
株式会社シー・シー・ピーは、かわいらしいキャラクターと家電を掛け合わせた「きゃらニクス」シリーズをはじめ、バラエティ豊かな製品展開が魅力の家電メーカーだ。代表取締役社長の横治一也氏は、こだわりを追求し続け創造した多種多様な製品の先に顧客の幸せの実現があると話す。同社の事業内容や製品企画のポイント、今後の展望をうかがった。
「こうだったらいいのに」という思いからメーカーへ転職
ーー貴社へ入社した経緯をお聞かせください。
横治一也:
大学卒業後、アメリカに本社を持つ家電リテーラーに入社しました。僕が入った約30年前は、大企業であろうと日系企業がアメリカで製品を売るのが難しい時代でした。そのため、その会社では、日本の製品をアメリカでローカライズ化させるために、多くの日本メーカーとのコラボを行いました。その際に付き合いがあったのが、株式会社シー・シー・ピーだったのです。
やがて、日系企業が僕たちのサポートなしでアメリカで製品を販売できるようになってくると、勤務先の日本支社を畳む話が出てきました。その時に当時のシー・シー・ピーの社長から「うちに来ないか」とスカウトされたのです。
当時の僕の業務はマーチャンダイザーで、基本的にはすでにある物を仕入れて販売する仕事でした。しかし、市場が求めているものと実際の製品のギャップにもどかしさを感じていました。そのため自分で市場に合うものを考え提供できるメーカーで働こうと思い、シー・シー・ピーへ入社したというのが経緯です。
多様化する幸福とニーズに多角的な提案

ーー貴社の事業内容を教えてください。
横治一也:
弊社は、家電製品・日用雑貨の企画・販売を行う会社です。「Think Happy〜夢・感動・楽しさの提供」というスローガンを掲げており、お客様に幸せを届けられるような製品を展開しています。
家電とキャラクターを掛け合わせたブランド「きゃらニクス」は、弊社の看板製品です。USB給電で温かくなるヒーターを内蔵した「あったかぬいぐるみ」や、キャラクターの形をしたルームライトなど、機能性とエンタメ性、これまでの家電製品にはない「癒し」「楽しい」を実現する家電シリーズを展開しています。
他には、発売から10年経つシリーズ累計148万台を販売した、立ったまま床の水拭き掃除ができる「回転モップクリーナー」や、ワイパーで集めたゴミを吸い込む置き型クリーナー「電気ちりとり」など、普通の家電とは一味違うプラスアルファの機能や操作性を備えた製品を販売しています。日々のお掃除に、大変さや面倒臭さを感じている方は少なくありません。弊社の製品が新しい価値を提供することで、お掃除に対するネガティブな固定観念を変えたいという思いがあります。
「幸せ」の感じ方というのは人それぞれです。家電製品に求めるニーズも細分化していて、多種多様なお客様の幸せやニーズを満たすには、いわゆる「普通」の家電を提供するだけでは足りません。バラエティー豊かな製品を通してさまざまな価値をお客様に届け、それを積み重ねた先にそれぞれの快適で幸せな生活があると考えています。
この考えは「バリューバラエティー・ディストリビューション」として、当社グループのシナジーを生み出しています。
ーー製品企画で心がけていることはありますか?
横治一也:
社員には「お客様が製品を使った際、どこに喜びや便利さを感じるのか、常に考えて企画しよう」と伝えています。「ただおもしろい製品をつくるだけでなく、実際にお客様に役立つと思っていただけるところまで頑張りなさいよ」と。そのためには、お客様の声をちゃんと聞くことが大切です。
第一世代の製品は、お客様が喜ぶポイントや役立つポイントを想像しながら企画し、市場に出します。その時に「ありがとう」という言葉もいただけますが、必ず「こうだったらいいのに」という声も届きます。すると、第二世代の製品は「こうだったらいいのに」という声が反映されたものになるわけです。
弊社の製品は、お客様の声なしでは成長できません。企画した製品を市場に出し、お客様の声を拾ってブラッシュアップしていくという作業を大切にしています。
また、製品企画に関して「何度でも失敗していい」と社員には話しています。今うまくいっていなくても、うまくいくまでトライし続けたら、それは失敗ではありません。うまくいかなかった経験を自分の糧として進み続ければ、最終的には自分の大きな力になります。成功や失敗を考えすぎずに、自分が納得できることをやってほしいですね。
国境を越えた「バリューバラエティー・ディストリビューション」を目指す
ーー今後の展望を教えてください。
横治一也:
多種多様、個性という私たちの資源を生かして、今後も「バリューバラエティー・ディストリビューション」を実行していきます。
そのために、毎日の生活においてお客様が共感してくれる製品の企画、そして同時に、製品を通して今までとは違う生活や価値観の提供を引き続き行っていきたいです。
たとえば「きゃらニクス」は、従来の家電製品が持つ硬いイメージをキャラクターを掛け合わせることで柔らかくし、日常生活の中にエンタメ性を提案する製品です。このように、個人の「好き」を大切にしながら、その人にとって快適で幸せな生活を創造します。
具体的な話でいうと、今後はインバウンドを踏まえたビジネスモデルを展開していきたいと考えています。弊社にとってのインバウンドは、海外のお客様に国内で購入いただくことだけではなく、その先の海外展開までを見据えています。
たとえば海外のお客様が日本国内できゃらニクスの製品を購入し、自国に持って帰って使うとしましょう。そして周りの方がきゃらニクスを良いと感じてくだされば、それが海外展開の足がかりとなります。弊社の製品を知っていただくきっかけは国内販売にありますが、物流網を活用すれば、海外に店舗を構えずとも製品の海外展開が可能です。インバウンドを媒介として、「きゃらニクス」を世界へ広げていきたいですね。
編集後記
取材は終始和やかに進み、同社の顧客ファーストの姿勢や社員が心から楽しんで製品企画を行っていることが伝わってきた。「きゃらニクス」は、日本のカルチャーとして世界にもっと浸透するきっかけとなるだろう。同社の今後の活躍に目が離せない。

横治一也/1964年東京生まれ、米国テンプル大学卒業後、RadioShackに入社し、バイヤーやMD、企画開発等を担う。2007年に株式会社シー・シー・ピー入社。GM、取締役を経て2024年に同社代表取締役社長に就任。