
貿易業務の効率化を目指し、革新的なSaaSソリューションや、ブロックチェーン技術を活用した新しい貿易決済システムの開発など、さまざまな領域で成長を続ける株式会社STANDAGE。とりわけ貿易に関するさまざまな課題を解決する伴走型のサービス「おまかせ貿易」は、グローバル展開を目指す多くの中小企業から高い評価を得ている。
「デジタルとフィジカルの融合」を通じたソリューションを提供し、各方面から注目を集めている同社の代表取締役社長CEO、足立彰紀氏に話をうかがった。
海外にかかわる仕事をしたいと考えていた学生時代
ーー起業前のご経歴についてお聞かせください。
足立彰紀:
九州大学大学院を卒業後に、伊藤忠商事に就職しました。もともと理系出身で、将来は研究職に就くことも考えていましたが、それまで海外へ行ったことがなかったので、海外と仕事ができる総合商社にも興味を持っていました。
就職活動中、特に人気が高い伊藤忠商事の会社説明会へ参加したとき、人事担当者になんとか顔を覚えてもらおうと、積極的にアプローチ。最前列に座り、説明会後には撤収を手伝うなどして距離を縮め、食事に誘われる機会を得ることができました。このスタイルが功を奏し、伊藤忠商事へ無事入社が決まりました。
ーー伊藤忠商事で働かれている間に、起業を意識するようになったのでしょうか。
足立彰紀:
理系だったことを活かして、入社後は伊藤忠ケミカルフロンティアへの出向になり、製薬会社と一緒に工場の立ち上げを行ったり、薬剤の原料を輸入して提供するなど、医薬品ビジネスに6年間携わりました。
この期間に後輩として出会ったのが、取締役副社長COOの大森です。彼とさまざまな会話をするなかで、「新しく自分たちでビジネスをやってみたい」という気持ちが高まっていきました。
ただ、今振り返ると、子どもの頃、大分で下宿や不動産業を営んでいる祖母から「私は布団一枚とお茶碗1つを持って田舎から出てきて、今の仕事を始めたんだよ。お前にもこれができるかな」と言われていたので、起業家の祖母の影響も受けていたのかもしれません。
ーーそこからどのような経緯で起業に至ったのでしょうか。
足立彰紀:
当時、2015年4月頃、ネパールで大地震があり、ビットコインのアドレスをもった女の子の画像の投稿がSNSでバズっていました。義援金を募る手段としてビットコインが使われ、わずかな期間で数千万円ほどの募金を集めたのです。
周囲に銀行もないような地域なのに、テクノロジーを活用すれば、世界中から義援金を集めることができる。そうした状況を目の前にして、大きな感銘を受けました。この経験が、フィンテック分野で起業することを決意したきっかけです。
クライアントと一緒になって汗をかく伴走型サポートを提供

ーーSTANDAGEの主な事業内容についてお聞かせください。
足立彰紀:
弊社では、「すべての国が、すべてのものに、平等にアクセスできる世界の実現」のビジョンのもと、ブロックチェーン・AI技術を基盤とした、デジタル貿易プラットフォームの開発・提供を行っています。
主力商品として、貿易DXプラットフォーム「デジトラッド」があります。貿易業界のシステムはカスタムメイドのものが多く、全体を通じて使える一気通貫型のSaaSが少ないため、データ間の連携が難しいとされてきました。これが効率化や生産性の向上を阻んでいるという問題があります。その問題を解決するために「デジトラッド」では、データベースやアカウントを連携させ、貿易事業の効率化をサポート。業界特有のニーズにも応じたシステムを構築しています。
ーー貴社の中で大きく成長しているサービスについて教えてください。
足立彰紀:
今、大きく成長しているのは、「おまかせ貿易」という、海外の市場調査から展示会出展、営業代行、販路開拓など、海外進出するまでのあらゆるフェーズをワンストップで支援するサービスです。
未曾有の円安の今、海外市場に進出したいと考える企業が増えています。とりわけ国内市場に限界を感じ、海外で商材を展開したいと考えている地方の中小企業などは、海外との貿易を行うための人的リソースや知見が不足しているようです。
そこで、「おかませ貿易」を導入していただければ、具体的な改善点などのフィードバックを行いながら、お客様の商品を海外市場で実際に販売するところまで、伴走型のサポートを行います。
今まで海外進出に挑戦できなかったような企業が、「おかませ貿易」導入を機に、自社製品の販売で海外進出にチャレンジする。それが、企業にとって次への成長と自信につながる。こういった好循環が起こっている点が高く評価されていると感じています。
顧客基盤も急速に拡大中。上場も視野にした事業展開を
ーー今後、注力したいと考えている領域について教えてください。
足立彰紀:
まず「デジトラッド」は、大手商社様の基幹システムとなるアプリケーションを開発しており、2025年の上半期には本格リリースを予定しています。このシステムは商社様だけでなく、そのパートナーである大手フォワーダー様にも利用されるため、顧客基盤も急速に拡大する見込みです。
また、大企業向けの業界特化型SaaSのリリースも進めており、物流の見積もりや経費管理など、多岐にわたる機能を統合したサービスも提供する計画です。
ーーさらに成長するために、どのようなことを念頭に置かれていますか。
足立彰紀:
売上1000億円を超えるような企業を目指すためには、多くの企業の課題を真正面から解決できるような、インフラに近いプロダクトが必要です。そして、私たちのサービスを多くの企業に基幹システムとして採り入れてもらうためには、今まで以上に会社の安定性を高め、安心して顧客に利用してもらえる環境を整えることも重要です。
さらに信頼される企業としての成長を目指すため、上場を視野に入れており、そのための具体的なロードマップもできています。そのためには人材が重要です。新卒採用したジュニアのメンバーも、すでにミドルエンジニアとして中心になって活躍しているので、弊社はベンチャー企業ですが、今後も新卒もどんどん採用し、育てていく方針です。
ただただ安定を求めているようなタイプは弊社の社風には合わないと思いますが、チャレンジ精神旺盛な人は成長できる環境だと思います。今後の組織開発をどうやっていくのか、次の戦略を考えるようなメンバーも含め、これからも積極的に採用の拡大をしていきたいです。
編集後記
起業家精神の旺盛な家族に育ったこと、就職活動の際に見せた積極的なスタイル、総合商社時代に培った貿易ビジネスの経験など、足立社長の信念となっているのは「チャレンジすること」なのだと感じた。足立社長の挑戦と成長を求め続ける姿勢が、貿易業界にさらなる活力をもたらすことは間違いないだろう。

足立彰紀/1984年生まれ、大分県出身。九州大学大学院を卒業後、伊藤忠商事株式会社へ入社。医薬品の輸出入や、海外における工場建設などのプロジェクトマネジメントに従事。2016年からは石油化学品の先物トレーダーとしてトレーディングに携わる。2017年3月に伊藤忠の後輩で現副代表の大森と共に株式会社STANDAGEを設立。