※本ページ内の情報は2025年7月時点のものです。

千葉市に本社を置く株式会社ストラクスは、建物のリニューアルをメイン事業とし、戸建住宅や事務所、店舗、工場などあらゆる建築物の改修・新築工事を手がけている。1995年の創業以来、誠実な仕事ぶりで順調に業績を伸ばし、2024年には売上高33億円を計上するまで成長してきた。

NPO法人への支援など社会貢献活動にも力を入れている同社の代表取締役の山本克己氏に経営の理念と志について聞いた。

信条を曲げるより独立することを選んで起業

ーーはじめに起業したきっかけについて教えてください。

山本克己:
大学卒業後は、塗料など建築資材を扱う商社に入社したのですが、職人さんが足りなくなってしまい、私も現場に出るようになりました。改修工事やリノベーションを請け負うようになり、やがては営業部長となり、営業から現場監督まで一通りの経験を積みました。

一方でサラリーマンをしていると自分の信条に反するようなことも多々あります。最初は会社に勤め続けるつもりでしたが、そのうち「信条を破るくらいなら独り立ちしたほうがいい」と考えるようになりました。

そして自分の家族を養うくらいのことはできるだろうと、仕事仲間だった現在の専務と一緒に始めたのが株式会社ストラクスです。

ーー起業後はどのように事業化していきましたか?

山本克己:
自分なりに新しい市場を開拓するつもりでしたが、現実はなかなか簡単ではなく、やはり旧知の取引先に頼らざるを得ませんでした。建築業界は現場の所長が社長のようなもので、仕事の受発注面でも強い決裁権限を持っています。

そのため、以前からお付き合いのある現場所長に20万円からの小さい仕事をいただいたり、前職の職人さんから紹介を受けたりしながら、地道にコツコツと仕事を増やしていきました。

つくづく感じたのは、人とのご縁のありがたさです。会社を立ち上げたときは準備万全とはいえず、大学の先輩や旧知の方々の助けが必要でした。そうした人々の支えのおかげで無事に事業化を進められたことは大きかったです。

現在の「人と人との懸け橋となり、価値ある未来を創造する」という経営理念も、その当時のことと深く関係しています。

会社の業績より社員の収入を増やし社会貢献することが重要

ーー組織のトップとして大切にしていることはなんですか?

山本克己:
経営ビジョンを見失わないことです。そのためにも、右と左のポケットをしっかり分けること、つまり会社のお金を公私混同しないことを大切にしています。

なぜなら、私は会社のお金は自分たちが稼いだものというよりも、社会からお預かりしているお金と考えているからです。企業は利益追求だけでなく、人の役に立ってこその組織です。お客様に喜ばれる仕事をし、存在意義と価値を上げていくことが企業活動の真の趣旨、という理念が念頭にあります。

ーー社内コミュニケーションに対する考え方を教えてください。

山本克己:
弊社は社員同士の横のつながりを大事にしています。最近は飲み会も少なくなり、社員旅行を実施しない会社も多いでしょう。しかし、普段は作業着で顔を合わせている社員同士が、私服で会うと印象が変わり、新鮮な発見もあります。そんなちょっとした変化が、相手をもっと知るきっかけにもなります。だからこそ、社員旅行を奨励したいですね。

みんなでゲームをしたり他愛のない話をしたりして、普段にはない交流の機会は貴重です。そうした旅行や食事会のようなイベントが、仕事を円滑に進めるためのコミュニケーションにつながると考えています。

ーー地域社会との共生を目指しているとお聞きしました。

山本克己:
地域の一員として、農業分野で社会貢献活動に取り組んでいます。弊社は比較的若い会社なので、設立以来まだ定年退職者を出していません。「ゆりかごから墓場まで」ではないですが、農地運営も始めて、希望する社員には終身安心して働ける環境を整えています。

たとえばイチゴ農園で定年退職者に無理なく働いてもらうことで、同時に地域とのコミュニケーションを図る一石二鳥の取り組みとして今後とも注力していく方針です。

ーー現在と今後取り組むテーマについて教えてください。

山本克己:
工事の管理システムが古くなっているため、その改善や、勤怠システムのソフトの刷新など、社内の広い範囲でDXを進めています。

業務のIT化の一方で長年、社員の平均年収を1000万円にする目標をかかげてきました。大企業にも負けないこの目標を打ち出したのは、実は20年前です。みんなで協力して効率よく業務に取り組み、しっかり利益が出せる会社に育てていけば、近いうちに実現してもなんら不思議はないと思っています。

編集後記

若い経営者の中には、「少し利益が出て目標を達成しただけで満足してしまう人がいる」と懸念を示した山本社長。そうではなく、「自らの経営理念や人生の軸をしっかりと貫き、語れる経験を重ねることこそが理想的」と、ビジョンを持ち続けることの重要性を強調した。

山本社長からは一本筋の通った力強い経営者意識が伝わると同時に、高い道徳観とあふれるほどの利他の精神がうかがえた。

山本克己/1956年秋田県生まれ、専修大学卒業。1995年、株式会社ストラクスを創業し、改修工事を専門に事業を展開。ゼネコンや地元工務店との取引を拡大し、業績を順調に伸ばす。1997年に法人化し、現在では年商33億円を達成。経営理念「人と人との懸け橋となり、価値ある未来を創造する」を実践し、社員とともにさらなる成長を目指している。