※本ページ内の情報は2025年7月時点のものです。

大阪府門真市に本店を置く日匠テック株式会社。関西電力株式会社の発足当時から関連工事を受注し続けているほか、官公庁工事など多様な現場に対応することで、多くの信頼を集めてきた総合建設業者だ。

その長い歴史を尊重しつつも、他社との差別化や、組織を盤石なものにするための人材育成や福利厚生の充実に取り組んでいるのが、代表取締役である尾松慎介氏だ。尾松社長が目指す日匠テックの未来、そしてそのための計画とは一体どのようなものなのか、話を聞いた。

父のアドバイスを受け建築の道へ。設計と営業の知識があるからこそできることとは

ーー尾松社長の経歴をお聞かせください。

尾松慎介:
私が建築の世界に入ったのは、父から得意分野の数学や美術を活かせる進路を勧められたためです。私は自動車業界に興味がありましたが、父の助言を受けて進路を再検討し、大阪工業大学の建築学科に進むことにしたのです。

大学卒業後はお客様と直接やりとりができる仕事を求めて、営業と設計を兼ねた「営業設計部」という部署がある大阪パナホームに入社しました。ここではお客様とお話をしながら建物のプランを考える仕事に携わり、熱心にこの仕事に取り組んでいました。

そして入社して約7年が経過したころ、妻となる女性と出会い、進路が変わることになります。

当時私は会社を率いる存在になりたいとも思っていました。そこで日匠テックの前社長だった妻の父に、会社を継がせてもらえないかと申し出たのです。下積みのためにまずは社員として入社しました。それからは、前職で磨いた営業力で新規案件の獲得に励み、さらに関西電力との関係強化にも力を入れることで、少しずつ組織規模を拡大してきました。

私が社長に就任したのは、社員として5年ほど働いた2006年のことです。もうすぐ就任して20年になりますが、これからも会社をさらなる成長に導く積極的な姿勢は崩さないつもりです。

ーー尾松社長が仕事をする上で大切にしていることは何でしょうか?

尾松慎介:
建物を設計するときに、お客様の立場から考えることを徹底することです。これは営業設計時代から変わらず守り続けていることですが、設計者が良いと思う設計と、実際にお客様にとって使いやすい設計は違います。自分自身がお客様になったつもりで設計をしてこそ、真に使い勝手が良い仕上がりを実現することができるのです。

また、仕事をする上では、仕事を前に進めるタイミングを見極め、ときに勢いに乗ることが大切だと思っています。これは、私が営業設計から営業職になったばかりのころに、当時の上司から学んだことです。

当時の上司は、利益よりも先ずは行動して結果を出すべきという考えの持ち主でした。私は上司の教えに従ってとにかく動き、おかげで1カ月目から契約を取ることに成功しました。これまで成長し続けられているのは、たくさんの教えと経験があったからだと思います。

会社の強みと言えるほどのチームワークを生み出している、手厚い育成環境

ーー貴社ならではの強みを教えてください。

尾松慎介:
弊社の強みは、社員が皆、誠実で丁寧な仕事をすることです。社員同士の信頼関係も強く、仕事がスムーズで、楽しく心地の良い職場環境であると思います。アットホームで離職率も低く、転職した社員が戻ってくることや、同僚を誘って入社してくることもあります。

これらの強みを支えているのが、弊社が力を入れているきめ細やかな教育環境だといえるでしょう。大切なのは、頑張れる環境づくりと努力が報われる制度の両立です。そのためにも、若手社員が相談しやすい雰囲気づくりや、努力を賞与や昇給で積極的に還元していく態勢整備、建設業に関わる資格取得の支援や資格手当の支給といった取り組みを行っています。

私が目指しているのは、経営理念にもある「必要とされる会社であり続ける」ことです。この実現には、社員たちが日々成長することが大切であり、一人ひとりがモチベーションを維持できる環境が必要だと思っています。

次のステージへと進化するためのカギは「CLT建築」にあり

ーー今後、特に注力したいテーマは何ですか?

尾松慎介:
現在、弊社ではCLT(Cross Laminated Timber)工法を主とした事業に取り組んでいるところです。CLT工法とは、木材を交差させて張り合わせたパネルを使用する建築工法で、耐久性の向上や施工の効率化による工期の短縮が可能になります。そして国産材を活用することで、日本の林業の活性化にもつながることや輸送距離を短縮することができ、二酸化炭素排出量の削減に大きく貢献しています。建築に携わるものとして、国内資源の活用と循環、環境負荷の低減などに取り組んでいきたいと思っています。

弊社は2025年6月にCLT工法で新社屋を建築しました。断熱性にも優れ、木の温もりを感じられる心地の良いオフィスです。1階部分に貸しスペースとしても利用できるコミュニティースペースを設置しました。様々なイベントを開催することで多くの人が集まる場にしたいと考えております。また、階段廻りにおきましては、いつでもCLT建築の構造見学ができるようにもしました。

そしていずれは、ビジネスチャンスが生まれたり、信頼できる方々と様々なご縁をいただけたら嬉しいです。人が人を呼ぶ会社になれば最高ですね。

また、社員一人ひとりの人生を豊かにするための「全社員副業計画」にも力を入れていこうと思っています。これは、社員が副業を通して夢に挑戦するための仕組みで、各々の事業やイベントを行う場として、コミュニティースペースの活用を考えています。

自分のやりたいことをやるというのは、人生の張り合いにもつながるはずです。だからこそ副業も含めて社員がチャレンジをしやすい環境を整え、働きがいのある会社へと成長できればと思っています。

編集後記

尾松社長の柔軟な経営手腕のもと、CLT建築の専門企業への道を歩み始めた日匠テック。時代のニーズを読み、業界の人材課題にも向き合っている同社なら、業界をけん引する立場になることも可能なはずだ。近い将来、同社は事業と人事制度の2分野で取り上げられる会社に成長するのではないか。そう思わせる将来性が同社にはある。

尾松慎介/1971年大阪府生まれ、大阪工業大学卒業。大阪パナホーム株式会社に入社し、7年の修業期間を経て2001年に入社。2006年に代表取締役に就任。現在はCLT建築の受注を増やすことに注力している。