※本ページ内の情報は2025年7月時点のものです。

店頭での試食販売を通じて商品の魅力を伝え、消費者とメーカーをつなぐ株式会社クリッククローバー。消費者の正直な声を広く集め、メーカーの販促やマーケティングに活かすアプローチで業界内での存在感を高めている。社員の適材適所の配置と丁寧なサポート体制を整え、質の高いサービスを提供し続ける同社の代表取締役である倉田晃揮氏に話を聞いた。

困難な状況を打開した経験が独立を後押しした

ーー社長のこれまでの経歴をお聞かせください。

倉田晃揮:
私は友人の誘いを受けて、新卒で不動産系のベンチャー企業に飛び込みました。その会社は設立1年目だったのでさまざまな業務があり、忙しく働いていましたが、弊社と同じ事業の会社をM&Aしたタイミングでそちらに出向し、営業に携わるようになったのです。

その後、福岡の拠点に配属されたのですが、そこは社員が1人で運営していた事業所で赤字続きの状態でした。「この拠点を黒字化してほしい」と言われたものの、それまでに3人の方が挑戦して実現できていなかったので頭を抱えましたね。

しかし、結果を出したいという思いが強く、試行錯誤を重ねた結果、3年ほどでなんとか黒字化することができたのです。この経験は、自分にとって大きな自信になりました。

ーーそこから独立に至った経緯を教えてください。

倉田晃揮:
福岡で赤字だった拠点を黒字化できたという実績から、「今度は会社というバックボーンがなくてもできるのではないか」と考え、友人とともに創業に至りました。

創業後は、順調に事業を展開していたのですが、30歳くらいのときに、ふと「先が見えない」と不安を感じたのです。起業前は上司がいる環境でしたが、起業後は全てを自分で決断していかなければなりません。

そこで経営者としての基礎を身につけるために、グロービス経営大学院に通うことにしました。そこで数々の経営者のストーリーや歴史上の人物の考え方に触れたことで、経営に対する視野を広げることができたと感じています。

社員第一の環境づくりで質の高い試食販売サービスを提供

ーー貴社の事業内容と強みについて教えてください。

倉田晃揮:
弊社はメーカーの商品を消費者に直接試していただく、試食販売サービスを主力事業として展開しています。店頭での試食提供を通じて商品の魅力を伝え、販売促進を支援するのが主な業務です。

強みとしては社員を多く採用し、現場に配置していることが挙げられます。これにより、消費者のリアルな声を幅広く収集し、メーカーに提供することができるのです。こうした生の声は非常に貴重で、販促やマーケティングのPDCAサイクルを回していく際の重要な指標となります。

また、社員が気持ちよく働ける環境づくりにも注力していることも強みといえるでしょう。適材適所の人材配置や、社員へのサポート体制を整えることで、お客様に質の高いサービスを提供できていると自負しています。

コロナ禍では売上が3分の1まで減少するという厳しい状況に直面しました。しかし、そのような状況でも社員の雇用を守るため、別の仕事をしてもらうなどできる限りの対応を行いました。その後は、積極的に求人活動を行ったり、待遇を改善したりするなど、社員へのサポートを丁寧に行うことで乗り越えたのです。弊社は単なる人材派遣ではなく、メーカーと消費者をつなぐ重要な役割を担っていると自負しています。

ーー貴社で働く魅力を教えてください。

倉田晃揮:
新たな取り組みにチャレンジできる環境があることですね。ただ作業をこなすだけではなく、挑戦しながらスキルを身につけたい方、自分の考えを仕事に反映したいという思いを持った方には最適な職場だと思います。加えて、経営に近いところで仕事ができることも魅力の一つです。

私と一緒に商談に臨んでいただくこともあり、まさに社長の右腕として活躍できる場があります。自分で考え、裁量を持って仕事に取り組みたい方には、弊社の環境は大きな魅力となるでしょう。

また、ビジネススクールの費用を会社が補助するなど、社員の自己投資やキャリアアップを支援する制度も導入しています。さらに、リフレッシュ休暇の導入も構想中で、長めの休みを取得できるようにすることで、働きやすい環境をつくりたいと考えています。

国内外のシェア拡大で社会に価値を提供し続けていく

ーー今後の展望についてお聞かせください。

倉田晃揮:
まず、国内シェアをさらに拡大していきたいと考えています。弊社は試食販売において丁寧にサービスを提供することで信頼を築いてきましたが、まだ成長の余地は十分にあると感じています。

それと並行して、海外展開にも取り組んでいきたいですね。海外の試食販売にはややカジュアルな印象を持っていますが、それだけに日本の質の高いサービスを導入することで、大きく差別化を図れると考えています。このように国内外で社会に必要とされるサービスを提供し続けることが、弊社の目指す方向性です。

ーー若い世代へメッセージをお願いします。

倉田晃揮:
やりたいことがあったら、まずはチャレンジしてみることをおすすめします。ただし、成果が出るまでには時間がかかるものですから、焦りは禁物です。特に新しいビジネスに取り組みたいと考えている方は、いきなり起業するのではなく、副業から始めてみて軌道に乗ってから独立するという選択肢も検討すると良いでしょう。私自身もさまざまな経験を積み重ねて今の考え方に至りました。みなさんには多くの可能性があります。自分を信じて臆せず挑戦してほしいと思います。

編集後記

インタビュー中、倉田社長の言葉には一貫して「人」への深い配慮が滲んでいた。売上が3分の1に落ち込んだコロナ禍でも社員のサポートを優先した決断は、短期的な収益より長期的な信頼構築を重視する経営哲学の表れだろう。ビジネスの本質は数字だけでは測れないことを改めて教えていただいた。

倉田晃揮/1981年、愛知県生まれ。中部大学卒業。グロービス経営大学院修了。新卒で不動産系ベンチャー企業に就職後、M&Aした企業に出向し、試食販売事業に従事。2009年に友人とともに株式会社クリッククローバーを創業し、2012年から代表取締役に就任。