがった。

リユースへの関心からエコリングへ入社、古美術事業をゼロから構築

ーー入社のきっかけについて教えてください。

佐藤有亮:
私は埼玉県の出身で、学生の頃から古着やブランド品など、リユースに興味がありました。中古ショップをのぞいたり、掘り出し物を探したりするのが好きで、そうした体験を通して「リユースの仕事は面白そうだ」と思うようになりました。そんな中、2014年に株式会社エコリングへ入社し、最初は販売部に配属されました。

ーー販売部では、どのような業務を担当されていたのですか。

佐藤有亮:
販売チャネルの拡大です。配属された販売部は、ブランド品ではなく、国内ではあまり需要のないような品物を主に扱う部署だったので、たとえば日本ではなかなか売れないアイテムを、どう売るかを考える日々でしたね。そのため、海外への輸出ルートを持つ業者を探したり、国内にいる海外バイヤーとコンタクトを取ったり、業者間オークションに参加したりと、販売のチャネルを広げることに注力したのです。この経験が、後に美術品という新たなジャンルに目を向けるきっかけにもなりました。

ーー美術品に特化した部署「古美術部」は、どのように立ち上がったのですか。

佐藤有亮:
社内で新規事業の立ち上げ希望者の募集があったことがきっかけです。このことを知り、私は迷わず手を挙げました。もともと美術や骨董の世界にも少なからず興味があったので、しっかりと収益が出せるかを見極めながら、少しずつ動き始めました。はじめは部署という形でしたが、収益化に成功し、設立から2年ほどで分社化され、2019年に「緑和堂」を創業することができたのです。

ーー緑和堂ならではの特徴とは何でしょうか。

佐藤有亮:
ジャンルを絞らず、書画・陶磁器・工芸品など幅広く査定できる体制を整えていることが特徴です。京都にはたくさんの骨董店がありますが、多くは「絵画専門」「刀剣専門」といった形で、扱うジャンルが限定されています。一方で、一般のお客様からは「とにかくまとめて見てほしい」というニーズが多く寄せられます。そうした声に応えるべく、さまざまなジャンルに対応できる形にした次第です。

また、査定にあたっては国内の相場だけでなく、海外の市場動向も踏まえて価値を見極めています。グローバルな視点で価格を判断できる点も、お客様にご満足いただける理由のひとつだと思います。

誰もが入りやすく、全国で一貫した高水準のサービスを

ーー出店当初は、どのような苦労がありましたか。

佐藤有亮:
一番苦労したのは、お客様からの「入りにくい」という声にどのように対応すべきか、という点です。骨董品店というと、どうしても敷居が高く見えてしまいます。ですから、こけしのような民芸品も歓迎です、と明示したり、「査定料無料」といった表現を徹底したりして、少しでも足を運びやすい雰囲気づくりを心がけました。

現在、緑和堂は全国に8拠点を構えており、すべて直営店で、どの地域でも同水準のサービスが提供できる体制を整えています。また、グループ内で鑑定から販売まで完結する体制を整えているため、中間マージンがかかりません。相場を熟知したうえで仕入れ・販売まで担える強みが、収益性を高める構造になっています。

こうした体制と専門性の高さから、同業他社からの鑑定依頼や相談を受けることもあり、業界内でも一定の信頼と評価を獲得しています。あらゆるジャンルに対応できる幅広さと、精度の高い目利き力が、緑和堂の大きな強みです。

ーー社員教育にもかなり力を入れているとお聞きしました。

佐藤有亮:
はい。この業界は職人気質が根強く、マニュアルのない現場任せの状態が当たり前という風潮もまだあります。だからこそ弊社では、接客や査定の流れを動画などで可視化し、誰でも一貫した品質で対応できる体制づくりに取り組んでいます。全くの未経験からでも、1年程度で独り立ちできるよう、知識・技術の標準化を進めています。

実際、未経験で入社した社員が1年半ほどで店長を任され、地域の拠点をリードするようになったケースもあります。社員一人ひとりがスピード感を持って成長し、裁量の大きなポジションで活躍できるのも、緑和堂ならではの働き方だと思います。現場の声や挑戦を柔軟に受け止められる風土が、組織全体の底上げにもつながっていると感じています。

ーー今後、どのような未来を見据えていますか。

佐藤有亮:
5年以内には全国に20店舗へと展開を広げ、売上高30億円を目指しています。そして10年後には、toC向けの販売店舗を展開する方針です。さらに海外進出も実現したいですね。骨董品を扱う総合商社のような存在へと成長し、日本の美術文化を次の世代へつなぐ架け橋になっていけたらと思っています。

編集後記

株式会社エコリングへの入社を皮切りに、美術骨董品という専門性の高い領域で新たな価値の循環を生み出してきた佐藤氏。買取から販売、社員教育まで一貫して現場を大切にしながら、全国への展開と人材育成を着実に進めている。社名「緑和堂」に込められたのは、「緑=自然」と「和=循環」の想い。時代を超えて受け継がれてきた品々を、次の世代へつなげていくという信念が、社名にも体現されていた。

佐藤有亮/1992年埼玉県生まれ。2014年、株式会社エコリングに入社し、販売企画部にてリユース品の販路開拓を担当。2017年頃より古美術部門を立ち上げ、事業化に成功。2019年12月に株式会社緑和堂を創業し、社内の古美術部門を独立・法人化。2025年現在、全国に8店舗を展開する。