※本ページ内の情報は2025年7月時点のものです。

当時DPEを主力事業にしていた株式会社日峰(現:スタジオアリス)が、社名や事業の変更を経て1992年10月にこども向け写真館スタジオアリスという新業態をスタート。創業以来、お子さまを笑顔にする撮影や豊富な衣装で人気を集め、フォトスタジオ業界を牽引してきた会社だ。代表取締役社長の牧野俊介氏に、事業の成り立ちや大切にしている思い、今後の展望をうかがった。

同じ「写真」でもまったく違う。異業態への挑戦の始まり

ーー貴社に入社した経緯や、入社後の取り組みをお話しいただけますか?

牧野俊介:
大学を卒業後、株式会社日峰(現:スタジオアリス)に入社しました。80年代半ばの日峰は、フィルムの現像・焼き付けを行うDPEを主力事業に、使い捨てカメラやコンパクトカメラを販売していました。しかし、当時はDPE業界が価格競争に陥り、クリーニング店やスーパーマーケットなど、写真のプリントを受け付ける窓口が増えたことにより、経営が苦しくなっていたのです。

退職も考えるほど崖っぷちの状況でしたが、とある写真館のこども撮影サービスを知り、一つの希望を見出しました。単なる取次店である自分たちと写真館では、同じ「写真」という枠でありながらまったく異なる業態です。直感的に「チャレンジしたい」と思った私は創業者にかけあった上で、新規事業として1992年に「こども写真館」の1号店を立ち上げました。

ーー新しい事業が成功する確信があったのでしょうか?

牧野俊介:
新しい事業をはじめるのに無我夢中でしたので、根拠のない確信はありました。今だから言えることですが、現場は技術の固まりで、カメラの撮影技術はもちろん、着付けやヘアセットなどの知識が必要なのに誰もできる人がいない。先生を雇うのか?、誰かが学校に通うのか?。事業を形にするまでのコストやオペレーションなどについて考え出すと、「できない理由」を先に並べてしまったことでしょう。業界の常識を知らなかったからこそ、スピード感を持って挑戦できたと言えます。

創業者からは、「これまでの経験にとらわれていると革新的なことはできない」と言われていましたね。今でも、現場で新しいことを始める時に自分の経験は邪魔になると考えています。

ーー社長就任にあたって、当時の思いやエピソードもお聞かせください。

牧野俊介:
現場の仕事が大好きだったので、社長業は自分に向かないと思い、社長就任の話は一度断ったのですが、「お前しかいない」という創業者の一言で社長になる決意を固めました。

就任から約1年後にコロナ禍へ突入した時は、リーディングカンパニーとして何か行動するべきだ、と強い使命感を抱き、社内で反対の声が上がる中、全店休業に踏み切りました。苦渋の決断でしたが、企業の選択としては正しかったと言えます。

スタッフたちも「会社を潰しては大変だ」という思いで営業再開に備え、前向きに知恵を出し合ってくれたので、結果的に団結力も高まりました。

最大の強みは「業界の常識」を変えるサービス精神

ーー貴社の強みを教えてください。

牧野俊介:
スタジオアリスで働いているスタッフが、この仕事を天職だと思ってくれることが最大の強みです。加えてスタジオアリスを創業して以来、ブランド力の向上を意識して店舗を展開してきたので社会的な信頼や安心感もとても大きな強みですね。

サービス面での最大の強みはお子さまの夢を叶えるキャラクターとのコラボレーションです。お子さまが大好きなキャラクター各社との契約により、多彩な衣装や専用背景でお子さまの夢を叶えます。また、衣装はグループ会社である株式会社京都豊匠と連携し、デザイン考案から生産、安全性にもこだわり自社で衣装を製造しています。商品はグループ会社である株式会社JVISで製造し、品質の良い美しい写真や「未来の宝もの」となる商品をお客様へお届けすることができています。

お客様の価値観に寄り添い、ニーズに応える姿勢はスタジオアリスの成り立ちそのものでもあります。私たちは、「業界の常識」を非常識と捉え、奮闘してきました。

たとえば、成人式の撮影はほとんどが着物のレンタル代で、数十万円をかけても写真は1〜2枚しか貰えないというのが通例です。人の好みや事情は移り変わるにもかかわらず、成人する3年前から契約が必要だったり、違約金がかかったりするケースもあります。

早期予約は、他店にお客を取られる焦りから生まれた文化なのかもしれませんが、スタジオアリスは前金制でもありませんし、成人式を迎える年や、直前のご予約で十分です。「暮らしの豊かさ」に貢献したいという理念の一つが、サービスの強みにも現れているのではないでしょうか。

「筋肉質な運営」を掲げて新たな柱づくりにも注力

ーー今後の展望をお聞かせください。

牧野俊介:
少子化にともない、人口に見合った経営が必要だと考え、全国的に店舗の統廃合を進めています。目指すは売上至上主義ではなく、店舗ごとにしっかりと利益が出る筋肉質な運営です。

また、グループ会社が持つ資産を活用し、新たな事業(ネクストアリス)を創造する計画にも引き続き取り組んでいきます。

「アリスシッター」という派遣型ベビーシッター事業や、社会課題の解決にもつながる子育て支援事業は、少しずつ芽が出てきました。

2025年3月からは、首都圏のみで行っていた出張撮影サービスを全国で開始します。カメラマンをお客様の好きな場所に呼ぶスタイルは、コロナ禍をきっかけにニーズが伸びている領域です。そうした時代の変化に応じて、今後は守りつつ攻めるチャレンジ精神を大切にしていきたいと思います。

スタジオアリスで働いているスタッフのみんなが、笑顔で過ごせること。いつまでも仕事に『やりがい』を持って取り組んでくれる会社であり続けたいと願っています。

スタジオアリスで働くスタッフがしあわせな気持ちでいることが、結果、お客様を笑顔にし、ハレの日の記念写真がかけがいのない「未来の宝もの」となるからです。

私たちはこれからも「暮らしの豊かさに貢献したい」という経営理念を胸に、写真を通じて家族の思い出を鮮やかに未来へ残していただけるよう、お客様の声に応え続けながら進化を続けてまいります。

編集後記

企業目線でつくられた「業界の常識」を、顧客ファーストに変えていく。撮影スタジオ業界においてトップクラスの企業が変革を先導していることが、消費者としては非常に心強いと感じた。「現場が好き」と語った牧野社長は、この先も顧客の声に耳を傾け、最新のニーズにフォーカスした事業で会社を成長させてゆくだろう。

牧野俊介/1962年生まれ。東海大学を卒業。1985年に株式会社日峰(現:株式会社スタジオアリス)へ入社。1992年にこども写真館の1号店を立ち上げ、新たなビジネスモデルを確立。会社を急成長させたのち、専務取締役営業本部長を経て、2018年に代表取締役社長へ就任。