※本ページ内の情報は2025年7月時点のものです。

サプリメントの臨床試験支援において、多くの大手企業から信頼を集める株式会社ケイ・エス・オー。代表の小森美加社長は、化粧品・繊維・サプリ業界での多彩な経験を経て、自ら事業を立ち上げた。その歩みには、透明性を軸にした品質追求の姿勢と、次世代に向けた柔軟な働き方への改革が色濃く表れている。今回のインタビューでは、時代の先を見据えながら挑み続ける姿勢に迫った。

営業・企画・経理を一人で担った創業期。現場で学んだ「なんでもやる」経営

ーーこれまでのご経歴をおうかがいできますか。

小森美加:
大学卒業後、化粧品メーカーである株式会社ノエビアという会社に入社。ここでは主に販売店の方々への教育や意識付けといった業務を担当しました。販売の人たちに商品の良さを伝える講習をしていましたが、当時、無添加化粧品が珍しい時代で、反応が良かったのを覚えています。

その後、体調を崩した父に呼び戻される形で、父が経営する繊維会社に入社することになります。最初は経理やデザインをやっていましたが、手が足りないところに自分が入り込むスタイルで仕事をしていたので、最終的には、企画・デザインし、営業も納品もして、お金の回収までしていました。

また、バブルが弾けた後は連鎖倒産が増えたので、手形の取り扱いや債権回収も経験しました。こういう現場経験があったから、何をどう備えておくべきかが身体でわかるようになったのだと思います。

ーーそこからサプリメント業界へと移られたきっかけは何だったのでしょうか?

小森美加:
当時、ユニクロの台頭などを見て、繊維業界の将来に危機感を感じ、自分が働く場所を変えること、新しいものに挑戦する必要性を感じていました。そんな中、知人が勤務していた企業からお誘いを受けたことがサプリメント業界へ転身したきっかけです。私自身もサプリメントを利用していましたし、知見を深める良い機会だと考え、入社しました。この企業は海外で臨床試験を実施し、学術論文として発表するという、当時としては珍しい取り組みをしていました。

当初はその先進性に感心していたのですが、論文を精査するうちに、信頼性に疑問を抱くようになりました。この経験から、「人を対象とした信頼性の高い臨床試験の実施」の必要性に気づき、真摯に取り組みたいという思いに至ったのです。

ーー創業時のお話もお聞かせいただけますか。

小森美加:
創業当初は、製薬会社出身のお二人の方と3名で事業を開始しましたが、諸事情により、最終的には私一人で運営することに。知識も経験も無い状態からすべてを学びながら、日中は新規顧客開拓のための営業活動に、夜間は専門論文を読んだり厚生労働省の関連資料の調査・分析に奔走する日々でした。

そんな中、株式会社帝国データバンクの企業情報に掲載されたことがきっかけで、社会的な信用を得ることができ、事業が拡大していきました。また、創業前に「KSO」という簡潔なドメイン名を取得し、自社の公式ウェブサイトを整備したことも、大手企業との取引の際に信頼性を示す上で重要な要素だったと思っています。

高度な業務に専念できる環境づくりのためのDX推進

ーー現在の事業内容について教えてください。

小森美加:
弊社は健康食品の開発・研究、特定保健用食品、機能性表示食品、化粧品等のヒト試験受託業務を行う会社で、主に機能性食品の臨床試験支援を専門としています。企業から依頼を受け、製品の有効性や安全性を科学的に検証するための計画立案から、試験の実施、データマネジメント、統計解析、試験の品質管理、論文作成に至るまで、一貫してサポートしています。

事業を展開するにあたり、最も重視しているのは、品質と信頼です。弊社は、企業からの依頼に基づき臨床試験を支援していますが、最終的に論文として公表されるデータは、世界各国の研究者の方々にご覧いただくことになります。そのため、データの取り扱いにおいては透明性を最大限に確保し、いつでも検証いただけるよう万全の状態を維持することを徹底しています。

また、アドバイスは無料で行っており、取引先、特に研究部門のレベルを上げる支援をしています。このアドバイス文化が、自社のレベルアップにもつながる好循環を生んでいます。

ーー現在、積極的に進めていることはありますか。

小森美加:
Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)やAIを導入して、プロトコルや報告書の下書きやチェックなどを効率化、またデータベース管理システムを使用し被験者の情報管理や連絡業務をデジタル化し、社員の負担を減らす取り組みを行っています。これにより、社員がプロフェッショナルとしての専門知識の習得や、より高度な業務に時間を使えるようにしてほしいと考えています。

制度改革で「プロフェッショナルの居場所」をつくる

ーー人事制度の面で注力されていることはありますか。

小森美加:
人事評価制度についての見直しも行っています。成果を上げた社員が適切に評価され昇進できる一方で、本人の適性や志向に応じてある段階でキャリアの方向性を見定めることができるような、メリハリのある制度を導入しました。この制度は約1年半をかけて作成する予定でしたが、早期に整備する必要性を感じたため、前倒しで行いました。

また、弊社は社員の8割以上を女性が占めており、育児休業の取得、時短勤務の活用、そして復職後のキャリア支援に至るまで、個々の状況に応じた柔軟なサポート体制を整えています。たとえば、「午後4時半には退社する必要があるが、正社員として勤務したい」という希望を持つ社員がいれば、その勤務形態に合わせた業務内容や仕事量を調整し、担当してもらっています。

私たちは、社員が持つスキルを重視し、勤務時間や個人のライフステージに制約されることなく、誰もが楽しみつつ能力を発揮できる会社でありたいと考えています。制度を整備することも重要ですが、それ以上に、社員一人ひとりがその能力を最大限に発揮できる環境をどのように構築するか、ということを常に念頭に置いて、制度を整えています。

ーー今後、どのような人材を求めていますか。

小森美加:
専門性の高い、プロフェッショナルになりたい方を求めています。具体的には、管理栄養士、栄養士、臨床検査技師、薬剤師などの資格を持つ方や、営業部門では、理系大学出身の方。また、DX全般に興味がある方が活躍できると思います。

仕事でうまくいかないことがあっても「できないのが悔しい」と、できるまで努力できる人を高く評価しています。さらに、弊社には子育て中の女性も多く活躍しています。ですので、結婚しても子どもができてもキャリアを諦めたくない方、自分の専門性を掘り下げたい、深化させたい方との出会いが今から楽しみです。

編集後記

臨床試験支援という専門性の高い分野で、株式会社ケイ・エス・オーは確かな実績と信頼を積み重ねてきた。その背景には、創業者・小森美加氏の柔軟で実直な姿勢と、経験に裏打ちされた洞察力がある。DXや評価制度改革といった新たな挑戦も、すべては「社員が力を発揮できる環境を整えるため」にある。これからも同社は、大手企業のパートナーであり、駆け込み寺的存在という黒子として、歩み続けていくだろう。

小森美加/株式会社ケイ・エス・オー代表取締役。化粧品・繊維・サプリ業界での勤務経験を経て、食品の臨床試験の必要性に着目し独立。現在は、食品・サプリ・飲料等の臨床試験支援を軸に、大手企業との取引を多数展開。信頼されるデータづくりと、社員の専門性を育てる組織改革を推進している。