※本ページ内の情報は2025年7月時点のものです。

近年、建築資材の高騰や人口減少などによって新築住宅の市場が縮小傾向にある一方で、中古物件のリフォームやリノベーションの需要が高まっている。そんな中、デザインにこだわった住宅のリノベーションを手がけて業績を伸ばしているのが、株式会社SHUKEN Reだ。創業者で、代表取締役の新井泰平氏がこだわる「住まい方を提案するリノベーション」とはどのようなものか、その経営哲学に迫った。

単なるリフォームではなく、「住まい方」を提案するドラマチックなリノベーション

ーー貴社の事業について教えてください。

新井泰平:
弊社は中古物件の「リノベーション」を手がけています。「リフォーム」というと、内装を張り替えたり浴室やキッチンを新しくしたりといった部分的な入れ替えが主ですが、「リノベーション」はお客さまの好みや希望に合わせて、住まい方や生活そのものを提案し、住宅や店舗の価値を高めるもの、というのが私たちの考えです。弊社ではそれを「ドラマチック・リノベーション」と謳っています。

ーー社長就任の経緯をお聞かせください。

新井泰平:
私はもともと不動産業界に興味があり、2000年に「株式会社秀建」に入社しました。入社後は施工管理を3年担当し、営業に移りました。そして3年目に私の売上が先輩を超えた頃、新店舗を千葉・浦安に出すことになったのです。

そして、「役員になって浦安の支店長になってほしい」と言われて、2006年に取締役として新店立ち上げの責任者を務めました。その後、肩書が「リフォーム部長」となり、会社の規模拡大に伴い、リフォーム部を分社化することになったのです。そして、2018年に「SHUKEN Re」を設立して、代表に就任しました。

「仕事がない」ときこそ、ビジネスを見直すチャンスだった

ーービジネスのターニングポイントになったのはどのようなことでしたか。

新井泰平:
やはり、リフォーム部長時代に経験したリーマン・ショックですね。店舗のリフォーム依頼が激減してしまいました。そこで、「小規模なリフォームではなく、大型のリノベーション案件を獲得していこう」という方針に切り替えました。受注の件数を減らすかわりに、単価を上げて、効率よくやっていこうという方向性へ転換したのです。

もうひとつは、今の会社を立ち上げて間もない頃のコロナ禍です。お客さまのお家にも入れない中で、遠隔で仕事をするという働き方が生まれました。それまでは、リフォーム業でリモートワークは不可能だと思っていましたが、実際にやってみたらできたのです。その頃から、「社員が働きやすい環境を整えなければ」と考えるようになりましたね。いずれも「仕事がない」ということがターニングポイントでした。

ーー貴社の強みも教えてください。

新井泰平:
提案から施工まで一気通貫で行っていることです。職人さんは協力企業の方ですが、それ以外はすべて弊社の社員が担当しています。お客さまの要望が現場までしっかりと伝わり、イメージ通りのリノベーションを実現しています。

また、グループ会社で家具を製作していたり、サウナを扱っていたりすることも強みでしょう。造作家具や造作キッチン、住宅用サウナなども提案することが可能です。

もちろん、完成後も、公式のLINEアカウントにアフターメンテナンスの窓口を設けて、しっかりサポートしていますよ。

満足を超える「感動」を届け、顧客の心を掴みたい

ーー今後の展望をお聞かせください。

新井泰平:
やはり「いいものをつくっていくこと」が第一だと思っています。競合がさまざまある中で、今よりさらに質の高いデザインやサービスを提供し、「SHUKEN Reでリノベーションしたい」「SHUKEN Reでしかリノベーションしない」というお客さまを増やしていきたいですね。それに伴い、社員の業務効率も上げ、給与も上がる好循環を生み出したいと思っています。

「SHUKENグループ」では、「満足を超えた『感動』を」というスローガンを掲げています。お客さまに「満足」だけではなく、「感動」していただくことで、「リノベーションしてよかった、誰かにこの感動を伝えたい、周りにも紹介したい」と感じさせるような成果を目指しています。これからも、この言葉を大切にしていきたいですね。

ーーそのための課題はありますか。

新井泰平:
まずは効率改善です。現場の仕事のやり方や管理方法などは、私が現場にいた頃とあまり変わっていません。図面の書き方や見積もりのつくり方など、今も時間がかかりすぎています。その方法が正しいのかを改めて見直し、DXツールなども導入していく必要があるでしょう。

また、お客さま自身がリノベーションのプランを決めることもいいですが、弊社ではプランナーが決めたものを自信を持って提案し、お客さまに納得して購入していただけることを目指しています。そのためには、営業のスキルを上げる必要があり、具体的にはプレゼンテーション力を磨くことや3Dパースによってデザイン性をアピールすることなどに力を入れているところです。

実はこれらの課題を解決するために、来年度の一年間は会社の体制を整える期間にしようと考えています。これまで休暇制度を充実させたり、人事評価の項目に数字だけではなく言動や意識の持ち方なども取り入れたりと、働きやすい環境づくりに取り組んできました。次は管理職の業務を整理して負荷を軽くし、若手が「管理職になりたい」と思えるような組織づくりを目指します。

編集後記

新築住宅市場が高騰を続ける中、リノベーションは「理想の家」を手に入れるための賢い選択肢となった。新井社長は、多くの人が抱く夢に誠実に向き合い、「家」を超えた「理想の生活」を提供しようとしている。さらに、これまでのその取り組みをDXによって効率化していこうとするその意気込みに、今後ますます注目したい。

新井泰平/1977年、千葉県生まれ。大学卒業後の2000年、株式会社秀建に入社。施工管理、営業を経て2006年には取締役に就任。リフォーム部部長を務めたのち、2018年にリフォーム部を分社しSHUKENReを設立、代表取締役に就任。