※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

総合型スポーツクラブを関西中心に展開し、40年以上にわたり地域に根ざした健康づくりを支えるグンゼスポーツ株式会社。「健康」と「教育」を事業の柱に据え、フィットネスの枠を超えた社会課題の解決を目指している。

コロナ禍の厳しい環境下で、事業のかじ取りを託されたのが、代表取締役社長の西村仁宏氏だ。グンゼグループの理念を胸に、人と人とのつながりを重視したサービスで新たな価値創造を目指す同氏に、事業の展望と経営にかける思いを聞いた。

逆境から始まったトップの挑戦

ーー社長のこれまでのご経歴をお聞かせください。

西村仁宏:
大学では高分子化学を専攻しており、その知識を活かせると考えてグンゼに入社しました。最初はプラスチック事業の営業職に就き、新商品の市場開拓など新規事業に近い業務に長く携わりましたね。

その後、商品の販売責任者として事業全体を統括し、本社の経営戦略室に異動後はグループ全体の経営戦略策定に従事。そういったキャリアを歩み、2020年にグンゼスポーツの社長に就任しました。

ーー社長に就任されて大変だったことはありますか。

西村仁宏:
2020年5月、緊急事態宣言によって店舗が全く営業していないという、極めて厳しい状態での就任でした。まず課題となったのは、いかにして営業を再開し事業を立て直すかという点です。その際、会員様の安全はもとより社員の安全を最優先し、安心してサービスを提供できる体制を整えることに注力しました。

社員の健康管理の徹底やリモートワーク導入に加え、サービス面ではオンラインレッスンも開始。インストラクターの手配など難しい面もありましたが、一つずつ課題を解決しながら進めていきました。

事業の3本柱と40年の信頼

ーー社長が大切にされている考えは何でしょうか。

西村仁宏:
グンゼグループの経営理念の一つである「共存共栄」の考えには深く共感しています。営業を経験する中で、双方にメリットがある提案こそが重要だと実感したからです。今後も、会員様、社員、会社全体にとってバランスの取れた関係を築いていきたいですね。

また、個人の信条として「仁者は憂えず」という言葉を大切にしています。しっかりと準備を重ねて正しい道を進めば、何も心配することはない、という意味で捉えています。

ーーあらためて、貴社の事業内容について教えていただけますか。

西村仁宏:
主な事業は、フィットネスクラブを運営するフィットネス事業、スイミングスクールなどを手掛けるスクール事業、そしてカンボジアで店舗を展開する海外事業という3つの柱で成り立っています。

フィットネス事業は事業規模が最も大きく、インストラクターの質や会員様とのコミュニケーションを重視しているのが特徴です。スクール事業は約8割がスイミングスクールで、お子様の成長に合わせた指導により信頼関係を築いています。海外事業はカンボジアで展開し、主に富裕層の方々へ日本式のきめ細かなサービスを提供している状況です。

これらに加え、新規サービスの創出にも力を入れています。私たちの強みは、40年以上にわたり地域に根ざしてきた歴史と信頼、そして「グンゼ」ブランドへの信頼感と、社内で育成された人材にあると考えています。

お客様との関係強化で「なくてはならない存在」へ

ーーお客様との関わりで大切にされていることは何ですか。

西村仁宏:
コロナ禍によって生じたお客様との距離を元に戻し、さらに強固な関係を築いていくことを重視しています。最近、ある会員様からお手紙をいただく機会がありました。そこには、社員が会員様の体調の変化に気づき、お声がけしたことが病気の早期治療につながった、という感謝の言葉が綴られていたのです。こうした心温まるやりとりが生まれるサービスを大切にし、お客様の生活にとって「なくてはならない存在」を目指します。

ーー新規事業や新サービスについてもお聞かせください。

西村仁宏:
学校のプール授業運営の民間委託に注力しています。先生方の負担軽減や施設老朽化への対策といった背景から、弊社の施設と専門インストラクターによる水泳指導は大変ご好評をいただいています。

また、高齢者の心身の活力低下を防ぐフレイル予防支援も重要な取り組みの一つです。地域の施設での健康教室の実施や、弊社施設のご利用も推進しています。これらは会費以外の、新たな収入源にもなっています。

未来を見据え、健康と教育で社会に応える

ーー今後の展望についてお聞かせください。

西村仁宏:
既存のフィットネス事業を「健康事業」、スクール事業を「教育事業」と捉え、事業領域を拡大していく方針です。地域社会の健康増進や教育に貢献できる事業展開を目指し、特に中高年層における健康寿命の延伸につながるサービスを強化したいと考えています。

ーー最後に、読者の皆様へメッセージをお願いします。

西村仁宏:
グンゼスポーツは、フィットネスクラブの枠にとどまりません。少子高齢化が進む中での「教育」と「健康」という社会課題の解決に貢献したいと考えています。子どもたちの健全な育成を支援する教育事業、そして地域の方々の健康寿命延伸をサポートする健康事業を、地域社会とともに発展させていきたいですね。そんな私たちの思いに共感し、力を貸してくださる方にぜひ仲間入りしていただきたいと願っています。

編集後記

プラスチック製品の営業からスポーツクラブの経営へと、かじを切った西村社長。その根底には「共存共栄」と「仁者は憂えず」という揺るぎない信念があった。コロナ禍の逆風を乗り越え、人と人とのつながりを重視するサービスを磨き上げる。フィットネスの枠を超え、教育や健康という新たな領域で社会に貢献する同社の挑戦に、今後も注目したい。

西村仁宏/1965年、京都府生まれ。同志社大学卒業後、1989年にグンゼ株式会社へ入社。プラスチック製品の営業や経営戦略室を経験し、2020年にグンゼスポーツ株式会社の代表取締役社長に就任。子育て支援活動にも力を注いでいる。