
京都市右京区に拠点を構える、「医療法人藍整会 なか整形外科 京都西院リハビリテーションクリニック」。全ての整形外科疾患に対応し、患者一人ひとりの背景まで深く理解するオーダーメイドの治療を信条とする。大学病院などとは一線を画す小回りの利く体制と、「三ツ星レストランのような」と評する質の高い接遇も強みだ。スポーツ整形外科医としてSVリーグ「サントリーサンバーズ大阪」のチームドクターも務める同院の院長、樋口直彦氏に、医師を志した原点から事業への思い、そして次世代へつなぐ未来の展望について話を聞いた。
無力感から志した医師の道。キャリアの原点と決意
ーーはじめに、樋口院長が医師を志したきっかけをお聞かせください。
樋口直彦:
もともと父が開業医で、親戚にも医師が多かったため、医師は身近な職業ではありました。しかし、高校生の頃はまだ医師になるというイメージが湧かず、世界中どこにいても通用する仕事がしたいと考えていました。アルバイトで料理の面白さに目覚め、料理という技術は世界中どこでも通用するので、料理人になろうかと思っていた時期もあります。
転機となったのは、あるとき参加した炊き出しのボランティアです。そこで転倒して頭から血を流して倒れている人がいたのですが、何もできずに無力感を覚えました。その時に友人から「それなら医者になれば?」と言われ、「医師ならば世界中どこへ行っても必要とされる仕事だ」と、改めてその価値に気づかされたことがきっかけです。
ーーなぜ専門分野として整形外科を選んだのですか。
樋口直彦:
私はスポーツが好きで、私自身も骨折の経験があります。初期研修医時代は麻酔科医も考えましたが、ラグビーの聖地である長野の菅平で、合宿中の選手を診療する機会がありました。そこで、怪我をした選手のことを考えたら、安静がベストではないはずなのに、「安静に」で終わる治療が多いことに気付かされたのです。その経験から、スポーツで怪我をした人たちの力になれる整形外科医になろうと決意しました。
患者の人生に寄り添う「ちゃんとした整形外科」を
ーー樋口院長が考える「理想の医療」について詳しく教えてください。
樋口直彦:
医学部には5年遠回りして入学したので、その遅れを取り戻そうと必死に学びました。卒業後、茨城県日立市の整形外科単科の病院で働いていたのですが、そこでは非常に質の高い医療を提供していました。その病院の姿を見て、いつか自分でもこんな病院をつくりたいと思うようになったのです。
私が考える理想の医療とは、ただ安静にさせるだけの治療ではなく、患者さんの背景まで理解することです。たとえば、大学病院では診察の予約は取れても、検査は数週間後になることも珍しくありません。それでは患者さんの貴重な時間が失われてしまいます。当院では、そうした大病院では難しい、小回りの利く対応を心がけています。
患者さんが何を望んでいるのかを考えることが最も重要です。たとえば、高校生が部活最後の夏を前に怪我をした場合、安静にというのは酷な話で、大会に参加させてあげるための治療を考えるべきです。また、楽しみにしている旅行を控えたご高齢の方に膝の痛みがあれば、安心して旅行に行くための治療を考えます。
どの患者さんに対しても、ただ「安静にしてください」と一方的に告げるようなことはしたくありません。その人の望みをどうすれば実現できるかを一緒に考え、最善の治療を提供したいのです。
全ての疾患に対応。三ツ星レストランのような医療サービス

ーー貴院の事業内容と、医療における強みを教えてください。
樋口直彦:
骨折治療やスポーツによる怪我はもちろん、腰や膝の痛みなど、全ての整形外科疾患に対応できる体制を整えています。大学病院や大きな病院で提供されるような医療を、より身近に、迅速に受けていただくことが可能です。特に、スポーツ診療や、人工関節の手術を得意としています。
ーー患者さんに選ばれるために、特に意識していることはありますか。
樋口直彦:
患者さんは口コミやインターネットの情報を見て来院されることが多いと考えています。そのため、治療の質はもちろんのこと、接遇にも力を入れ、「三ツ星レストランのような医療」の提供を目指しています。
また、ICTを積極的に活用し、予約システムや電子カルテのクラウド化などを進め、患者さんをお待たせしない運営も信条です。ご高齢の方でもスマートフォンの扱いに慣れていらっしゃる方が多く、年齢を問わずスムーズにご利用いただいています。
理想の医療を次世代へ。働きやすさと未来への展望
ーー人材の採用や育成において、大切にしていることは何ですか。
樋口直彦:
何よりも「人」が一番です。幸いなことにスタッフに恵まれており、これはスタッフが働きやすいと感じられる職場環境と、私たちが提供する医療に共感してくれているおかげだと考えています。離職率も低く、良い人材に長く働いてもらえていることは、当院の誇りです。
ーー働きやすい環境づくりのための、具体的な取り組みをお聞かせください。
樋口直彦:
有給休暇の完全消化はもちろん、育児休業は男性も100%取得しています。1人目の育休に続き、2人目でさらに1年、合計2年間休んだスタッフもいます。当院の規模では1人抜ける影響は決して小さくありませんが、皆で支え合う風土があります。
また、固定残業制を導入し、不要な残業をしない文化を徹底しています。シフト制で週休2日を各自の都合で取得できるため、プライベートの時間も大切にしやすい環境です。
ーー今後の事業の展望について、どのようにお考えですか。
樋口直彦:
理想とする医療を、もっと多くの人に届けたいと考えています。その一つの形が、同じ志を持つ仲間と展開するフランチャイズです。「ちゃんとした整形外科」を全国に増やしていきたいです。
今後はインバウンドにも目を向け、海外から旅行で来られた方や、日本で手術を受けることを目的に来日される方々にも選ばれるクリニックになりたいですね。
現在、当院の理念に共感し、次世代を担ってくれる30代の後継者を探しています。患者さんの人生に本気で寄り添い、働きがいのある環境で理想の医療を実現したいという熱意のある方と、ぜひ一緒に未来をつくっていきたいです。
編集後記
医師であった父の背中を見ながらも、一度は別の道を考えたという樋口院長。しかし、ボランティア活動中に遭遇した出来事が、医療の世界へと強く引き寄せた。その原点には、「病気や怪我を治すことにとどまらず、患者さんの人生に寄り添いたい」という思いがある。理想の医療を次世代へつなごうとする樋口院長の挑戦は、これからも続いていくだろう。

樋口直彦/帝京大学医学部卒業、日本整形外科学会認定専門医。SVリーグ「サントリーサンバーズ大阪」チームドクター。骨折治療をはじめ関節外科、スポーツ整形外科を専門に治療。SVリーグ サントリーサンバーズ大阪の選手の治療の経験を含めて、スポーツ整形外科医として、患者一人ひとりのケース、タイミングを共に考え最善の治療を行なっている。