※本ページ内の情報は2025年7月時点のものです。

日高食品工業株式会社は、2024年に創業100周年を迎えた老舗の水産加工品メーカーだ。北海道産の高級昆布を使用したとろろ昆布などの製造・卸売販売に携わる同社は、「健康」で安全・安心な食品をテーマに掲げ、さらに社員が健康的に働くための取り組みにも注力している。ワーク・ライフ・バランスを重視した同社の経営や、次の世代に向けた取り組みについて、代表取締役を務める河﨑廣信氏に話をうかがった。

年1回のサマーパーティーで社員のコミュニケーションを促進

ーー社長に就任した経緯を教えてください。

河﨑廣信:
私は創業家の生まれで、父は弊社の4代目社長を務めていました。大学卒業後、父の要請を受けて弊社に入社したのですが、実は一度退職し、バックパッカーとして放浪の旅に出ています。2年後に再び弊社に戻り、営業などの業務に携わっていたのですが、父の病をきっかけに、2005年に社長に就任しました。

ーー社長就任後は、どのような取り組みを行いましたか?

河﨑廣信:
社員同士のコミュニケーションが活発で、仕事終わりにみんなでご飯に行ったり、明るい笑い声が聞こえてきたりするような会社にしたいと思い、社員が働きやすい会社づくりに取り組みました。それまでの弊社は、社内がなんとなく暗い雰囲気で、コミュニケーションの場もあまりなかったのです。

そこで、まずは朝礼を定例化し、従業員全員がその場で身近な人への感謝を発表しあうという取り組みを行いました。この取り組みの意義は大きかったですね。従業員同士がお互いについて知ることで、相手への共感や親しみやすさが生まれました。

朝礼以外にも、年に1回サマーパーティーを開催するなど、コミュニケーションの場づくりに取り組んでいます。このサマーパーティーは全社的な取り組みとして行っていることなのですが、特に日頃から家事や育児に時間を割いている女性社員に、少しでも非日常的な空気を楽しんでもらいたいという意図もありました。

ほかにも、仕事・家族・個人の生活の3点がきれいな正三角形を描くような、ワーク・ライフ・バランスに配慮した働き方を推進しています。今後は、この三角形の頂点をそれぞれ充実させ、正三角形がより大きな形になるようにしていく方針です。

代々受け継がれてきた調味液が唯一無二の商品をつくる

ーー貴社の事業内容についてお聞かせください。

河﨑廣信:
主に、昆布やわかめなどの海藻を加工した食品の卸売販売を行っています。主力商品は、北海道から仕入れた昆布を自社工場で加工したとろろ昆布です。食品スーパーとの取引が売上の9割を占めており、スーパーの乾物コーナーに弊社商品が並べられている光景をよく見かけます。

また、弊社は2018年、姫路市に「昆布屋きたまえ」という店舗をオープンしました。こちらの店舗は、消費者の方の声を直接聞き、弊社の情報を発信する目的で開設されたもので、実店舗とECサイトの両方で、BtoCの販売を行っています。

ーー貴社の商品の強みや特徴はどのようなところですか?

河﨑廣信:
弊社商品の強みは、「美味しいこと」と「健康に配慮していること」です。特に、代表的な商品である「ぜいたくとろろ」というとろろ昆布は、長年熟成された独自の調味液だけで味付けされているのです。この調味液は、代々レシピが受け継がれており、うなぎのたれのように、もとの調味液に新しい調味液をつぎ足してつくられています。「ぜいたくとろろ」は、この調味液に漬けこむことで、まろやかな味とコクを出しており、匠の技でスライスすることによって、さらに旨みが増し、多くのお客さまからご好評いただいています。

さらに、弊社は「自然の恵みを頂き『健康』で安全・安心な食品を創造し提供する」という経営理念を掲げており、健康に配慮した商品開発に取り組んできました。昆布は、食物繊維やミネラル、カルシウムを豊富に含み、低カロリーで腸内環境の改善に役立つ食品です。弊社は、「腸内環境改善企業」を目指して、昆布を使った健康的なレシピも開発しています。

人を大切にし、次の世代にバトンを引き継ぎたい

ーー今後はどのようなところに注力したいですか?

河﨑廣信:
新卒採用によって、組織の若返りを図りたいと考えています。これまで、採用は中途採用が中心だったのですが、2026年から新卒採用を始める予定です。弊社の次世代を担う社員の活躍に期待したいと思います。

また、今後は工場の生産性改善にも取り組む方針です。将来的に生産人口の減少が予測される中で、オートメーション化の必要性が高まっていると感じています。社員の働きやすさを中心に置いた経営を貫くためにも、機械化によって、付加価値の高い商品をより効率的に生産する体制を整えたいです。

ーー最後に、貴社の今後の展望をお聞かせください。

河﨑廣信:
弊社は2024年に、創業100周年を迎えました。お客様や従業員の皆さんに支えられて、この年を迎えられたことは、素晴らしいことだと感じています。弊社がここまで成長できたのは、多くの先人たちがバトンをつないでくれたおかげです。今後は、私の次の世代にこのバトンを渡せるように、人を大切にした経営方針を全うしていきたいと思います。

編集後記

自社の理念である「健康」に対する取り組みを拡大し、健康食品と健康的な生活を広めていきたいと語る河﨑社長。運動と健康的な食事を組み合わせたサービスとして、ウォーキングと宿泊をパッケージ化した施設の運営も構想中だそうだ。日高食品工業株式会社の取り組みが、多くの人に、真に豊かで健康的な生活をもたらすことに期待したい。

河﨑廣信/1976年生まれ。大学卒業後、日高食品工業株式会社に入社。2005年、同社の5代目社長として、代表取締役に就任。