※本ページ内の情報は2025年12月時点のものです。

創業88年、チェーン製造を基盤に社会インフラを支える昭和機械商事株式会社。長年培った技術力と「顧客第一主義」を強みに、多様な産業に製品を供給してきた。2025年1月、新たに代表取締役社長へ就任したのが岡﨑真人氏である。大学時代のバックパッカー経験で培った「挑戦心」と、大手商社で磨いた「人間力」。これらを武器に、再生可能エネルギーという新市場を開拓してきた人物だ。会社の変革を牽引する若きリーダーに、その展望を聞いた。

未知に挑むバックパッカー精神 社長就任までの軌跡

ーー社会人としてのキャリアの原点についてお聞かせください。

岡﨑真人:
大学では環境問題に興味があり農学部を選びました。しかし、研究者肌ではなかったため、再生可能エネルギー分野に関心を持ち、電力会社に強みを持つ商社に入社しました。

商社には自社製品がないため、武器となるのは「人間力」です。まず社会人としての基礎を徹底的に叩き込まれました。そのうえで相手を洞察し、そこに自分の色を掛け合わせることで新たに人間関係を構築することを学びました。そして構築された人と人の結びつきがいかに強固なものであるかを知りました。また、学生時代に一人で海外を旅した経験も大きいです。このバックパッカーの経験から、未知の環境に飛び込む「挑戦心」が培われました。

ーー貴社へ入社された経緯についておうかがいできますか。

岡﨑真人:
現会長である父が70歳を迎えるにあたり、事業承継の話が本格化しました。しかし、いきなり経営が務まるわけではありません。まずは現場を知り、お客様や社員との信頼関係をゼロから築くことが先決だと考えました。

そこでタイミングを考えて、2019年に入社しました。商社で培った経験を生かすためにも、あえて肩書のない一般社員の立場から営業として再出発したのです。

社内技術の価値転換 新市場を開拓した着眼点

ーー貴社に入社され、特に大きな成果につながった取り組みについてお聞かせください。

岡﨑真人:
再生可能エネルギー分野の開拓です。陸上風力発電に注目し、弊社の補強土壁工法チェーンウォール・マイティが工事用道路に活用できるポテンシャルを秘めていると気づきました。大手ゼネコンからご相談が入り始めて、まさに、学生時代に培った挑戦心が、この未知の市場で花開いた瞬間でした。

この取り組みが実を結び、今期の補強土グループは過去最高の売上を達成できる見込みです。

ーー商社でのご経験が活かされていると感じる点はありますか。

岡﨑真人:
現在、弊社は新たな市場として洋上風力発電への参入を目指しています。しかしこの巨大市場では、自社だけで対応するのは困難です。そこで国内・海外メーカーに接触し協業を始めたことで、いまでは開発プロジェクトに参画できています。メーカーの視点だけでは「自社で開発・製造を」と視野が狭くなりがちです。商社での経験があったからこそ、こうした柔軟な発想ができています。

また、この洋上風力発電市場への取り組みでは、私の専務時代に現会長が「お前がトップでやってみろ」と全権を委ねてくれました。私自身の関心分野でもあり、高い熱量で挑戦できました。

DXで時間を創出 社員が主役となる挑戦的な組織風土

ーー社長就任後、どのような組織改革を進めていますか。

岡﨑真人:
「昭和」の体質が残っていたため、DXを推進しています。目的は単なる効率化や省力化ではありません。それによって生み出した時間で、社員が新しい分野へ挑戦できる文化をつくることです。私が自由に挑戦させてもらったように、気概のある社員が失敗を恐れずに挑戦できる会社にしたい。若手が遠慮なく開発などに挑める、風通しの良い風土を醸成したいと考えています。

その実現のために、まずは部門間の縦割り意識を解消したいと考え、全部門合同の技術交流会を始める予定です。それぞれの知見を共有することで、新しいアイデアが生まれる相乗効果を期待しています。

再生可能エネルギー事業の確立 アジア市場への展望

ーー改めて、貴社の事業内容について教えていただけますか。

岡﨑真人:
弊社の始まりはチェーンの製造会社です。当初は鎖だけを製造・販売していました。しかし付加価値を高めるため、チェーンを組み込んだ装置や工法を自社開発してきた歴史があります。コンベアなどの機械から土木工法、物を吊るための吊り具まで、チェーンを軸に多様な顔を持つメーカー。それが弊社の姿です。

ーー貴社の強みと今後の展望についてお聞かせください。

岡﨑真人:
弊社の原点は、紀元前から形を変えないシンプルなリンクチェーンです。だからこそ、主力事業であるコンベアは、ごみ焼却場のような過酷な環境でも耐えうる堅牢性と、高い技術力に対して大手プラントメーカーから厚い信頼を頂けていると考えています。その他にも落橋防止工法の緩衝チェーンなど現在はチェーンを軸に事業を多角化しており、社会インフラと多岐にわたる産業を支えています。

今後は、既存事業に加えて再生可能エネルギー市場を開拓し、アジアで「チェーンといえば昭和」と言われる存在を目指します。常に時代の変化を楽しみながら、10年後に向けた種まきを続ける会社でありたいです。

ーー最後に、読者へのメッセージをお願いします。

岡﨑真人:
企業の皆様、お困り事があればぜひご相談ください。私たちは「顧客第一主義」の精神で、皆様の課題解決に全力で取り組みます。

そして求職者の皆さんへ。弊社の魅力は、会社の成績と個人の成績が連動し、成果がきちんと還元されることです。情熱を持って挑戦したいという野心的な方、ぜひ私と一緒にこの会社で持てる力を最大限に発揮してほしいと思います。

編集後記

商社で磨いた「人間力」と、メーカーとして培った「技術力」。岡﨑氏は、この二つの武器を掛け合わせることで、社内の既存の技術を新たな市場価値へと昇華させた。その根底には、現状維持を良しとせず、常に変化を恐れずに楽しむという強い意志がある。社長自身が挑戦を楽しむ姿勢が、社員一人ひとりの挑戦を促し、それが会社の成長につながる。この「挑戦の好循環」こそが、同社を次のステージへと導く最大の原動力なのだろう。若きリーダーが描く未来に、大きな期待を感じずにはいられない。

岡﨑真人/1991年生まれ、大阪府出身。2013年に北海道大学農学部を卒業後、西華産業株式会社に入社。2019年に同社を退職し、昭和機械商事株式会社に入社。専務取締役などを経て2025年1月に代表取締役社長に就任。