※本ページ内の情報は2025年7月時点のものです。

フォルシア株式会社は2001年の創業以来、旅行関連企業に対して、検索エンジンやオンライン販売プラットフォームなどを提供する会社だ。同社を率いる屋代浩子社長は野村證券の女性総合職1期生からMBA取得、ゴールドマン・サックス勤務という華麗なキャリアを持つ。「社員もユーザーもハッピーにしていきたい」と語る屋代氏にこれまでの道のり、事業内容、社風やビジョンについてうかがった。

女性総合職1期生から外資系金融を経て「ITバブル」をチャンスに起業

ーーはじめに社長の経歴を教えてください。

屋代浩子:
私は帰国子女だったこともあり、大学を卒業するときに「世界を股にかけるような、グローバルな仕事がしたい」という大きな夢を持って、野村證券に入社しました。

ちょうどその頃に男女雇用機会均等法が施行され、野村證券の女性総合職1期生として、希望していた「国際業務部」に配属されたのです。

ただ、まわりの期待と自分の力とのギャップに悩まされましたね。そこで、自信をつけるために野村證券を退職してマサチューセッツ工科大学(MIT)に留学し、MBAを取得しました。

ーーMBA取得後の話もお聞かせください。

屋代浩子:
MBA取得後は、金融界で一度は働いてみたい憧れの会社でもあったゴールドマン・サックスに入社しました。ところが、外資系企業で今でいうところの「Make America Great!」というような意識を持つ人たちと一緒に働いているうちに、「グローバルであっても、日本発の日本人みんなが誇れる会社をつくりたい」と強く思うようになったのです。

ちょうどその頃、1990年代半ばにITバブルが訪れました。インターネットでビジネスをする新しい会社が次々と生まれて大きくなって、世の中を変えていくのを見て、「金融業界の次は、IT業界にチャレンジしたい」という気持ちが芽生えました。そして、COO(最高執行責任者)の屋代哲郎と一緒に、2001年にフォルシアを起業したのです。

「フォルシア」という社名は、オリンピックの標語である「Citius、Altius、Fortius /より早く、より高く、より強く」というラテン語をもとにした造語です。常に前に進んでいける、志を持って成長する会社にしたいという思いを込めています。

肩書より行動、信頼は実力の積み重ね

ーー起業後は、どういった点に苦労しましたか。

屋代浩子:
自分で起業してみると、学歴やMBAも、それ自体がビジネスの成功を保証してくれるわけではないのだと気づかされました。「この人だったらいい仕事をしてくれそうだ」と思ってもらい、実際にそれに見合う価値を提供してはじめて、信頼を得ることができます。そのレベルに到達するまでがいちばん大変でしたね。

特に、大手と契約できるまでは非常に時間がかかりましたね。しかし、「Spook(スプーク)」という情報検索プラットフォームを最初に導入してくださったのはまさに大手旅行会社だったんです。Spookは、検索対象となる膨大なデータを軽量化、高速処理できるのが特徴で、検索パフォーマンスの向上を目指していた企業にとって、Spookは最適なソリューションだったのです。

一度大手と契約できると、「大手企業が契約しているならうちも」といった形で、取引につながるようになりました。

ーー改めて、貴社の事業内容を教えてください。

屋代浩子:
検索エンジンを中心としたシステム開発とサービス提供、コンサルティングを行っています。

主力製品は、「webコネクト」という、旅行関連業向けの商品販売プラットフォームです。交通手段や宿泊施設などの検索機能、予約管理、販売・決済の管理、電子クーポンの発行など、旅行商品の販売に必要な商流を一貫してカバーしている点が最大の特長です。

旅行会社のサイトなどで検索しているときに、ページの端に「powered by FORCIA」という表記があれば、私たちがシステムを提供しているサイトです。「知らず知らずのうちに使っていたけれど、これもフォルシアの技術だったんだ」と気づいてもらえる、そんな瞬間をもっともっと増やしていきたいですね。

「やりたい仕事で社会に貢献できる実感」を味わってほしい

ーー貴社の社風、特徴についても教えていただけますか。

屋代浩子:
社員には「自分がやりたい仕事をして、自分の能力で社会に貢献している」と実感してもらいたいというのが、私が大切にしている姿勢です。技術者が、上から指示されたものをつくるのではなく、自分で発想して価値あるものをつくっていける組織でありたいと思っています。

たとえば、朝会で自分の好きなことや人生について発表する場を設けたり、賞与を社員同士で評価して決める「3C制度」を取り入れたりと、会社としてのバリューを高める施策を実施しているのもそのためです。こうしたことがすべてつながって、プラスのスパイラルが回っていく組織づくりを目指しています。

ーー貴社ではどんな人材を求めていますか。

屋代浩子:
やはり、前向きな人には好感が持てますね。気持ちが前を向いている人が多いと、気持ちよく仕事ができて、プラスのスパイラルが回りやすくなると思うのです。そして、「たのしい」と思って仕事してくれる人を増やしていけば、ビジネスに大きな流れをつくることができるでしょう。

現在提供しているサービスも、そんなムーブメントを生み出してもっと広範囲に伝播させたいと思っています。そして、社員もユーザーもハッピーにしていきたいですね。

編集後記

女性がまだ働きづらかった時代から、前人未到の道を切り拓いてきた屋代社長。だからこそ、「社員にはやりたい仕事をしてほしい」「社員にもユーザーにもハッピーになってほしい」という言葉に優しさと未来への希望が滲んでいる。インタビューを通じて、旅好きの人たちがこれからどんな「楽しさ」を味わえるのか、待ち遠しく思わずにはいられなかった。

屋代浩子/1988年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村證券に女性総合職1期生として入社。金融工学を利用したデリバティブの開発に携わったのち、マサチューセッツ工科大学にてMBAを取得。ゴールドマン・サックスに入社しデリバティブの開発、マーケティングに携わる。2001年、フォルシア株式会社を起業。「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2011」、「Japan Venture Awards 2011 」IT特別賞受賞。